善立寺(ぜんりゅうじ)は、川崎市多摩区登戸にある日蓮宗の寺院。

善立寺
所在地 神奈川県川崎市多摩区登戸2474
山号 龍燈山
宗派 日蓮宗
寺格 平僧寺跡
本尊 三宝尊
創建年 平安時代初期 (開基堂)
天正2年(1574年)(伽藍)
開山 速妙院日成
開基 慈覚大師円仁
中興年 江戸時代初期
中興 舜了院日徳
札所等 多摩川三十四ヶ所観音霊場 第九番
法人番号 2020005007350 ウィキデータを編集
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概要

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山号は龍燈山。旧本寺大本山池上本門寺、旧寺格は平僧寺跡。池上芳師法縁に属する。[1] 稲毛門中朗師講[2] の一である。また、多摩川三十三ヶ所観音霊場の第九番札所でもある。

歴史

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平安時代に慈覚大師円仁が創建した堂宇が淵源とされている。鎌倉時代初期に稲毛領の領主となった稲毛重成が、持仏の観世音菩薩像をこの堂宇に祀り観音堂とした。更に時が下り天正2年(1574年)に、速妙院日成が日蓮宗に改め正式な寺院とし龍燈山善立寺と称したと伝えられている。[3] その後、寛文年間に日蓮宗不受不施派の弾圧によって一時廃寺の憂き目に遭ったが、11世・舜了院日徳により再興された。更に貞享2年(1685年)1月には番神堂が、寛政元年(1789年)には七面堂が建立され、また文政13年(1830年)には本堂が再建されるなど、威容が整えられた。なお、江戸時代の歴代住持のうち19・20・25世は南谷檀林の化主を務めた高僧であり、池上門流に於ける寺格の高さが窺える。明治6年(1873年)には境内の一角に登戸小学校の前身である「小学登戸学舎」が建てられた。(境内に「登戸小学校発祥之地」の石碑がある)

伽藍・境内

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本堂

間口奥行6間四面の木造。

七面堂

間口3間・奥行2間の木造。

番神堂

間口半間・奥行1間の木造。江戸時代前期に、三代将軍徳川家光の側近として権勢を誇った大目付中根正盛の息女によって寄進されたと伝えられている。

歴代住持

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歴代 法号
(俗姓・道号)
命日(享年[数え年]) 経歴
開山 速妙院日成 天正4年(1576年)2月
2世 海勇院日竜
3世 仏地院日登
4世 大智院日善
5世 妙宗院日建
6世 福聚院日永
7世 無量院日劫
8世 唯常院日宣
9世 施信院日布
10世 事法院日守
中興
11世
舜了院日徳
12世 智光院日怡 元禄16年(1703年)11月13日
13世 運理院日進 元禄8年(1695年)4月11日
14世 空明院日幸 正徳5年(1715年)3月18日
15世 宝乗院日到 元文元年(1736年)2月12日
16世 本妙院日行 明和8年(1771年)12月10日
17世 観常院日順 天明元年(1781年)10月3日
18世 善取院日仁
19世 妙厳院日寅
(恵雄)
寛政9年(1797年)11月12日(47歳) 南谷檀林 朗慶山照栄院(東京都大田区池上) 50世能化
久住山宏善寺(東京都町田市本町田) 歴世
20世 智耐院日厳[4]
(慈要)
南谷檀林 朗慶山照栄院(東京都大田区池上) 70世能化
山科檀林 了光山護国寺(京都府京都市山科区) 248世能化
興栄山朗惺寺(東京都品川区小山) 歴世
21世 慈扇院日善[5] 嘉永4年(1851年)8月12日(80歳) 栄久山光福寺(千葉県いすみ市大野) 36世
22世 顕善院日乗
23世 円理院日融 嘉永4年(1851年)12月27日 妙玄山實相寺(東京都大田区池上) 22世
24世 遠妙院日楞[6] 明治8年(1875年)11月13日 妙玄山實相寺(東京都大田区池上) 23世
25世 宝乗院日道 南谷檀林 朗慶山照栄院(東京都大田区池上) 101世能化
慧雲山常栄寺(神奈川県鎌倉市大町) 21世
26世 遠静院日孝
(池田日孝)
明治41年(1908年)6月18日(70歳)
27世 摂慎院日祐
(西川惠孝)
東光山玄授院(千葉県市川市市川) 歴世
本光山長勝寺(千葉県勝浦市松野) 36世
28世 玄寿院日照[7]
(植野順喜)
昭和9年(1934年)12月22日(69歳) 長久山宝蔵寺(埼玉県蕨市錦町) 40世
正立山本行寺(埼玉県川口市戸塚) 34世
潮見台教会(神奈川県川崎市宮前区) 三開山の一
29世 尚光院日祐
(植野惠順)
昭和19年(1944年)5月11日(31歳)
30世 玄光院日守
平成24年(2012年)2月17日(97歳) 潮見台教会(神奈川県川崎市宮前区) 歴世
権大僧正
31世 玄明院日淨
堀内山善隆寺(千葉県夷隅郡大多喜町) 49世
正信山妙傳寺(神奈川県鎌倉市扇ガ谷) 26世
潮見台教会(神奈川県川崎市宮前区) 歴世

交通

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近隣施設

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脚注

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  1. ^ 法類・法縁とは、同じ宗旨・宗派に属し密接な関係を持つ僧侶並びに寺院のこと。
  2. ^ 武蔵国橘樹郡稲毛領に点在する大本山池上本門寺直末6ヶ寺(法言山安立寺龍燈山善立寺初香山本遠寺秋興山淨元寺興林山宗隆寺法性山圓融寺)の総称。
  3. ^ 『日蓮宗大観』には「創立天正二年中」とある。
  4. ^ 南谷檀林能化時代には「海聚院」と号した。
  5. ^ 光福寺時代には「慈正院」と号した。
  6. ^ 實相寺時代には「遠解院」と号した。
  7. ^ 本行寺時代には「玄具院」と号した。

参考文献

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  • 「登戸村 善立寺」『新編武蔵風土記稿』 巻ノ60橘樹郡ノ3、内務省地理局、1884年6月。NDLJP:763983/68 
  • 『日蓮宗大観』/西村慈珖 編/日蓮宗大観刊行会/大正7年(1918年)
  • 『宗祖第七百遠忌記念出版 日蓮宗寺院大鑑』/日蓮宗寺院大鑑編集委員会 編/大本山池上本門寺/昭和56年(1981年)
  • 『初香山本遠寺寺誌』/町田堯順・町田順文/初香山本遠寺/平成10年(1998年)
  • 『正中山遠壽院加行門人帳』/常円寺日蓮仏教研究所/正中山遠壽院大荒行堂/令和3年(2021年)

関連項目

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外部リンク

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