コンピューティングのパラダイムを変えるクラウドは、エンジニアにも影響を与えつつある。クラウド時代のスキルギャップに関する指摘も出てきており、無視できない課題と言えそうだ。
新しい技術トレンドを学習し、取り込むことはエンジニアの重要な仕事の1つ。企業によるクラウド導入が本格化しており、IDCの調査ではクラウドを優先技術に挙げた企業が5割を超える。クラウドにより自動化やアウトソースが進むことで、分野によっては自分の仕事が変わってくるという場合もある。クラウド時代に求められるスキルや知識を身につけば、仕事や自身のキャリアに良い影響をもたらすはずだ。この回では、エンジニアの視点からトピックを見てみたい。
必要なリソースを必要なときに購入できるパブリッククラウドは、開発者に拡張性やコストメリットをもたらす魅力的な選択肢だ。必要最小限のウェブサーバやデータベースサーバなどのリソースを開発時期に購入して開発と検証作業を行った後、運用環境時に補強していく、などのことが可能なので、クラウドを利用しようという開発者も多いだろう。PHPのZendが行ったオンライン調査でも、開発者の68%が「パブリッククラウドを利用したい」と回答している。クラウド事業者の提供するPaaSやIaaSなどのサービスはそれぞれ特性が異なる。自分たちのニーズに合うものか、技術面、価格や契約条件などの面から調べることが第一ステップといえるだろう。
クラウド活用にあたって、よくいわれる懸念がセキュリティだ。共有環境を利用することはデータの安全性が損なわれるのではという危惧があるが、実際はクラウド事業者の多くが情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の国際規格、ISO/IEC 27001:2005を取得している。また専業だからこそ、長期的なセキュリティ計画に基づく大型投資を行っており、機能に安全性が組み込まれているという主張もある。オンプレミスであっても対策がきちんと講じられていないのなら、プロが手がけるクラウドの方が高いセキュリティを実現できそうだ。だが、クラウドならではのセキュリティ問題もある。たとえばデータ保管の手法(暗号化)、ペネトレーションテスト、ネットワークの安全性などが挙げられる。
IaaSなどのパブリッククラウドでは仮想環境を瞬時に立ち上げられるため、ハードウェアとしてのサーバーの設定、管理や調整を行う必要はなくなる。開発に関係ない作業を削減できると言えるが、一方で仮想マシンの管理やソフトウェアスタックの設定などの必要がある。セルフサービスでのプロビジョニング(調達)は確かに便利だが、プランニングとメンテナンス(管理や運用の自動化、オーケストレーション)なしには、せっかくのクラウドのメリットであるコスト削減が実現できない。クラウド時代にあったインフラの設定管理や調整についての知識が必要となる。
データベースはクラウド時代に大きく変わる分野の1つだ。NoSQL、それに分散処理のHadoopなどのビックデータ関連の新技術をどのように活用するのか、ストレージのキャパシティプランニングも変わってくる。多くの企業がSaaS、PaaS、IaaSと既存のオンプレミスが混在する環境であり、クラウド環境とデータセンター間のデータの移行や管理をスムーズに行う、クラウド時代のバックアップなど、新しい知識や作業が要求される。
調査会社のIDCが1月に発表したクラウドとITスタッフに関するレポートによると、クラウドに精通したIT人材を求めるニーズは高く、2012年には170万人分のクラウド関連の求人が埋まらないままだったという。企業によるクラウド利用が本格化する中、IDCではクラウド知識や経験のあるITプロフェッショナルの需要は2015年まで年26%増で成長すると予想している。
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