ディー・エヌ・エー(DeNA)、グリー、Donutsの3社は、8月に開催されたコミックマーケット(コミケ)88にそろって企業ブースを出展。それにあわせてコラボレーションやキャンペーンといった合同企画を展開した。その経緯や効果、またリアルなイベントに対する考え方などを聞いた。
コミケはさまざまなジャンルの創作物を扱った同人誌の即売会で、現在は夏と冬の年2回に開催。のべ50万人が訪れる日本でも有数の大規模イベントとなっている。
DeNAはアニメやゲームに特化したニュースサービス「ハッカドール」、グリーはアプリ開発スタジオのWright Flyer Studiosが展開するスマホゲーム「消滅都市」、Donutsはスマホゲーム「Tokyo 7th シスターズ」(ナナシス)で出展。消滅都市のゲーム中にハッカドール1号が登場し、ハッカドールでは消滅都市のエンドカードを付与するアプリ内でのコラボを展開したほか、会場では消滅都市とハッカドールの描き下ろしイラストと、ナナシスのイラストによって両面がデザインされたオリジナルうちわの配布を各ブースで行った。
ことDeNAとグリーはソーシャルゲーム業界をけん引した2社でもあり、ライバル関係で火花を散らしたことも遠い昔の話ではなく、こういった一歩踏み込んだ形でコラボ展開することはまれだという。もちろん、この3社が組んで展開するのは初めてのことだ。
今回の経緯について、ハッカドールプロジェクトのプロデューサーを務めるDeNA美少女Mobageチームの岩朝暁彦氏、消滅都市のディレクターを務めるグリーWright Flyer Studiosの下田翔大氏に聞いた。また都合により同席できなかったナナシスのプロデューサーを務めるDonutsゲーム統括部の中川尚人氏には、別途コメントをもらった。
岩朝氏:まず言い出したのは私になります。コミケ出展企業を対象した説明会で、企業ブースの地図を見たら弊社の隣にグリーさん、さらにその隣にDonutsさんが並んでいたのを見て、これは間接的に「3社で何か面白いことをしたら?」という、コミックマーケット準備会からのメッセージなのかなと勝手に受け取ったんです。ハッカドールと消滅都市はさまざまなコラボを行っていますし、コミケというお祭りの場なので、みんなでなにかできたらコミケもそれぞれのサービスも盛り上がると思ったのがきっかけですね。
グリーさんに知っている方はいらっしゃらなかったのですが、なんとかツテをたどって連絡をとることができて。Donutsさんはハッカドールの宣伝プロデューサーが中川さんを知っていましたので、最初はそれぞれ別々にお会いして説明と企画の提案をしました。
下田氏:シンプルに「これは面白い」と。グリーとしては、消滅都市がさまざまなコラボを通じて道を切り開いていくことに魅力を感じています。あと正直な心境として、コミケには初出展でノウハウがなく、すごく不安でした。DeNAさんもDonutsさんもすでにコミケの出展経験を持ってましたので、合同企画をきっかけに横のつながりを持って臨めるのは頼もしく、ありがたい話だと思いました。
岩朝氏:提案するときは全く気にしていなかったです。DeNAとしては面白いことをする、まずは取り組んでみることが優先される社風ですので、そこで何か言い出す人もいないですし。単純にコミケというお祭りの場だから、まずは盛り上げましょうと狙いが明確でやりやすいと思っただけです。
下田氏:両社が一緒に何かをするのは難しいというイメージを持たれている方もいらっしゃるかもしれませんが、意外と現場では普通に交流しています。一部の関係者はDeNAさんから提案があったことに相当驚かれたようですけど、コンテンツ単位のことであれば貪欲に面白い取り組みを進めていくのがいいという話になったと聞いています。
岩朝氏:周りがイメージしているほど対立しあっているというわけではないですし、このことも含めて時代の流れだと思います。それに、コンテンツ単位でのコラボいうこともあってか、ハッカドールがDeNAのサービスとはイメージしにくかったり、消滅都市は著作権表記も含めてWright Flyer Studiosとして出されているため、グリーさんと結びついていない方もいるかと思いますので、DeNAとグリーさんが手を組むみたいなイメージや話題性が持たれなかったかもしれません。
下田氏:消滅都市をゲームだけではなく、IP(知的財産)としても育てていく目標があります。コミケはさまざまなコンテンツに対して強い愛情を持った方々が集まる場ですから、そこに消滅都市を提示することそのものに大きな意味がありますし、踏むべきステップだと感じました。
岩朝氏:デジタルで物を売ることには慣れてますが、在庫があるものを現地に持って行って、手渡しで販売するというのは全然違う経験でした。限られたスペースかつ奥まった場所にあるブースで、いかにユーザーさんに気付いてもらってレジの前まで立ってもらうか。その流れはデジタル世界とは違う考え方が必要だと気づきましたし、その気づきはデジタルでも役に立つことでもあります。自分としても会社としても気づきが多く感じられた出展でした。
下田氏:ファンの方が目の前にいてグッズを買ってくれる、ということそのものの経験が大きいです。スタッフにも、できるだけ一声かけて会話をするようにとも伝えて、雑談ながらも貴重な意見を聞くこともできました。
やはりゲームとして大きいということと、IPとして大きいということは違うとも痛感しました。消滅都市はある程度認知度が上がっているとは実感しつつも、グッズとして展開できるものは、まだ、タイトルロゴをあしらったものや主人公2人に関連したものに限られています。これはまだIPとして育っていることにはならないと。まわりのキャラクターに、より強くスポットを当てていかないとIPとして成長できないと痛感しました。
下田氏:色替えではない描き下ろしのキャラクターに絞っても200はゆうに超えます。タマシイはパラメータが付いているため能力の高さに人気が引っ張られる側面もあるのですが、そこに依存していない人気キャラクターもいます。なのでお客さまに人気のあるキャラクターは、どんどん押し出してあげたいと思っています。
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