Miro大好きjacopenです。エンタープライズなIT界隈ではおそらく日本でトップクラスにMiroを愛している自信がある。
さて今日はMiro Advent Calendar 2021の3日目。
今日は、人類がいかにWeb会議に不向きかという話と、そのギャップをMiroで埋めようという話。あとは自分が関わっているカンファレンスでMiroを使いまくっている話をする。
Web会議の8割はXX
コロナ禍でだいぶ定着したWeb会議。でも、個人的には世の中のWeb会議の8割は上手くいっていないと思っている。数字に根拠はないけど。 何を持って上手くいっていないとするかだが、「対面の会議と比較して伝えられる度合いが低下している」とすると、8割くらいはそれに該当すると言っても過言ではないだろう。
何故そうなるかというと、基本的に人は言葉だけで物事を正確に伝えることはできないからだ。
人間の会話において、話し手は頭の中に構造化された情報があり、「今何について話しているか」という位置情報をもった状態で話す。まあ中には位置情報を持たず思い浮かんだことを喋っちゃう人や、脳内の位置情報がどんどんズレていく人もいるがそれはまた別の話。
一方聞き手は必ずしも同じ構造化された情報を持っているとは限らない。そのため、聞き取った内容から情報を組み立てて行く必要がある。また、話し手が持っている位置情報は共有されないため、話の流れから位置情報を推測し、継続的に更新していかなくてはいけない。
しかし、声というのは単位時間当たりに伝えられる情報が少ない手段だ。日本語だと1秒当たり十数文字分しか伝えられない。データ通信に置き換えるとわずか数十byte/sec。声のトーンなど付加情報を加味しても、とてもとても少ないわけだ。必然的に、伝える情報は断片的なものになってしまう。
これらは対面でも同じことが言えるのだが、人間というものは五感を働かせることによってある程度のエラー訂正が可能だ。声による情報の他にボディランゲージや表情によって情報の補完が可能なほか、聞き手の表情などから正しく伝わっていないことを読み取れれば、追加の情報を付加したり、分からないところはどこか聞き出すことも可能だ。対面の会議が好まれる理由はこのあたりにある。
これがWeb会議になってしまうと、声以外の情報がばっさり切り落とされてしまう。人間が備えているエラー訂正機能が働かなくなってしまうのだ。 そのため、聞き手の脳内で情報の構造化ができないまま話が進み、位置情報もズレてしまう。
他にも問題がある。対面のミーティングと違い、Web会議では聞き手の環境をコントロールしづらい。聞いている間に宅急便がくるかもしれないし、猫が来ることもあるし、横で開いているTwitterに面白画像が流れてきて注意が逸れることもある。対面の会議でTwitterを開いている人は比較的少数だろうが、Web会議では相手がどういう状況か知ることは難しいわけだ。たとえその注意が逸れている時間が十数秒であっても、先ほどから書いている会話の位置情報をズラすには十分な時間だ。
この話し手と聞き手の位置情報がある一定以上ズレてしまうと、聞き手はその段階で一切の情報を受け取れなくなってしまう。
例えば、車に乗って見ず知らずの場所に出かけても、移動した経路を覚えていればおおよその位置は分かる。しかし、しばらく目隠しをされていたらどうなるか。どこに居るか全く分からなくなってしまうだろう。この状態でいくらその土地の説明をされたところで、要領の得ないものとなってしまうだろう。
「開催したはいいが効果が得られないWeb会議」はこうやって生まれていく。
コンテキストを揃えるべし
コミュニケーションにおける、この位置情報のことをコンテキストと言う。 正確には、コンテキストの一部と言った方が良いか。元々持ち合わせている知識や文化的な背景、会話の文脈などを総じてコンテキストと表すことが多い。
コミュニケーションで最も大事なことは、このコンテキストを共有し、各人の立ち位置を揃えることにある。
コンテキストの共有には様々な手段があるが、コストが低く効率よく行えるのは 図解をすることだ。
あらかじめ図で構造化した情報をダンプし、共有することで聞き手は声から情報を構造化する手間が省け、より重要なことに脳のリソースを割くことができる。
また、声で説明しながら同時に図に起こしていくのも良い。これにより、話し手と聞き手の位置情報を細かく同期させることが可能となる。
そして、少なくとも自分が知っている限り、最もこの取り組みを効率よく、気持ちよく行えるのがMiroだ。
Miroだとこんなに良い
情報をダンプして共有するだけであれば、別にMiroでなくても可能だ。既に多くの人が、Google Docsで議事録を書いたり、PowerPointやGoogle Slidesでスライドを共有しながらWeb会議をしているだろう。
しかしこれらが最適な手段かというとそうではない。
- WordやGoogle Docsの欠点
- 文字が主体。文字を読んで理解していくのは脳の負担が大きく、時間がかかる。
- 構造化した表現が難しい
- PowerPointやGoogle Slidesの欠点
- スライド1枚あたりの情報量が限られてしまう。
- 1枚当たりの情報量を増やすと読みづらい。
- 情報量を減らすと、スライドを見逃してしまったときのリカバリーが難しい。
- リアルタイムな追加がやりづらい
Miroだとこれらの欠点を良い感じにカバーできる。
まず会議前に、あらかじめ共有しておくべき情報を書き込んでおく。文字で書いてもいいし、図にしてもいい。 情報量も、冗長でない限りは多少多くなっても構わない。見る人が拡大縮小して合わせられるからだ。
会話しながらリアルタイムに図解していくのも可能だ。以下の例は実際に会話しながら起こしたアーキテクチャ図だ。
画像を貼るのも容易だし、アイコンのライブラリが充実しているので検索するとだいたい欲しいアイコンが出てくる。
