5月30日〜6月12日のAppleに関連するCNET Japanのニュースをまとめた「今週のAppleニュース一気読み」。
Appleはカリフォルニア州サンノゼで、6月5日より世界開発者会議「WWDC 2017」を開催した。世界75カ国から5300人が集まり、開発者たちは基調講演を皮切りに展開されたOSやハードウェアに関する最新情報を得たり、ハンズオンで自分のアプリの問題解決に取り組んだりした。
100人あまりのスカラシップも招かれ、10歳のオーストラリアから来た少年、82歳の日本人女性と、多彩な顔ぶれが集まった点も印象的だった。
Appleは、iPhoneやiPad、Macの進化の大きな部分を、これらのデバイスで動作するアプリを開発する開発者の手に委ねている。つまり、開発者がデバイスの新しい用途を発掘し、それをビジネスにするのだ。WWDCを前に発表されたプレスリリースでは、開発者への収益支払いが700億ドルを突破したとしており、ダウンロード数も7割増、安定的な収益が得られるサブスクリプション契約も58%伸びた。
最新のソフトウェアとビジネスモデルによって、アプリ開発者がより快適に、Appleのプラットホーム向けにアプリを開発してくれる環境を作ること。WWDCの意味合いは、まさにそこにある。
さて、1週空いてしまった本連載、今回は2週間分のWWDCにまつわるニュースをまとめている。個別のテーマについては、別途、記事でご紹介していく予定だ。
今回のWWDCで筆者が最も驚いたのは、Swift Playgroundsだった。
Swift Playgroundsについては、WWDCが始まる前にプレスリリースが出され、Lego MindstormやSphero SPRK+などのロボット、Parrotのドローンなどをコントロールできるバージョン1.5がリリースされた。また、それ以前のリリースで、日本語を含む英語外の言語への翻訳も行われており、プログラミング学習環境としての存在感を見せていた。
もともと、実際に使っている言語でプログラミングに入門しようというコンセプトのアプリだが、子どもたちのプライバシーに関わる要素を除いた全てのiOSの機能を利用できるようにした点に、Appleの力の入れようを感じた。
iOS 11にアップデートされる秋以降に利用可能となるSwift Playgournds 2.0には、iOS 11の機能が惜しみなくつぎ込まれている。つまり、Core MLを活用した機械学習プログラムや、AR Kitを利用したARアプリの開発を、iPadとSwift Playgroundsだけで作ることができるのだ。
子どもたちは、機械学習やARを、このアプリを使って学べるようになる。これは大きなブレイクスルーとなるはずだ。
その他の話題も含めて、WWDCを振り返っていこう。
アップル、App Storeにおける開発者の累積収益、700億ドルを突破--DL数は70%増(6/1)
アップルのコード学習アプリ「Swift Playgrounds」、ロボットやドローンに対応(6/2)
アップルのWWDCまとめ--Siriスピーカ「HomePod」、新型「iMac」「iPad Pro」など(6/6)
iPhoneはAppleにとって最大の収益源であり、現在のApple製品はなんらかの形でiPhoneやiPhoneユーザーの利便性に配慮して作られている。そのiPhoneで動作する次世代OS「iOS 11」は、Siriをより賢く、人々の行動を先回りして情報を提示する機能や、機械学習のアプリでの活用、ARのサポートなどが盛り込まれた。
特に、機械学習については、GoogleやAmazonのアプローチとの違いを明確にしている。Appleは、中央集権的な処理能力によってAIの機能を高めるのではなく、iPhoneやiPad、Apple Watchなど、手元のデバイスの中で、ユーザーが必要な情報や処理を用意する、分散型の機械学習プラットホームを提案した。
言い換えれば、最も賢いアプリがGoogleやAmazonによって占められるのではなく、機械学習の処理を生かしたアプリをあらゆる開発者に作ってもらい、新たな活用方法や可能性を探っていこう、というアイデアなのだ。
またARについて披露したのは、拡張現実のデモで使い古された平面認識と、そこへのオブジェクト配置だった。ただ、ハンズオンで触れてみると、距離や長さを、かなり正確でストイックに認識している様子に気がついた。しかも、iPadやiPhoneなど、既存のA9プロセッサ以降を搭載したiOSデバイスでそのまま利用でき、特別なデバイスやセンサを必要としていないのだ。
機械学習と同様、Appleがベーシックなデモを見せた理由は、アプリや活用を考えるのは開発者だから、という姿勢を貫くためだ。
「iOS 11」発表--「Siri」の改良やARサポート、新ファイルシステムも(6/6)
今秋リリースの「iOS 11」対象リスト発表--iPhone5/5cは対象外(6/7)
アップル、「iOS 11」に不要アプリを自動で削除する新機能を追加(6/8)
アップルの「Business Chat」、開発者プレビュー公開--iMessageでカスタマーサービス(6/12)
WWDC 2017は、例年になく、ハードウェアが多数発表された基調講演だった。その中でも注目は、10.5インチに拡大されたiPad Proだ。また12.9インチモデルも、6コアを搭載する最新のA10X Fusionプロセッサを採用し、処理性能を飛躍的に高めている。
iPad Proの特徴は、病みつきになるディスプレイだ。これまで60HzのリフレッシュレートだったRetinaディスプレイを倍の120Hzに引き上げたことで、例えばSafariで画面をスクロール下瞬間に、これまでのディスプレイに戻れなくなる、くっきりと明瞭でスムーズなディスプレイの性能を体験することになる。
Apple Pencil自体はこれまでと同じ製品だが、ディスプレイの性能向上によって、反応速度が向上した。
こうしたiPad Proと組み合わせるiOS 11には、MacのようなDockと、2つのアプリの画面分割をそのまま保存できるSpaces、ファイル管理アプリ「Files」などが導入され、2本の手を使ったドラッグ&ドロップなど、新しい操作方法も採用された。
iPad ProはPCの代替と、クリエイティブツールというコンセプトをサイズごとに持たせているが、MacやWindowsのような操作性を取り入れることによって、それぞれのコンセプトを目的にしたユーザーが安心して選び、長く最高の性能を発揮してくれるマシンとして仕上がった、と評価できる。
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