Cogentは、詳細への言及は避けたものの、今までもGRUが世界各地の標的に対してオンライン攻撃を仕掛けている「多数の事例」が見つかったとしている。ロシアがウクライナへの全面的な侵攻を開始し、それに対する国際的な制裁措置を課されたことで、こうした小規模なロシアからのサイバー攻撃がスケールアップする恐れがあることをSchaeffer氏は懸念した。
「われわれは、規模が劇的に変化する可能性があることを恐れた」(Schaeffer氏)
Cogentの運用する大容量ネットワークは、ウェブサイトに大量のデータを送信して過大な負荷をかけることでサービスを妨害する、分散型サービス拒否(DDoS)攻撃などのオンライン攻撃の経路として利用される可能性があった。Cogentはこれ以外にも、ルーターの乗っ取りなど、Cogentの大容量ネットワークを悪用した他のタイプの攻撃も懸念していた。
Schaeffer氏は、「攻撃は国家主導型」で大規模なインターネットの混乱を目的としていると述べている。
これらの背景を踏まえて、従業員の身の安全を確保しようと動いた後、Schaeffer氏はロシアにおけるCogentのネットワーク切断を提案した。全社で意見や情報の提供を求めた上で、米国時間3月3日の顧客向けの発表に至った。
同氏は、「役員や経営陣と話し、ウクライナのスタッフを含め営業部門にも相談した」と述べた。「あらゆる方面の意見を聞いた結果、これが正しい判断だと感じた」(Schaeffer氏)
Cogentはその後ネットワークの再構成に取り掛かり、ロシアのネットワークの顧客に接続する各ポートをブロックし、ネットワーク上のデータ経路を決定するルーティングテーブルから1つずつ削除していった。筆者は在米ロシア大使館にコメントを求めたが、回答は得られなかった。
ウクライナからは、ロシアのインターネットネットワークを完全に切断することを求める声も上がっているが、インターネット推進団体らはその考えに懐疑的だ。
インターネット関連の標準化推進などに取り組む非営利組織Internet Societyの最高経営責任者(CEO)であるAndrew Sullivan氏は、「誰もがそれを始めたら、インターネットは脆弱になり、相互のつながりが減ってしまう」とコメントしている。
また、ドメイン名の管理などを担う非営利団体ICANNは、制裁を課す権限はないとし、インターネットを政治問題化する行為を明確に拒否している。ロシアの締め出しを求めるウクライナからの要請を断った。
Cogentの事業は「健全なインターネット」をベースに成り立っており、スプリンターネット、つまりネットの分断は決して望んでいない。しかし、Cogentがロシアへのインターネットサービスを断つ方が、大規模な攻撃より結果的にインターネットへのダメージが少ないとSchaeffer氏は考える。同氏が特に懸念しているのは、世界の13カ所にあるルートサーバーを狙った攻撃だ。Cogentはそのうちの1カ所を運用している。
Schaeffer氏は、「インターネットを制御するルーターをGRUが狙おうとしているのを確認した」と述べ、ルートサーバーに言及した。「ロシアが出所の攻撃がみられたことから、Cogentではルーターサーバーを複数回強化してきた。もし、世界の13カ所すべてがダウンすれば、12時間以内にインターネットは事実上使いものにならなくなるだろう」
Schaeffer氏が率いるCogentチームは最終的に、ロシア国民のオンラインエクスペリエンスよりも、インターネット全体を守ることが重要だと判断したのだ。
同氏は、ロシアを切り捨てることで「インターネットの分断という側面から見れば、悪い先例を作っている」ことを認めている。「しかし、他国に戦車を送り込み、さらにサイバー攻撃で壊滅させると脅すこともまた悪い先例だ」と述べた。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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