ロジャック
ロジャック(マレー語:Rojak)あるいはルジャック(インドネシア語:Rujak)はジャワ島が起源のサラダの一種で、インドネシア、マレーシア、シンガポール、ブルネイなどでよく食されている[2][3][4]。この3カ国で最もよく知られているレシピは、スライスした果物と野菜をまぜてスパイシーなパームシュガードレッシングをかけるというものである[5]。トウガラシ、パームシュガー、ピーナッツで作る甘辛でスパイシーなドレッシングのため、よくピリっとしたスパイシーなフルーツサラダであると説明される[6]。インドネシアのものを日本語で表記する際はルジャックあるいはロジャック、マレーシアやシンガポールのものを日本語で表記する際はロジャックあるいはロジャッ、ロジャなどと呼ばれる[4][7][8][9][10]。とくにインドネシアで広く食されており、インドネシア料理ではレシピにたくさんのバリエーションがある。一般的に具材は非常に多様で、甘辛いドレッシングが決め手とされる[4][10]。果物と野菜で作ることが多く、ピリっとした甘いドレッシングにはシュリンプペーストを加えることもある。魚介類や肉が入ることもある。
ロジャック | |
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ロジャック | |
別名 | ルジャック、ロティス |
種類 | サラダ |
発祥地 | インドネシア[1] |
地域 | ジャワ島 |
関連食文化 | インドネシア、マレーシア、シンガポール |
提供時温度 | 室温で提供 |
主な材料 | 果物、野菜、パームシュガー、ピーナッツ、チリドレッシング |
語源
編集ジャワ島で非常に古くから食されている料理であり、地元では「ルジャック」(rujak) と呼ばれている。「ルジャック」という言葉はジャワの中央部で見つかった古マタラム王国の時代の古ジャワ語のタジ刻文(901年)にある言葉「ルルジャック」(rurujak) に由来する[11]。
ジャワ人のディアスポラやジャワ島に住んでいたインド人の子孫により、この料理は後に他の地域や近隣諸国にも導入され、マレーシアやシンガポールでは「ロジャック」(rojak) と呼ばれるようになっている[12][13]。
文化的な位置づけ
編集インドネシアでは、とりわけジャワ人の間で甘くスパイシーで酸っぱいルジャックの味は妊娠向きだとされ、熟していないマンゴーその他の酸っぱい果物を欲しがる傾向はジャワ語で "ngidham" あるいは "nyidham" と呼ばれている[14]。ジャワの文化では、ルジャックはナロニ・ミトニやトジュ・ブラン(「7箇月」を意味する)と呼ばれる伝統的な出産前の儀礼に不可欠であり、出産を控えた妊婦に対して、分娩が安全で滞りなくうまくいくように願うものとして供される[15]。この時には特別な果物のルジャックが作られ、出産を控えた妊婦と主にその女性の友人からなるお客に出される。この儀礼で食べるロジャックのレシピはインドネシアの通常のルジャックに似ているが、果物は薄切りではなく粗く刻み、ブンタンを必ず入れる点が異なる。全体的に甘い味付けになれば生まれる子どもは女の子、スパイシーであれば男の子だという言い伝えがある[16]。
インドネシアの北スマトラ州タパヌリにあるマンダイリン人が住む地域では、ルジャック作りは収穫の後に行う特別なイベントであり、通常、ルジャックを作って食べるのに村の全員が参加する[17]。
マレーシアやシンガポールでは「ロジャック」は折衷的な混合を指す口語表現としても使われており、とくにマレーシアやシンガポールの社会の他民族的な特徴を記述する時にも使われる言葉である[12][18][19]。
インドネシアのルジャック
編集ルジャック・ブア
編集ルジャック・ブアはシンプルなフルーツサラダであり、パパイヤ、マンゴー、ヒカマ、ミズレンブなどにスパイシーなドレッシングをかけて食べる[20][21]。ルジャックによく使われるヒカマは根菜だが、ナシやリンゴなどの果物に似た味がする[4]。
ルジャック・ベベック
編集ジャワ島西部で食されている果物を使ったルジャックである[22]。ルジャック・ベベックでは材料を細かくしたり、つぶしたりする。バナナの仲間であるピサン・バトゥやタマリンドジュースなどが使用されることがある[20]。