また、話し手だけでなくて聞き手側にも積極的に書き込んでもらうと良い。付箋紙を初めとした使いやすいツールが充実しているので、ブレインストーミングや振り返りにも最適だ。
聞き手側にも参加して貰うことで、少なくともYouTubeやTwitterを見ていて会議に集中していないという状況を減らしやすい。声ではなかなか質問しづらかった事項も、「気になったことがあれば付箋紙に書き出してください」と言っておけば、聞き手側も心理的な障壁が下がる。心理的障壁を下げることはコンテキストのズレを無くしていくにはとても重要だ。
組織におけるMiroの活用事例
Miroめっちゃ便利という話をしたところで、自分のMiroの活用について紹介。
自分がCo-Chairとして関わっているCloudNative Daysというクラウドネイティブ技術のカンファレンスがある。先日ちょうどCloudNative Days Tokyo 2021(CNDT2021) を開催したところだ。
このカンファレンスの実行委員会では、昨年からMiroを積極的に活用している。上記Miroの解説にも、実際にCNDTで使ったMiroボードのスクショを使っている。
使い始めたきっかけ
もともとMiroは自分が前職(Pivotal / VMware)の時から仕事で使い倒していた。
VMwareには VMware Tanzu Labsというサービスがあり、Leanプロダクト開発とXPを組み合わせたLean XPという手法でアプリケーション開発やモダナイゼーション、プラットフォームの支援を行っている。前身のPivotal Labsの体験談をみてもらうと分かるが、ホワイトボードや付箋紙をガッツリ活用してコミュニケーションを取るスタイルを取っている。
コロナ禍以降このサービスもオンライン化を余儀なくされたが、ホワイトボードと付箋紙無しにには仕事ができない。そこでMiroを活用することで、従来と同じようなスタイルで継続することができた。
同じくオンライン化を余儀なくされたのが前述したCloudNative Days。イベント自体もそうだし、実行委員会も直接集まるのが難しくなった。Google DocsとZoomを使ってオンラインミーティングに切り替えたものの、直接会うのと比べるとどうしても意思疎通が難しい。些細な認識違いを発端とするすれ違いも多く発生した。
じゃあどうするか。ここは本業で使っているのと同じく、Miroを活用するのが最善策だろうと。そう思って導入を決めた。
CloudNative DaysにおけるMiroの活用
CloudNative Daysの実行委員会では、MiroのTeamプランを利用。
コミュニティ主体のイベントであり予算が潤沢にあるわけではないので、アカウントを所持しているのはアクティブ率の高いメンバーに限っているが、持っていないメンバーに対してもボードのリンク共有を活用して参加してもらっている。
チームに分かれタスクを分担しているが、主に以下のような用途で使われている
イベント企画
どんなテーマにするか、どんなコンテンツをやるかといったイベント企画やアイディア出しに利用するパターン。マインドマップや付箋紙を使ってどんどん書き出していく。
前述したWeb会議を効率化する目的もあるが、もう一つ大きな目的としては非同期のコミュニケーションがある。
実行委員はそれぞれ本業を抱えた上でボランティアで参加しているため、ミーティングの時間を潤沢に取るのは難しい。スケジュールを合わせるのもなかなか困難だ。そこで、MiroとSlackを活用して出来る限り非同期でコミュニケーションを行うことで、負担を軽減するよう努めている。
技術的なディスカッション
CloudNative Daysでは、オンラインイベントのプラットフォームを内製している。 また、配信についても技術を持った実行委員会メンバーが主体となって行っている。
インフラからコンテナを初めとしたミドルウェア、そしてアプリや配信技術まで、上から下まで幅広いレイヤーのディスカッションを行う必要があり、図を使ったディスカッションは必要不可欠だ。
振り返り
より良いカンファレンスにしていくためには、カンファレンス開催後の振り返りは絶対に必要な取り組みだ。実行委員会全体、そして各チームごとに振り返り(KPTを利用) を行い、次への改善へとつなげている。
振り返りでは付箋とタイマー機能を利用している。
コンテンツとしてのMiro
CloudNative Daysでは、実行委員だけでなく一般参加者も参加できるコンテンツとして、Discussion BoardやJob BoardをMiroの埋め込みをを活用して行っている。
テーマごとに参加者が質問を付箋で書き込み、それに対して知見を持っている人が付箋で返信していく。同期ないしは非同期のオンラインコミュニケーションを参加者も一体となって行うための取り組みだ。
オフライン開催していたCloudNative Days Tokyo 2019で開催し盛り上がった、ホワイトボードを使って自由にディスカッションをするCloud Native Deep Diveという取り組みが元となっている。
デブサミでの活用例
別イベントだが、Developers Summit 2021でやったパネルディスカッションでもMiroを活用して大変盛り上がった。
アーカイブは見られないようだが、Togetterのまとめを見ると盛り上がりの様子が分かる。
#devsumiA のセッション、リアルタイムで付箋を貼れるMiroっていうツールを使ってプレゼンしている。
— 湊川あい📚IT漫画家 わかばちゃんと学ぶ シリーズ発売中 (@llminatoll) February 19, 2021
参加者も自由にコメントを書き込める。
わちゃわちゃ感が面白い😄https://t.co/fxJQwZ9MLa#devsumi pic.twitter.com/M1PwJUW4tR
まとめ
Miroほんと最高なので是非活用して欲しい