入学、就職、引越しなど、新年度に切り替わる4月は何かとお金のかかるタイミングだ。さらに4月1日から消費税率が5%から8%へと上がることもあり、本気で節約を考えている人も多いのではないだろうか。
「あなたの増税予想額は○○○円です」――オンライン家計簿アプリの「Zaim」は、ユーザーが入力した過去の支出データから、ひと月あたりの「増税予想額」を表示するサイトを1月に開設した。創業者の閑歳孝子氏によれば、Zaimが今後目指すのは、こうした未来のお金の使い方を提案するアプリなのだという。
Zaimはスマートフォンで手軽に家計簿がつけられるアプリで、手入力のほか、カメラで撮影したレシート情報を自動で読み取って入力してくれる機能も備えている。円グラフや棒グラフで家計簿を分析でき、PCブラウザからアクセスして、収支のデータをCSV形式で出力することも可能だ。
閑歳氏は、アクセス解析ツールを提供するユーザーローカルでエンジニアをしていたが、「母親でも使えるサービスを作りたい」という思いから、個人でZaimを開発。当初は会社勤めをしながらサービスを運営していたが、利用者の増加にともない独立した。2011年7月のサービス開始から2年半以上が経っても、アプリランキングでは上位を維持(3月31日時点のApp Store ファイナンスカテゴリの無料アプリランキングで2位)している。ユーザー数は100万人を超えており、2014年内には200万人に達する見込みだという。
年齢層は20~30代が中心。当初は男性のユーザーが中心だったが、スマートフォンの普及にともなって女性のユーザーが増え、現在は女性が6割、男性が4割となっている。また意外にも主婦より会社員の方が利用者は多いそうだ。昼休みや移動中など、ちょっとした空き時間にスマートフォンで入力している人が多いという。夫婦など複数のユーザーで1つのアカウントを共有するといった、ユニークな使われ方も増えてきた。家が離れた高齢の親に日々の買い物情報を入力してもらうことで、子供が親の生活状況を把握する“見守りサービス”のような形で使っているユーザーもいるという。
また閑歳氏も想定していなかったのが、パチンコ好きのユーザーの収支計算に使われていることだ。「パチプロの方が毎日の勝ち負けの金額を入力して管理している。打った台ごとにカテゴリ分けしている人もいる(笑)。カテゴリを自由にカスタマイズできるので、どんな色にも染まれるのが強み。あまり『こう使って欲しい』と押し付けたくない」(閑歳氏)。
利用者が増えれば、それだけニーズも増える。同社にはこれまで3万件もの要望が寄せられているそうだ。2月27日にはその中から、銀行口座の入出金記録やクレジットカードの利用履歴を自動的に取得して閲覧できる機能を追加した。家賃や光熱費など銀行引き落としを利用する項目やクレジットカードでの支払いを自動で家計簿に反映させたり、複数口座を合わせた残高金額を一目で確認できる。公開後のユーザーの反応も上々だという。
機能を追加する一方で、忘れないようにしているのが“シンプルさ”だ。入力や履歴など毎日使うであろう機能のみをトップ画面に表示し、その他の機能はあえて1~2タップしなければアクセスできないようにしている。「Zaimでは多くの機能を提供しているが、見た目上は気づかないでほしい。やはり9割の人はシンプルに使いたいと思うので、その人たちの邪魔にならないように気をつけている」(閑歳氏)。
Zaimは当初、“ソーシャル家計簿アプリ”の側面を前面に押し出し、他のユーザーと支出の総額を比較できる機能を目立つ位置に表示していたが、「収支の入力などに比べると使用頻度が低い」という指摘を受け、現在は分析機能の1項目として提供している。「自分が便利だと思い込んでいたものが、ユーザーの声によってそうでもないことに気づかされた。必要な時に見やすい位置を試行錯誤して、今の位置に落ち着いた」(閑歳氏)。収支の内容をTwitterやFacebookに投稿できる機能も提供していたが、これも無くした。
レシート撮影や銀行・クレジットカード履歴の自動取得などの機能を通じて、家計簿の入力を楽にしてきたZaimは、次のフェーズに進むと閑歳氏は話す。過去だけでなく、現在、そして未来の収支を“見える化”して、よりよいお金の使い方を提案していきたいという。
先ほど紹介した増税予想額を提示するサービスや、出資を受けたクックパッドと提供する近所のスーパーの特売情報を確認できる機能は、まさにそうした取り組みの一環と言えるだろう。
閑歳氏は「お金は貯めても結局どこかで使う。その時に利用者にとって1番良かった、楽しかったと思ってもらえる使い方を提示したり、未来について考えたりしてもらえるサービスにしたい。これは創業時から考えていたことで、想定より早くその段階にきている」と語る。今後は、この動きをさらに速めることで、ライバルの多い家計簿アプリ市場でより存在感を高めていきたいとした。
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