スケッチアプリ「Paper」を提供する米FiftyThreeは3月19日、Bluetoothに対応するスタイラスペン「Pencil」を日本市場に投入した。鉛筆を握っているような自然な使用感を追求したという全3製品。税込価格は、クルミ材を使用した「Walnut」と、つや消しアルマイト加工で金色の「Gold」は9072円、アルミ材に黒鉛の質感をデザインした「Graphite」は8424円。Apple Storeの実店舗とオンラインストアで販売する。
本体にボタンなどは付いておらず、直観的な操作でメモをとったり、絵を描いたりできる。ペン先の反対側は「消しゴム」として機能する。iPadの画面に当てるペン先の角度により、線の太さを変えられる。PaperとBluetoothで接続している間は、紙に鉛筆で書いたものをぼかすように、指で画面をなでることで線をぼかしたり、色を混ぜたりできる。USB端子がペンの中に収納されており、ペン先部分を指でつまんで外して充電する。リチウムイオン電池を採用しており、90分の充電で約1カ月間使えるという。
Paperだけでなく、Adobe Illustrator Line/Draw、Adobe Photoshop Sketch、Procreate、Sketchbookなどとも互換性がある。FiftyThreeではソフトウェア開発キット(SDK)を公開し、より多くのアプリに対応させようとしている。
「誰でも直感的に使えるようにシンプルに美しく仕上げた。アナログの紙や鉛筆と同じように使ってもらいたい」と語るのは、FiftyThreeのハードウェア担当デザイナーであるジョン・イケダ氏だ。日系アメリカ人で、祖母が書道の先生だったことから、書道や日本の文化の影響を受けたデザインに関心を持っている。人とモノ、芸術とエンジニアリングの交わりを橋渡しするデザインを目指しているそうだ。
FiftyThree入社以前は、計測機器を提供する米Flukeでインダストリアルデザイナーを務めた後、米Microsoftに入社。「Xbox 360」のコントローラやKinectを含むアクセサリのデザインを担当した後、プリンシパル・デザイン・マネージャーとしてXbox製品の開発と推進に従事していた。
イケダ氏によれば、Pencilのモデルは古くから大工が使っていた「カーペンターペンシル」。足場の不安定な場所で転がらないよう長方形になっている。Pencilはただその形を真似しただけではなく、カーペンターペンシルと同じく転がらないように、磁石を入れてiPadのケースに貼りつくようにしている。そのほかの細かな部分は日本のペン製品も参考にしてデザインしたそうだ。
今後、日本では、家電量販店や生活雑貨などを扱うライフスタイルショップでの販売も検討しているという。販売目標台数などの具体的な数字は明かさなかったが、デザイナーやアーティストに限らず、紙に絵を描いたり文字を書いたりしてアイデアを生み出そうとする多くの人に訴求していきたい考えだ。
また世界では、Paper、Pencilとともに提供しているユーザーコミュニティ「Mix」の規模拡大に力を入れる。MixはPaperから直接アクセスできるもので、自分の作品を共有したり、他ユーザーから共有されたスケッチに自分のアイデアを描き加えてコラボレーションできる。現在は210の国と地域で100万人以上のユーザーがいるという。日本でPencilを発売したのは、実はこの取り組みの一環でもあるそうだ。
「日本には優れた文具のカルチャーがあり、日本の人々は文具に強い敬意を持っているように感じる。そのエコシステムの一員になり、デジタルペンの分野で、既存の大手文具メーカーのようなプレミアムなブランドになれることを願っている」(イケダ氏)。
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