屋上庭園
屋上庭園(おくじょうていえん、英語: roof garden)は、建築物の上層部、すなわち屋上やベランダなどといった地表から離れた高所に造られた庭園のことである。
古くは、世界の七不思議の一つに数えられた、古代メソポタミアの新バビロニア王国における「バビロンの空中庭園」が有名であるが、現代の比較的規模の大きい屋上庭園の場合、この有名な「空中庭園(英語:hanging garden)」になぞらえて「空中庭園」と雅称されることも少なくはない[1]。ただし、「屋上庭園」と違って「空中庭園」は定義されることのない名称であり、庭園の定義に適う設備を持たない空中庭園も存在する(後述)。
概要
編集ビルなど屋根が平で屋上を持つ建築物の空間に癒やしや潤いを求めて緑を置くケースは増えてきたが、従来[いつ?][どこ?]は鉢植えやプランターを置くだけであった。このようなものも屋上庭園であるが、さらに推し進めて、客土によって人工地盤を造り、植栽を施して造園することも珍しいケースではなくなってきた。例えば21世紀初期の日本の首都圏など都市部では、ヒートアイランド現象解消の切り札としても注目を集めている。日本では1915年竣工の旧秋田商会ビルの屋上庭園が最古である。
現代の屋上庭園
編集荷重対策
編集建物の上に植物を植えるのに加えて、客土を加えるため、どれだけの重さが建物にかかるかを計算して植栽計画を立てる必要がある。目安としては以下のものがある。植栽当時小さくても成長した場合はこれらの人工土壌の条件は変更できないので十分な計画が必要である。
- 地被植物(例:芝生、苔)の場合、客土の厚さは15cm以上。必要重量は300kg/m2。
- 低木(50cm以上、2m未満の樹木など。例:ツツジ、サツキ)の場合、客土の厚さは30cm以上。必要重量は500kg/m2。
- 中木(2m以上、3m未満の樹木など)の場合、客土の厚さは40cm以上。必要重量は700kg/m2。
- 高木(3m以上の樹木など)の場合、客土の厚さは60cm以上。必要重量は1,000kg/m2以上。
土壌改良
編集荷重対策の一環として比較的軽い土を使用する。また通気性、排水性、保水性などと水素イオン指数 (ph) を考慮に入れて土壌を作る。 2から4割ほど土壌改良材を入れるようにする。土壌改良材にはバーミキュライト、ピートモスなどがある。
_時代[いつ?]頃から、土以外の素材に根を張らせるための技術が開発されている。その例として、緑化コンクリート、吸水性ポリマーなどがある。緑化コンクリートは壁面緑化などにも使われており、吸水性ポリマーについては、屋上緑化以外にも、砂漠化対策や農業などの分野に使われている。
防水対策
編集植物には水が不可欠であるがコンクリートが水に腐食しないように注意を払う必要がある。スラブと呼ばれる、屋根の地の部分にモルタルを塗り、防水シートを敷くなどの方法が考えられる。
給水設備
編集給水管を埋設し、タイマーによる水遣りやスプリンクラーを使用することが考えられる。
排水処理
編集人工地盤のため、水がたまりやすく、植物の根を腐らせる虞が高い。余分な水が速やかに排出されるように配慮が必要である。 その方法には以下のものがある。
- 勾配をつける。
- 排水層を設ける。
- 排水管を埋設する。
風圧対策
編集高木を植えた場合、土壌が軽いことや、根が浅いことから台風などの強風で抜けてしまうことが考えられる。対策としては、単一の植樹はせずに、ある程度寄せて植えることが考えられる。
屋上庭園の一覧
編集ここでは、著名もしくは重要な屋上庭園を、時代順もしくは地域別で列記する。
近世以前の屋上庭園
編集近現代の屋上庭園
編集日本国外
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- ヨーロッパ
- ル・コルビュジエの設計によるもの
- サヴォア邸 :フランス・パリ近郊のポワシーに所在。
- ユニテ・ダビタシオン(複数、4件フランス、1件ドイツ)
- アジア
- 北アメリカ
- バンクーバー公共図書館 屋上庭園(カナダ)
- ニューヨークのアスターホテルの屋上庭園
