Berners-Lee氏は、ウェブに潜在的な問題があることは最初から分かっていたと言い、結局のところ、悪人たちは町中を歩いており、そうした連中がほかの何百万もの人々と同じようにオンラインの世界に入ってきただけのことだと説明した。だが、悪人たちの声が大きくなったのは、ソーシャルメディアが出現してからのことだという。
それでも、同氏はよく考えてウェブを使うことの重要性を頻繁に説いており、ネット上の荒らしに不満を言う人々に対して、「ゴミのようなウェブサイトの閲覧」を止めるよう伝えている。
だが、国家がウェブを使用して、選挙や公の議論に影響を与えるようになることは全く予想していなかったという。2016年の米国大統領選挙の後、この事態について、「無視すべきゴミのような情報というだけでなく、実際に信じている人々が」おり、そうした情報が「非常に狡猾で悪意ある人々によって巧みに操られている」ことに気づいた、と同氏はイベントで観衆に語った。
その時点で、Berners-Lee氏とWorld Wide Web Foundation(同氏が2009年にインターネットのアクセシビリティと平等を促進するために創設した組織)は「ウェブを再考する」ために「大きく一歩後退」する必要があった、と同氏は話す。
次に、Berners-Lee氏は、インターネットに悪影響を及ぼすさまざまな問題を解決しようと、2018年11月にはウェブを立て直すための2つの重要な取り組みを立ち上げたと話している。1つ目は「Contract for the Web」(ウェブのための協定)で、同氏によれば、これはウェブをより信頼できるものにし、今日の一部の問題の影響を少なくするものだという。もう1つは、「Solid」と呼ばれる新しいプラットフォームで、ユーザーが自分のデータを自分で管理できるようにすることを目指す。
Contract for the Webプロジェクトの狙いは、共通の原則を確立することに同意する政府、テクノロジ企業、個々の市民を連携させて、オンライン世界を管理することだ。
「偽ニュースを違法化すれば済むということではない。この問題は、それよりもはるかに複雑だ。Contract for the Webの目的は、しっかりと中間軌道修正をして、勢いを変化させ、構成主義、さらには科学、事実に立ち返ることにある」(Berners-Lee氏)
同氏は、できるだけ多くの人々がこの取り組みに参加することが重要であると言い、イベントの観衆と世界中のあらゆる人に対して、こうした議論に加わるよう呼びかけた。その一例として、言論の問題を挙げている。
「ヘイトスピーチと言論の自由の間の線引きに対する考え方が、ドイツとテキサスでは違うということを私たちは知っている」(同氏)
Berners-Lee氏がマサチューセッツ工科大学の研究者らと共同で開発しているSolidプロジェクトでは、今日、本人の許可なく売買されたりしている個人情報を、もっと自分で管理できるようにすることを目的としている。データストレージとは別に、データを保存するための「ポッド」を人々に提供し、自分のデータがアプリによってどこでどのように使用されるかをユーザー自身で決められるようにするという考えだ。
つまり、ユーザーは、AmazonやFacebook、Googleなどのサービスが自分のポッドのどのデータにアクセスできるかを管理できるようになる。
「ユーザーは個人用のポッドも仕事用のポッドも持つことができる」(Berners-Lee氏)
こうした取り組みを通して、人々が自分の個人情報の管理権を取り戻し、ウェブが再び、Berners-Lee氏が当初から意図していたように使われるようになることを同氏は願っている。すなわち、共有と協力を通して、人類のより大きな大義を実現するということだ。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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