ルジャック・ウ・グロ
編集アチェ州の名物料理で、熟していない柔らかいココナッツの果肉、熟していない緑のパパイヤ、赤鳥の目トウガラシ、砂糖、パームシュガー、氷、塩、少量のライムで作り、冷たくして食す[23]。
ルジャック・クア・ピンダン
編集ルジャックはバリ島では屋台で買う食べ物として人気がある[24]。バリのルジャックは通常のルジャックのドレッシングではなく、果物をスパイスを使った魚の出汁につける。この出汁はテラシ(発酵シュリンプペースト)、塩、赤鳥の目トウガラシ、赤トウガラシ、ピンダンで調理した魚のスープからなる[25]。
ルジャック・チングル
編集「チングル」とはジャワ語で「口」を意味する。ルジャック・チングルはスラバヤ発祥である。東ジャワ州の特産であるこのルジャックは「肉の」味が強い。水牛か牛の唇肉のスライス、ヒカマ、熟していないマンゴー、パイナップル、きゅうり、空心菜、ロントン(インドネシアの餅)、豆腐、テンペなどを用い、ペティス(黒い発酵シュリンプペースト)とつぶしたピーナッツであえる。揚げたエシャロットとクルプックを上にあしらう[26]。
ルジャック・ジュヒ
編集ジュヒとはインドネシア語で塩漬けにしたコウイカを指す。このルジャックには、押し豆腐、ゆでて揚げたジャガイモ、千切りにして揚げた塩漬けコウイカ、きゅうり、麺、レタス、キャベツ、ピーナッツソース、酢、トウガラシ、揚げたニンニクが入る。この料理はジャカルタのコタトゥア地区の中国系コミュニティ発祥で、現在はベタウィ風アシナンに近いベタウィ料理になっている[27]。
ルジャック・シャンハイ
編集インドネシアの中国系コミュニティの料理である。ジャカルタのコタトゥア地区にある「シャンハイ映画館」にちなむ。ルジャック・シャンハイはルジャック・ジュヒ同様魚介類を使う。スライスしたゆでだこや食べられるクラゲ、空心菜をパイナップルジュースをまぜた濃くて赤い甘酸っぱいソースであえ、つぶしてトーストしたピーナッツを加える。通常、チリソースと酢漬けのヒカマを薬味として添える[28]。
ルジャック・ソト
編集東ジャワバニュワンギの名物料理であり、牛肉のソトとルジャック・チングルを一緒にしたものである。空心菜やモヤシなどの野菜を入れたルジャックにロントンとペティスのソースをつけ、ソトのスープを注ぐ郷土料理である。1975年にウスニ・ソリヒンが初めて作った[29]。
ルジャック・エス・クリム
編集ジョグジャカルタ名物のデザートである。果物のルジャックにココナッツミルクのアイスクリームをつける。サンバルも添える[30]。
マレーシアとシンガポールのロジャック
編集ロジャック・ブア
編集マレーシアやシンガポールでは果物のロジャックには通常、きゅうり、パイナップル、ヒカマ、モヤシ、タウポック(揚げ豆腐)、油条が入っている[18]。
ロジャック・ペナン
編集マレーシアのペナンで人気のあるレシピで、ミズレンブ、グアバ、イカのフリット、蜂蜜を混ぜ、熟していないマンゴーや緑のリンゴなど酸味のある果物の味を引き立てるが、モヤシや揚げ豆腐は通常、使わない[31]。このロジャックに使うソースやドレッシングは大変濃いことが多く、ほとんどトフィーのような粘度である[32]。
ロジャック・ママック
編集マレーシアのロジャック・ママックはママッストールでよく提供される料理で、茹でたジャガイモや固ゆで卵などが入っている[33]。
シンガポールのロジャック・ママックにもジャガイモ、固ゆで卵、豆腐、エビのフリッターなどが入っている。ロジャック・ママックを頼むお客はディスプレイから好きなものを選び、中華鍋で温めて細かく切ってもらい、脇に甘くスパイシーなピーナッツとチリのソースを添えてもらってつけて食べる[34]。
ロジャック・バンドン
編集ロジャック・バンドンと呼ばれるシンガポールの料理はコウイカ、空心菜、きゅうり、豆腐、ピーナッツ、トウガラシにソースをつけたものである[35][36]。ロジャック・バンドンはインドネシアの都市であるバンドンとは無関係で、マレー語で「ペア」という意味である[37]。
脚注