- カーペンター視覚芸術センター 屋上庭園
- オークランドミュージアム 屋上庭園
- 南アメリカ
- ブラジル文部省庁舎 屋上庭園
- ブラジル再保険協会庁舎 屋上庭
日本国内
編集- 北海道
- 宮城県
- 仙台市戦災復興記念館 屋上庭園(仙台市)
- 福島県
- いわき市立草野心平記念文学館 屋上庭園(いわき市)
- 群馬県
- 埼玉県
- 浦和パルコ屋上庭園(さいたま市浦和区)
- 武蔵浦和SKY&GARDEN(さいたま市南区)
- 道の駅川口・あんぎょう 屋上庭園(川口市)
- 所沢駅 トコニワ(所沢市)
- 千葉県
- ≪丸の内・日本橋エリア≫
- 日本橋三越本店 屋上遊園地チェルシーガーデン
- 三越銀座店屋上9階銀座テラス/テラスガーデン
- GINZA SIX
- 日本橋髙島屋(中央区)
- 日本橋一丁目ビルディングCOREDO日本橋(中央区)
- espressamente illy日本橋中央通り店
- 中央区役所
- 朝日新聞 東京本社
- 松屋銀座 屋上菜園
- 丸の内トラスシティ
- 新丸ビル
- 東京国際フォーラム
- フォーデニッシュカフェ東京国際フォーラム店
- 東京ミッドタウン日比谷パークビューガーデン
- 有楽町イトシア
- 東京サンケイビル
- パソナグループ本部 アーバンファーム(千代田区)
- 丸の内ブリックスクエア(千代田区)
- 三井住友海上ECOM 駿河台(千代田区)
- 三井住友海上駿河台ビル 屋上庭園(千代田区神田駿河台)[5][6][7]
- 三井住友海上駿河台新館 屋上庭園(千代田区神田駿河台)
- 日本工業大学専門職大学院(千代田区)
- 神保町三井ビルディング(千代田区)
- 住友商事竹橋ビル(千代田区)
- ニコラス・G・ハイエック センター(千代田区)
- ブラザー工業株式会社 ブラザー東京ビル
- 日本大学通信教育部(千代田区)[8]
- 丸の内センタービル(千代田区)[8]
- 豊島屋本店ビル(千代田区)[8]
- 新有楽町ビルヂング(千代田区)[8]
- 朝日生命大手町ビル(千代田区)[8]
- 新東京ビルヂング(千代田区)[8]
- 郵船ビルディング(千代田区)[8]
- 新国際ビルヂング(千代田区)[8]
- ホテルニューオータニ(千代田区)[8]
- 国土交通省中央合同庁舎第3号館屋上庭園(千代田区霞が関)
- パレスサイドビルディング
- 千代田区立神田一橋中学校 屋上庭園(千代田区一ツ橋)
- 東京交通会館「有楽町コリーヌ」(千代田区有楽町)
- JPタワーKITTEガーデン(千代田区丸の内)
- ≪汐留・築地・晴海エリア≫
- ≪赤坂・六本木エリア≫
- 霞ヶ関東急ビル
- ホテルニューオータニ
- 東急キャピトルタワー
- 東急虎ノ門ビル
- 長谷川グリーンビル
- 日本電気本社ビル
- キャノン電子ビル
- アークヒルズ アーク森ビル
- アークヒルズ仙石山森タワー
- 三田国際ビル
- 三田NNビル
- 赤坂パークビル
- 新青山ビル
- 麹町ミレニアムガーデン
- 虎ノ門琴平タワー
- 虎ノ門2丁目タワー
- 神谷町MTビル
- 城山ガーデン
- 六本木ティーキューブ
- 森永プラザビル
- 虎ノ門三井ビル
- 霞ヶ関ビルディング
- 首都高トランクルーム恵比寿
- 新菱冷熱工業本社ビル
- 六本木ヒルズ屋上庭園(港区六本木)
- 松田平田設計本社ビル(港区)[8]
- 高輪東誠ビル(港区)[8]
- ≪浅草・上野エリア≫
- ≪新宿エリア≫
- 新宿アイランド(新宿区)
- 新宿イーストサイドスクエア(新宿区)
- 新宿センタービル(新宿区)
- 新宿モリノス(新宿区)
- エステック情報ビル(新宿区)
- 新宿三井ビルディング 55HIROBA(新宿区)
- 伊勢丹新宿本店 屋上 アイ・ガーデン(新宿区)
- 新宿マルイ 屋上庭園Q-COURT(新宿区)
- 玉川上水・内藤新宿分水散歩道(新宿区)
- 新宿中央公園(新宿区)
- 新国立劇場 屋上庭園(渋谷区)
- タカシマヤタイムズスクエア(渋谷区)
- 熊谷組本社ビル(新宿区)[8]
- 大京町サンハイツ(新宿区)[8]
- 雪印乳業本館(新宿区)[8]
