モーセ五書
モーセ五書(モーセごしょ)は、旧約聖書の最初の5つの書である。ユダヤ教的な文脈ではトーラー(ヘブライ語: תורה、Torah)とも呼ばれる。モーゼの五書、律法(りっぽう)、ペンタチューク(Pentateuch)とも呼ばれる。これらはモーセが書いたという伝承があったのでモーセ五書と言われるが、近代以降の文書仮説では異なる時代の合成文書であるという仮説を立て、モーセが直接書いたという説を否定する。ただし、保守的なキリスト教会と学者は今日もモーセ記者説を支持している[1][2]。また正教会における註解書には、こうした学説の対立に触れず、「伝統的に」モーセが著者であるとされているという記述にとどめているものもある[3]。
モーセ五書一覧
編集ユダヤ教
編集ユダヤ教においてトーラは、律法と読むが、意は教え、指示である。なお、トーラは、プトレマイオス朝エジプトのファラオであったプトレマイオス2世の命で、ユダヤ教の祭司族とされるレビ族の書記官たちがギリシャ語に翻訳した律法の題名とされる。
また、ヘブライ語のモーセ五書それぞれのタイトルは、それぞれ最初の文の中から選ばれた文節である。「בראשית」(創世記)は1番目の文節、「שמות」出エジプト記は2番目の文節、「ויקרא」レビ記は1番目の文節、「במדבר」民数記は5番目の文節、「דברים」申命記は2番目の文節から冠詞を除いた言葉が、それぞれの書のタイトルである。そして、それら五つのタイトルが並ぶと「初めに荒野で呼ばれた名は言葉」という意味を成す。そのため、ヘブライ語の律法を読誦する際は、現行の法律や契約書の様式にも取り入れられている読み替えを行い、「言葉」から「名」に、あるいは「名」から「言葉」に読み替えて意に留める。例えば文中に綴られた「かかと」の「言葉」を音読すると同時に、その言葉が「ヤコブ」という「名」に由来することを意に留めるのである。[要出典]
キリスト教
編集区分
編集律法は
- 道徳律法
- 司法律法
- 儀式律法
イスラム教
編集イスラム教においても啓典のひとつとして扱われ、「タウラート」と呼ばれている[10]。ただし、今日のトーラーや旧約聖書にあるものとは異なる[11]。
脚注
編集- ^ 尾山令仁『聖書の権威』羊群社
- ^ ヘンリー・シーセン『組織神学』聖書図書刊行会
- ^ "Orthodox Study Bible" (正教聖書註解) P. 1, 65, 117, 160, 210 (2008年)
- ^ 英: in the beginning、ヘブライ語対訳英語聖書 Genesis 1:1
- ^ 英: are the names、ヘブライ語対訳英語聖書 Exodus 1:1
- ^ 英: called、ヘブライ語対訳英語聖書 Leviticus 1:1
- ^ 英: the wilderness、ヘブライ語対訳英語聖書 Numbers 1:1
- ^ 英: the words、ヘブライ語対訳英語聖書 Deuteronomy 1:1
- ^ D・M・ロイドジョンズ『山上の説教』「律法と預言者を成就するキリスト」聖書図書刊行会(いのちのことば社再刊)
- ^ “Holy books - God and authority in Islam - GCSE Religious Studies Revision - Edexcel - BBC Bitesize”. 2021年8月9日閲覧。
- ^ “諸啓典への信仰 - イスラームという宗教”. 2021年8月9日閲覧。
関連項目
編集外部リンク
編集- 木幡藤子. “最近の五書研究を整理してみると” (PDF). 広島大学. 2015年8月25日閲覧。
- モーセ五書(モーセごしょ)とは - コトバンク