前回(会社の礎となる「人材」をどのように育て活かすか--人的資源活用の基礎)は、整理解雇に関する判例法理と、それに関連して「職務記述書」の重要性について説明した。今回は、人的資源の有効活用を考えるとき、極めて重要な役割を担っている「ファーストレベルマネージャー」に注目することにしよう。
ファーストレベルマネージャーの役割とは
経営者やミドルマネージャーは、会社の代弁者として表に立つ機会が多いため、ファーストレベルマネージャーやその下で働く社員の影は薄くなりがちだ。しかし、実際に会社の業績を支えている屋台骨は、最前線で活躍しているファーストレベルマネージャーと部下たちが支えている。経営者やミドルマネージャーだけが動いても、目標として掲げられている収益を獲得することは不可能なのである。
ここで、経営管理体系として知られているRobert N. Anthonyのフレームワークを示そう。非常にシンプルで分かりやすいものだ。
Anthonyは、経営管理の機能を3つの階層に分けて考察している。最上位の階層が「Strategic Planning (戦略的計画) 」、中間の階層が「Management Control」、最下位の階層が「Operational Control」だ。
Strategic Planningの層では、外部環境を見ながら組織の基本方針を定め、組織の存続と発展を図る。そのために、組織の目標達成に要する資源の獲得、利用、分配の施策に関する決定を行う。Management Controlでは、Strategic Planningにおいて決定された資源の獲得と利用を具体化し、その施策を確実に遂行させるための機能を担う。そして、Operational Controlでは、個別業務の効果的かつ効率的な遂行を確保する。
今回注目するファーストレベルマネージャーは、Operational Controlのプロセスを担っていると、大まかに考えることができる。しかし、それだけではない。ファーストレベルマネージャーは、実は製品やサービスの品質、あるいはイノベーションや業績を維持するための重要な役割を果たしている。