SAPジャパンは7月23日、同社が推進するエンタープライズSOA実装に必要される、業務横断的な知識を持ち、業務プロセスの視点でシステム設計ができるコンサルタント/アーキテクトを育成するトレーニングサービス「SAP ERPビジネスプロセス統合」を9月1日から提供開始することを発表した。
同社はこれにあわせて、エンタープライズSOAに必要なノウハウを包括的に網羅した方法論「Starter Kit for Enterprise SOA」と、エンタープライズSOAへの移行を短期間で実現するための方法論「Methodology of Accelerated Transformation Enterprise SOA」も提供する。
SAP ERPビジネスプロセス統合は、エンタープライズSOA実装で必要とされる企業全体での業務プロセスに対して包括的・横断的な知識を、SAP認定コンサルタントやパートナー、ユーザー企業などSAPビジネスに関連する担当者向けに提供される。このトレーニングサービスは、企業内外の業務の相互関係と業務アプリケーションとの統合に関する幅広い知識を習得できるという。受講者はトレーニング終了後、認定試験の受験を経て、SAP ERPに関する業務処理のあり方を考案・改善する専門家として、技術的にシステムを支援するコンサルタントとして認定される。
SAPジャパンの神沢正氏(ビジネスプロセスプラットフォーム本部事業開発マネージャー)は、「エンタープライズSOAを推進する上で欠けているものとして、横断的な業務知識」があると主張している。同氏は、現状、企業のシステムを設計・構築・運用する際には、会計や人事、販売、物流、生産などの業務アプリケーションからくる“特定の業務知識”と、情報システム一般にかかるEAやマスタ統合、EAIなどの“共通的IT知識”との間でギャップが存在していると分析。そのギャップを埋めるための存在として、横断的な業務知識を持った人間が必要との認識を明らかにしている。
企業を取り巻く経済環境が急激に変化し続ける中で、企業が経済環境に合わせて、業務プロセスを革新できる方法として、企業のシステム全体を最適化する必要があるとの認識からエンタープライズSOAを導入しようとする動きが見られる。ただ、ここで注意しなければならないのが、エンタープライズSOAを迅速に、正確に実装するためには、企業全体の業務プロセスを最適化する必要があるということだ。
そうした視点に立った場合に、戦略立案、アーキテクチャやガバナンス、実装にいたるライフサイクル全般が網羅されている方法論、ユーザー企業が取り組みやすくするために体系的にまとめた方法論、業種・業務を横断した知識と業務プロセスの視点でシステムを見ることができる人材が必要とされているというのが、SAPジャパンの分析である。同社の今回のトレーニングサービスは、そうした分析に基づいた結果としての施策になる。
同社のそうした分析のもう一つの施策としてあるのが、方法論のStarter Kit for Enterprise SOAである。これは、エンタープライズSOAのコンセプトから実装方法、導入事例までの情報をキットとして提供するというものだ。これを活用すれば、エンタープライズSOAに取り組むための必要なノウハウを体系的に得られると、同社は説明する。
Starter Kit for Enterprise SOAは、コンセプト、取り組む価値や理解のための情報、導入・構築のための方法論などの枠組みで分類される。その中でも今回は、導入・構築のための方法論の中で、エンタープライズSOAを、計画・構築・運用などのプロセス全般を技術的な視点からまとめたドキュメントを「Enterprise SOA Development Handbook」(日本語版)という冊子として提供する。同社では、この冊子について「日本市場におけるエンタープライズSOAに対するニーズに応える最適なドキュメント」と説明している。
もう一つの施策であるMethodology of Accelerated Transformation Enterprise SOAは、エンタープライズSOAへの素早い移行と計画・構築・運用のライフサイクルをカバーする方法論だ。この方法論を用いることで、SAPやパートナー企業は、ユーザー企業がエンタープライズSOAのメリットを長期的に享受することが可能になるとしている。