編集- ^ “Menguak Fakta Menu Lalapan Sunda Lewat Prasasti Taji” (インドネシア語). beritasatu.com 23 December 2017閲覧。
- ^ “Rujak Indonesian Fruit Salad & Tangy Peanut Citrus Sauce”. Food.com. 2022年11月24日閲覧。
- ^ Indonesia OK!!: The Guide with a Gentle Twist. Galangpress Group. (2004). p. 80. ISBN 9789799341792
- ^ a b c d 『世界のサラダ図鑑:驚きの組み合わせが楽しいご当地レシピ304』誠文堂新光社、2021年、264頁。
- ^ Dina Yuen (2012). Indonesian Cooking: Satays, Sambals and More. Tuttle Publishing. ISBN 9781462908530
- ^ “Spicy fruit salad (rujak)”. SBS. 2022年11月24日閲覧。
- ^ “ダンスも熟成肉も圧巻! バリ高級リゾート『AYANA』の極上ディナータイム♡”. anew - マガジンハウス. 2022年11月26日閲覧。
- ^ “コラム - NNA ASIA・マレーシア・社会”. NNA.ASIA. 2022年11月26日閲覧。
- ^ 室橋裕和「トーキョーアジアめし」『散歩の達人』2022年11月、108頁。
- ^ a b 『おうちでできる世界のおそうざい』河出書房新社、2022年、17頁。
- ^ “4 Makanan yang Sudah Ada Sejak Ribuan Tahun Lalu, Ada Kesukaanmu? - Bobo” (インドネシア語). bobo.grid.id. 2021年2月27日閲覧。
- ^ a b “Rojak”. Your Singapore. 2022年11月24日閲覧。
- ^ “Malaysian Indian Mamak Style Rojak” (7 July 2016). 2022年11月24日閲覧。
- ^ “Ibu Hamil Sedang Ngidam, Nih! Haruskah Semuanya Dituruti?” (インドネシア語). Hello Sehat (2018年11月10日). 2021年2月26日閲覧。
- ^ Lusiana Mustinda (26 November 2014). “Mitoni, Ritual Tujuh Bulanan untuk Kelancaran Persalinan” (Indonesian). Food Detik.com. 2022年11月24日閲覧。
- ^ Ana Amalia (26 July 2016). “Resep Rujak Serut Khas 7 Bulanan” (Indonesian). Merah Putih. 2022年11月24日閲覧。
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- ^ hermes (2018年4月14日). “Singapore's 'rojak' mix of cultures works fine” (英語). The Straits Times. 2021年2月27日閲覧。
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- ^ Polytechnic, Temasek (2015-07-15). Singapore Hawker Classics Unveiled: Decoding 25 Favourite Dishes By Temasek Polytechnic. ISBN 9789814677868 2016年1月22日閲覧。
- ^ “Power Rojak Bandung”. 2022年11月24日閲覧。
- ^ “Bandung”, Online Dictionary, Cari.com.my, オリジナルの22 July 2011時点におけるアーカイブ。 29 March 2010閲覧。