5月18日、米VMwareのシニアバイスプレジデントで仮想化およびクラウドプラットフォーム事業の責任者であるRaghu Raghuram氏が来日し、報道関係者に向けて同社の戦略、事業展開に関する説明を行った。
Raghuram氏は、「仮想化はデータセンターの領域で引き続き拡大しており、さらに現在ではデスクトップの領域にも普及しつつある」と言う。仮想化市場が拡大する中、VMwareはすでに17万社もの顧客企業に製品を提供し成功を収めてきたと、これまでの実績を強調する。
そして同氏は、これからの10年間が「クラウドコンピューティングアーキテクチャへの移行時期になる」とする。これは、単なるクラウドコンピューティングへの移行ではなく、「アーキテクチャへの移行」である点が重要なポイントである。Amazon EC2などのクラウドサービスを新たに利用するようになるのではなく、「企業のIT全体」がクラウドのアーキテクチャに移行していく期間になると言うのだ。そしてクラウドのインフラを実現していくためには、「仮想化の技術がなくてはならない」と明言する。
仮想化技術の活用は、まずはITのワークロードを仮想化するところから始まる。これが「第1ステージ」であり、仮想化により物理的なサーバなどを集約する段階だ。ここでは、ITの初期導入コストやスペースの節約といったメリットが得られる。
そして次のステージが、アプリケーション部分の仮想化だ。ExchangeやSharePoint、あるいは各事業部門に特化した業務アプリケーションなどを仮想化環境で動かすのが「第2ステージ」で、この場合はコスト削減よりも管理性能、信頼性、柔軟性の向上といったメリットが求められるとのことだ。
多くの企業において、仮想化の活用はこれらのステージに止まっているのが現状だ。そのため、企業のサーバのうち仮想化されているものはせいぜい25〜30%程度となっている。
仮想化の活用を進めるためには、さらにステップアップする必要がある。次のステップとなる「第3ステージ」は、コンピューティングのリソースプールを作り、共有するインフラを実現するもの。構造としてはAmazon EC2などのパブリッククラウドとよく似たものであり、これはいわゆる「プライベートクラウド」ということになる。
プライベートクラウドを使うべき理由は2つある。1つは外部のデータセンターへの移行が容易となること。もう1つが外部のパブリックなサービスではサービス品質を確保しにくいことだ。これらの課題を解決するのがプライベートクラウドで、今後企業はここを目指すべきだとRaghuram氏は言う。そして、「VMwareはまさにこのプライベートクラウド構築を支援する企業だ」とする。
また、このプライベートクラウド基盤は、デスクトップ環境の仮想化にも利用される。そのメリットは、コスト削減だけではない。同一の環境にどのようなデバイスからでもアクセスでき、さらに情報が一元管理されることにより、セキュリティが高くなることなども挙げられる。エンドユーザーはデスクトップ環境の仮想化でより良いIT環境を得られるようになると言う。「デスクトップ環境の仮想化もプライベートクラウドのインフラ基盤があってこそ、そのメリットが発揮されるものだ」と、Raghuram氏はこの場合にもプライベートクラウド基盤を構築していくことが重要であると説明する。
プライベートクラウドの次に控えているのが、プライベートとパブリックの双方を利用する「ハイブリッドクラウド」だ。
「すべてを内部で動かしたくないという場合もある。たとえば、ディザスタリカバリを実現したいような場合だ」(Raghuram氏)
そのため、顧客にはプライベート、パブリックの選択肢を与える必要があり、さらにそれらのサービスを連携させる必要がある。たとえば、アプリケーションはパブリックで動かしたいけれど、データはプライベートに置きたいこともある。これを実現するには、「プライベートとパブリックで同じ仮想マシンが利用できることを求める」ことになるという。さらに双方の仮想マシンを一元的に管理できるようにしておくことも必要で、VMwareではその部分を提供することでハイブリッドクラウドの実現も支援していくと言う。
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