- 三井住建道路本社ビル(新宿区)[8]
- 新宿ルミネ1(新宿区)[8]
- 新宿髙島屋タイムズスクエア ホワイトガーデン(新宿区)
- ≪渋谷・恵比寿・表参道エリア≫
- 青山フェアリーハウス(港区)
- セルリアンタワー(港区)
- 南青山サアンタキアラ教会(港区)
- Ao <アオ>(港区)
- リビエラ青山(港区)
- ワイマッツ広尾 山種美術館(港区)
- 風花東京-fl ower & cafebar(港区)
- 青山アートワークスビル(港区)
- JR恵比寿ビル(アトレ恵比寿)エビスグリーンガーデン(渋谷区)
- 恵比寿ビジネスタワー(渋谷区)
- アニヴェルセル表参道(渋谷区)
- 表参道ヒルズ(渋谷区)
- Gビル神宮前03(渋谷区)
- ジャイル(渋谷区)
- 渋谷区神南分庁舎(渋谷区)
- ケアコミュニティ・原宿の丘屋上ビオトープ(渋谷区)
- 東急プラザ 表参道原宿(渋谷区)
- アトレ恵比寿屋上庭園(渋谷区)
- 渋谷区立原宿外苑中学校
- 恵比寿ガーデンテラス弐番館[8]
- ≪池袋・文京エリア≫
- 大和ハウス東京ビル
- トッパン小石川ビル
- アイガーデンテラス
- 切手の博物館
- リビエラ東京
- ホテル・グランドパレス
- トヨタ自動車 東京本社ビル
- 西武池袋本店 食と緑の空中庭園(豊島区)
- としまエコミューゼタウン 豊島の森(豊島区)
- ≪23 区その他のエリア≫
- 目黒総合庁舎屋上目黒十五庭(とうごてい)(目黒区)
- 目黒区役所
- 中目黒公園(目黒区)
- ラ・フェンテ代官山(目黒区)
- カシオ計算機 本社ビル
- 首都高速中央環状線 大橋ジャンクション 目黒天空庭園(目黒区大橋)
- 武蔵小山駅ビル 屋上庭園(品川区小山)
- 東品川海上公園東品川ポンプ所 屋上ハーブ園(品川区東品川)
- 成城コルティ 屋上庭園(世田谷区成城)
- 経堂コルティ 屋上庭園(世田谷区経堂)
- 池上会館 (大田区)
- ガスの科学館(江東区)
- 深川ギャザリア(江東区)
- ロイヤルパークホテル
- リバーシティ21・新川
- 尾久の原公園
- シンクパークタワー(品川区大崎)
- 経堂コルティ4F 屋上庭園(世田谷区)
- 玉川高島屋S・C 本館・南館(世田谷区)[8]
- 玉川高島屋S・C マロニエコート(世田谷区)
- 玉川高島屋S・C ガーデンアイランド(世田谷区)
- 京王リトナード永福町屋上庭園ふくにわ(杉並区)
- グレースメイト鷺ノ宮(中野区)[8]
- 特別養護老人ホーム暖心苑(江戸川区) [8]
- 江戸川区立小松川第三中学校[8]
- 学校法人実践学園(中野区)[8]
- 中野ブロードウェイ(中野区)
- 東京都多摩地域
- F&Fビル 屋上庭園「吉祥空園sora」(武蔵野市)
- キラリナ京王吉祥寺屋上庭園(武蔵野市)
- 北多摩一号水再生センター
- 東京都立多摩総合医療センター
- イオンモール多摩平の森屋上庭園(日野市)
- 八王子エルシィ 屋上庭園(八王子市)
- ジョイステージ八王子(八王子市)[8]
- 青梅市立総合病院[8]
- 神奈川県
- 新潟県
- 新潟市民芸術文化会館 屋上庭園(新潟市)
- 富山県
- 愛知県
- 大名古屋ビルヂング 屋上庭園(名古屋市中村区)
- 名古屋インターシティ 屋上庭園(名古屋市中区)
- アルペン丸の内タワー 屋上庭園(名古屋市中区)
- アイシン コムセンター 屋上(刈谷市) - 2階建て平屋根(折板屋根)の全面を緑化・庭園化した屋上庭園[3]。
- 名古屋市立西部医療センター
- 三重県
- 岐阜県
- 京都府
- 奈良県
- 大阪府
- 兵庫県
- 広島県
- 市営基町高層アパート(広島市)
- 福屋八丁堀本店 屋上庭園(広島市)
- 広島市立矢野南小学校
- 山口県
- 旧秋田商会ビル - 国内最古の屋上庭園(鉄筋コンクリート造の建物としても最古級)
- 唐戸市場
- 香川県
- 愛媛県
- 福岡県
- 大分県
- アミュプラザおおいた 屋上庭園
- 長崎県
- 国立病院機構長崎医療センター 屋上庭園(大村市)
- 端島集合住居 屋上庭園(長崎市端島)
