pixiv事業本部の丸山(@alitaso)です。
2022年4月よりピクシブは Ruby アソシエーションの Platinum スポンサーとして協賛を開始しました。
Ruby アソシエーションとは
Ruby Associationは、プログラミング言語Rubyの普及と発展のための非営利団体です。Ruby関連のプロジェクトやコミュニティ、ビジネスの関係を強化し、Rubyの利用に関する諸問題の解決に取り組みます。
Ruby 開発及びコミュニティ支援をはじめとして、RubyWorld Conference や Ruby Prize といったカンファレンスの開催、Ruby技術者認定試験事業や事業者認定制度などを実施しています。
特に開発に関連する部分では
- 公募型開発プロジェクト
- 開発用の設備購入費用やサービス利用料などの活動に対する助成
- 安定版保守
- 開発サーバー運営費、Slack有料プランの提供
といったものに取り組まれています。
支援には年会費1口10万円からはじめることができ、個人による寄付制度もあります。
詳細は Ruby アソシエーションの公式サイトをご確認ください。
支援の詳細
ピクシブは Platinum スポンサーとして年間50万円の支援を行います。スポンサリングは本年のみに留まらず、来年以降も続けて行う予定です。
なぜ Ruby へのスポンサリングを行うのか
エンドユーザー向けサービスとしては、以下のサービスで Ruby が利用されています。
- BOOTH https://booth.pm/
- pixivFACTORY https://factory.pixiv.net/
- pixivコミック https://comic.pixiv.net/
- Palcy https://palcy.jp/
- VRoid Hub https://hub.vroid.com/
- pixiv Sketch https://sketch.pixiv.net/
またエンドユーザー向けサービスではありませんが間接的に利用してるものとしては
- GitLab
- fluentd
などがあります。
ピクシブでは Ruby/Ruby on Rails を10年以上にわたって採用しており、Rubyで書かれたたくさんのサービスでクリエーターの創作活動を応援しています。
これまでのピクシブは Ruby のもつ力強さや楽しさによって事業をスケールすることができました。私たちのミッション「創作活動がもっと楽しくなる場所を創る」を実現する上で Ruby は欠かせない存在となっています。
他にも多くの OSS を利用していますが、Ruby は我々の事業を行う上で最重要な OSS の1つと位置付けて今回支援を行うに至りました。
Ruby 開発の台所事情
ピクシブの配信技術部マネージャー 兼 Ruby コミッターの中村(@unak)に、Ruby アソシエーションへの支援金が Ruby コア開発最前線ではどのように活用されているかについて伺いました。
ー はじめに Ruby コミッターのみなさんの活動について教えてください
中村:Ruby のコードを書いてコミットするのはもちろん、Ruby のサイトを運用したり、CI/CD 用のサーバやバグトラッカーを運用・管理したり、セキュリティ関連の報告に対応するのもコミッター陣が行っています。コードを書く以外にも Ruby の仕様に関する議論をすることも大事な活動の一つです。
ー 活動をする中でお金がかかることはどんなことがありますか?
中村:Ruby のサイトやCI/CD、バグトラッカー、メーリングリストなどを運用するためのサーバ代が必要になります。議論を行うのにはお金はあまりかからないですが、新型コロナ前は1、2年に1回くらいのペースで偶に合宿をやったりもしましたね。あとセキュリティ関連の報告に関しては報奨金を出したりしています。
あとは開発助成金を出したり。昨年は WebAssembly や debug.gem、formatter に関する開発が採択されていたと思います。他には古い Ruby を保守するための委託事業ってのがあります。
ー そのうちRubyコミッター内で賄っているところがあれば教えてください
中村:サーバ代は結構 Ruby アソシエーションから出るようになりましたが、運用は個人が手弁当で頑張っています。特殊なマシン、環境を用意するための費用は出てないこともありますね。
これらの費用は必ずしも Ruby アソシエーションだけから出ているわけではなくて、各企業から出ていたり、個人が頑張っていることもあります。セキュリティ関連の報告には HackerOne を利用しているのですが、報奨金は The Internet Bug Bounty が受け持ってくれています。
ー 企業による支援は Ruby 開発にどのような影響があるのでしょうか?
中村:まず CI/CD 用のサーバ代がめちゃくちゃ高いです。すっごい高い。ある程度は事業者が出してくれていて、残りもほとんどは Ruby アソシエーションが出してくれてはいます。ただ本音を言うともっとサーバの台数が欲しいし、より強いマシンを使って開発を進めたいというのはあります。実際には予算の問題があるので節約しながら運用しています。
なので支援があると Ruby の開発のスピードが上がりますし、サポートできるプラットフォームも増えるかもしれません。
企業でフルタイムコミッターを雇っているところもありますが、Ruby アソシエーション を支援する企業が増えると、 Ruby アソシエーションが コミッタを雇用できる未来もあるかもしれないです。
参考事例
本取り組みを進めるにあたり Prettier への支援開始のお知らせと企業が OSS に対して支援するということ - LINE Engineering の記事を大変参考にさせていただきました。
LINE さんのフロントエンド関連領域の OSS スポンサリング状況と企業が OSS をスポンサリングする際のポイントについてまとめられており、社内で OSS 支援を始めてみたいけれどもどのようにスタートしていいかわからないという方におすすめの内容です。
実際に自分もこの記事を読んだ勢いで支援に対する動き出しができた節があります。花谷(@potato4d)さんにはこの場を借りて感謝を。
おわりに
ピクシブにおける Ruby アソシエーションへのスポンサリング事例について紹介しました。
本記事をきっかけに Ruby アソシエーションを通じて Ruby コア開発を支援する方法があることを知ってくださる方が増えれば幸いです。