なまこ壁
生子壁[1][2][3]/海鼠壁[1][2]/なまこ壁(なまこかべ)とは、土蔵などに用いられる、日本伝統の壁塗りの様式の一つで、その壁をも指す[4][5]。生子/海鼠/なまこともいう。壁面に平瓦を並べて貼り、瓦の目地(継ぎ目)に漆喰を蒲鉾形に盛り付けて塗る工法[6]によるもので、目地の盛り上がった形がナマコ(海鼠)に似ていることからその名がある[7]。
名称
編集辞典・事典の類は、「生子壁」を見出し語、「海鼠壁」を別表記とするものがほとんどであるが、例外的に逆もある。しかし、「なまこ壁」という表記は見られない。また、建築用語集や建築業者の情報では、「生子壁」を見出し語、「海鼠壁」を別表記とし、「なまこ壁」に言及しないもの[8]や、「なまこ壁」を見出し語、「海鼠壁」を別表記とし、「生子壁」に触れないもの[9]、「海鼠壁」を見出し語、「生子壁」を別表記とするもの等々、まちまちで、統一見解のある様子は全く見られない。他方、言語や建築を専門としない地方自治体や観光協会などといった分野で用いられる表記は「なまこ壁」が多い。また、辞典・事典の類では略称として「生子/海鼠/なまこ」を記載するものある。
機能・特徴
編集なまこ壁は江戸時代以降に、庶民の家の屋根葺きに瓦が利用されるようになるのと同時期に出現した[10]。潮風や台風などの自然災害に強く、土壁や板壁よりも耐火性に優れることから全国的に普及した[11][10]。工法としては、平瓦を水平に並べて張っていく「いも張り」が最も古いが、平瓦を斜めに張る「四半張り」が最も普及した工法となっている[10]。他に、いも張りの端を重ねて張る「馬乗り張り」や「青海波型」「亀甲型」「七宝型」などの技巧を凝らした張り方もある。豪商の蔵では、なまこ壁とともに「ゑぶり」と呼ばれる漆喰細工が施される事が多く、施主の財力や漆喰職人の腕前を現すステータスシンボルとなっている[10]。
生子壁のある街並み
編集生子壁を用いた日本の城
編集生子壁は、豪商の蔵以外にも門や長屋、櫓の建築様式として採用している城があり、金沢城や新発田城がその代表例である。金沢城においては石川門が、新発田城においては、表門と二ノ丸隅櫓が現存しており、それぞれ国重要文化財に指定されている[12][13][14]。
- 金沢城
- 石川門
- 橋爪門
- 鼠多門
- 五十間長屋
- 三十間長屋
- 菱櫓
- 新発田城
- 表門
- 二ノ丸隅櫓
脚注
編集- ^ a b 『日本大百科全書:ニッポニカ』
- ^ a b 平凡社『世界大百科事典』
- ^ 平凡社『マイペディア』
- ^ 『大辞泉』
- ^ 『大辞林』第3版
- ^ 松崎町のホームページ Archived 2011年1月29日, at the Wayback Machine.伊豆松崎小辞典
- ^ 読売新聞 旅ゅーん 日本の旅 Archived 2008年6月11日, at the Wayback Machine.陽光に輝くなまこ壁(松崎(まつざき)=静岡)
- ^ “生子、海鼠 〔なまこ〕- 用語集”. 公式ウェブサイト. 日本金属屋根協会. 2018年1月25日閲覧。
- ^ “なまこ壁とは”. 蔵. 中津鋼材株式会社. 2018年1月25日閲覧。
- ^ a b c d 森隆男(編)『住の民俗事典』 柊風舎 2019年 ISBN 978-4-86498-061-6 pp.263-264.
- ^ 富山県デジタル文化財ミュージアム常設展示室 - 建造物・壁構造
- ^ 新潟県観光協会. “新発田城・新発田城址公園”. にいがた観光ナビ. 2022年10月15日閲覧。
- ^ “なまこ壁(海鼠壁) | 金沢城のガイド | 攻城団(日本全国のお城情報サイト)”. 攻城団. 2022年10月15日閲覧。
- ^ “二の丸隅櫓 | 新発田城のガイド | 攻城団(日本全国のお城情報サイト)”. 攻城団. 2024年1月5日閲覧。