- 壱岐市立一支国博物館
- 鹿児島県
屋上庭園でない空中庭園
編集日本の東京都にある代々木ゼミナール本部校代ゼミタワーの空中庭園[22]や大阪市にある梅田スカイビルの空中庭園展望台などは空中庭園を謳ってはいるが、庭園という定義に適うような緑化空間は存在せず、「空中のやすらぎ空間」といったようなコンセプトの施設である。アクロス福岡 ステップガーデン(福岡市)や静岡文化芸術大学「創造の丘」のような屋上緑化なども存在する。
脚注
編集注釈
編集出典
編集- ^ 「空中庭園」『美の壺』 NHKテレビ
- ^ a b c “大都会の屋上で想像を膨らませる北海道の草原情景 - 空のガーデン”. (公式ウェブサイト). 札幌市 (2011年10月4日). 2012年10月26日閲覧。
- ^ a b c d e “屋上緑化部門:屋上緑化大賞(国土交通省大臣賞)” (PDF). (公式ウェブサイト). 財団法人 都市緑化機構 (2012年3月). 2012年10月26日閲覧。
- ^ a b c “東京 屋上物語 第1回 松屋浅草”. まだある昭和ナビ(ウェブサイト). 大空出版. 2012年10月26日閲覧。
- ^ a b c d “屋上緑化部門:国土交通省大臣賞” (PDF). (公式ウェブサイト). 財団法人 都市緑化機構 (2012年4月3日). 2012年10月26日閲覧。
- ^ a b “三井住友海上、東京・千代田区の環境性能ビル「駿河台新館」の使用開始 都内トップクラスの環境性能ビル、三井住友海上駿河台新館が完成”. 日経電子版 (日本経済新聞社). (2012年5月2日) 2012年10月26日閲覧。
- ^ a b c “駿河台ビル・新館の緑地”. (公式ウェブサイト). 三井住友海上. 2012年10月26日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x 既存建築物屋上緑化事例集 (PDF) 東京都
- ^ “「霞ヶ関合同庁舎3号館屋上庭園」の公開について”. (公式ウェブサイト). 国土交通省 (2012年). 2012年10月26日閲覧。
- ^ a b “国土交通省屋上庭園”. (公式ウェブサイト). 国土交通省. 2012年10月26日閲覧。
- ^ a b “松屋の沿革”. (公式ウェブサイト). 松屋. 2012年10月26日閲覧。
- ^ 社史編集委員会編 編『松屋百年史』株式会社松屋、1969年11月。
- ^ a b “進化する、東京ドームシティ。進化させる、ミーツポート。” (PDF). (公式ウェブサイト). 株式会社東京ドーム (2007年6月). 2012年10月26日閲覧。
- ^ “大橋“グリーン”ジャンクション”. (公式ウェブサイト). 首都高速道路株式会社. 2012年11月9日閲覧。
- ^ “まちと一体化する大橋“グリーン”ジャンクション”. (公式ウェブサイト). 首都高速道路株式会社. 2012年11月9日閲覧。
- ^ “大橋ジャンクションでつながる”. 東京SMOOTH(公式ウェブサイト). 首都高速道路株式会社. 2012年11月9日閲覧。
- ^ “平成24年10月20日(土曜日) 目黒天空庭園見学会 全国初! ジャンクションの屋上に憩いの公園! - 目黒区報道ニュース”. (公式ウェブサイト). 目黒区 (2012年10月20日). 2012年11月9日閲覧。
- ^ “大橋“グリーン”ジャンクション”. 首都高エコ通信(公式ウェブサイト). 首都高速道路株式会社. 2012年11月9日閲覧。
- ^ 『相鉄グループ100年史』 相鉄ホールディングス、2018年12月、156ページ
- ^ 「SHOP GUIDE ジョイナスの森彫刻公園」『ジョイナス』 相鉄ビルマネジメント
- ^ “環境への基本姿勢”. (公式ウェブサイト). 京都機械工具株式会社 (KTC). 2012年10月26日閲覧。
- ^ “代々木ゼミナール本部校 代ゼミタワー オベリスク” (PDF). (公式ウェブサイト). 社団法人 日本建築業連合会 (2008年12月). 2012年10月26日閲覧。