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クリエイティブ・コモンズは著作権論争に終止符を打つか

文:Eric J. Sinrod 翻訳校正:吉井美有2006年09月13日 18時26分

  Creative Commonsについて聞いたことはあるだろうか。まだ知らない方も、間もなく耳にすることになるだろう。

 Creative Commonsは米国の公益法人と英国の非営利企業で構成されている。Creative Commonsは、従来の厳格な著作権はアーティストと起業家が求めていたような世間の注目と広範囲な流通を実現できなかったと確信している。その帰結として、自分たちの創造的な投資に対する収益を確保できる「革新的なビジネスモデル」を多くの人たちが採り入れるようになった。

 ウェブサイト上でライセンスセットを無償提供するCreative Commonsは、こうした経緯から登場した。

 著作権のコントロールをめぐっては、きわめて頻繁に二元論が展開される。1つは、すべての著作権を留保するという考え方である。これをCreative Commonsでは、作品のありとあらゆる利用が制限され「all rights reserved」というただし書きが常識となる世界と表現している。これと正反対の極にあるのが無政府主義の世界だ。そこでは作成者が広範な自由を享受するが、利用者によってただ乗りされやすい。

 Creative Commonsの概念を提唱した人たちは、著作権をめぐって今以上に均衡が崩れ、歩み寄りや節度が失われることを案じるようになった。Creative Commonsは、かつて著作権の考え方の根底にあった革新と保護を同等視する体系の原動力を復活させるという目標を掲げ、2001年に活動を開始した。活動グループは、この団体を「目的は協力的でコミュニティー志向だが、手段は自主性に基づいており、自由意志論的である」と宣言している。Creative Commonsは、制作者たちに、自分たちの作品を保護すると同時に、作品の利用を促進する手段を提供することを目指している。制約が増すばかりの定型ルールによって特徴づけられる著作権の仕組みを改良して「妥当で柔軟な著作権」を実現することが目的だ。

 このライセンス体系はどのような仕組みになっているのだろうか。Creative Commonsが開発したWebアプリケーションを使うことで、利用者は自分の作品をパブリックドメインとして提供できるし、また著作権を保持しながら特定の条件下で特定用途向けに無償でライセンス供与することもできる。Creative Commonsライセンスはソフトウェア用には設計されていない。音楽や映画、写真、ウェブサイト、文学といった、ソフトウェア以外の創造的な作品のライセンス作成を意図している。また、こういった作品とパブリックドメインやライセンスの状態を、コンピュータが読み取れる方式で関連づけられるようにするためのメタデータも開発している。

 したがって、オンライン作品の場合なら、制作者はCreative Commonsのウェブサイトで好みに応じて適用するライセンスを選択し、Creative Commonsのライセンスを申請できる。ライセンスを選択すると「some rights reserved(著作権一部留保)」ボタンと、作品がCreative Commonsライセンスで保護されていることを示す文を自動的に生成するHTMLコードが埋め込まれる。パブリックドメインに提供することを選択した場合には「no rights reserved(著作権留保なし)」ボタンを生成するコードが自動生成されて埋め込まれる。

 Creative Commonsは先進的な制作者たちの間で広まっているが、同時に批判的な声も聞かれる。2006年5月、Creative Commonsは、Pearl Jamのニューシングル「Life Wasted」を「帰属 - 非営利 - 派生禁止(Attribution-NonCommercial-NoDerivatives)」ライセンスの下で公開する予定だと発表した。これにより、人々は、国境を越えてこのビデオクリップを合法的にコピー、配布、共有できるようになる。

 また、同じ5月にCreative Commonsの「帰属 - 非営利 - 同一条件(Attribution-NonCommercial-ShareAlike)」ライセンスで、David ByrneとBrian Enoのアルバム「My Life in the Bush of Ghosts」の2つの曲から利用者が独自のバージョンを合法的にリミックスしたり共有したりできるようになった。

 これなどはまさに、Creative Commonsが当初から描いていた柔軟な著作権オプションを実現しているように思える。これが真の運動を触発し、さらに大きな動きとなっていくかどうかは、もう少し時間が経ってみなければ分からない。

著者紹介
Eric J. Sinrod
Duane Morris法律事務所サンフランシスコ支所のパートナーを務める弁護士。ITおよび知的財産に関する案件を専門とする。毎週コラムも発行している。購読希望の方は、「Subscribe」という件名で[email protected]までメールを送信していただきたい。なお、この記事の内容は必ずしもSinrodの所属する法律事務所およびその所属弁護士の意見を反映するものではない。

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