お願い)本記事で紹介しているサンプル音源は、ぜひモニタースピーカーや高品位ヘッドホンでお聴きください。
2020年12月追記:Blue Microphones BLUEBIRDは取り扱いを終了いたしました
定番マイクを徹底検証
こんにちはサカウエです。レコーディング業界では、キックには〇〇、タムは☓☓、ボーカルには△△・・といったように、昔からレコーディングやライブなどで必ず使用される「定番」と呼ばれるマイクがあります。おそらく最も有名なのは、発売以来40年の長い期間にわたり、商業レコーディング・スタジオであれば必ず常備され、主にボーカルやオーケストラの録音に使われているノイマンの「U87Ai」ではないでしょうか。
U87Ai studio set
他にもハンドマイクのボーカルにはお馴染みの SHURE / SM-58、
SHURE SM58
タムならクジラ(SENNHEISERのMD421)、
漫才ならC-38B(SONY)!
・・と定番は色々とあるのですが、今回デジランドではそんな「定番マイク」を一同に集め、実際にレコーディングを行ってみました。あらためて各マイクの音質の特性・特徴がわかって非常に興味深い結果になりましたので、皆様の「ワンランク上のマイク選び」の参考になれば幸いです。
総予算100万円(注:もし全部買った場合)
さて、今回の企画の為に用意したマイクは全部で10本。メーカー各社様にお借りしました、ご協力いただきありがとうございます。
マイク一覧(メーカー:型番:販売価格※1)
- SHURE(シュア):SM57-LCE:¥13,530(税込)
- SHURE(シュア):KSM44A/SL:¥132,000(税込)
- AKG(エーケージー):C214:¥58,960(税込)
- AKG(アーカーゲー、エーケージー):C451B:¥52,800(税込)
- AKG (アーカーゲー、エーケージー):C414XL II:¥150,480(税込)
- DPA(デーピーエー):VO4099:¥67,100(税込)
- DPA(デーピーエー):4006A:¥231,000(税込)
- AUDIO TECHNICA(オーディオテクニカ):AT4040:¥31,218(税込)
- Blue Microphones(ブルーマイクロホン):BLUEBIRD:¥32,560(税込)
- NEUMANN(ノイマン):U 87Ai studio set:¥354,445(税込)
※1)2015/3/1現在
「え?あのマイクがなんで無いの!」というご意見は重々承知しておりますが、さすがにあれもこれも全部揃えることはできませんでした。なにとぞご了承下さいませ。
なお今回の実験の目的は各マイクの特性、傾向、楽器との相性などを知ることであって「どのマイクが一番優れているか?」を判断することではありません。また同じマイクであっても、マイキング(収録対象へのマイクの向き)が数センチ違っただけで全く異なる音が収録されてしまうのがマイク・レコーディングの奥深いところ。本記事はあくまで「ひとつのケース」として聴いていただきたいと思います。
収録開始
収録方法ですが、当初はプレーヤーさんにお願いして、マイクをとっかえひっかえ、その度に同じフレーズを何度も演奏していただこうと思いました。しかし機械と違って人間の場合は、演奏する度に微妙にニュアンスや音量が変わるのはあたりまえ。また何度も何度も同じフレーズを演奏していただくということはプレーヤーさんに予想以上に心理的・肉体的な負担がかかります(特にボーカリスト)
そこで今回は写真のように複数のマイクをセッティングして一気にレコーディングするという手法をとりました。
鋭意セッティング中
これだとプレーヤーさんには数テイク演奏していただければ良いので、負担も軽減されます。マイク事に若干収録ポイントが異なりますのでフェアでは無いかもしれませんが、音質の違いや特質はお分かりいただけるのではないかと思います。
オーディオ・インターフェースは Steinberg UR824を使用し、最大8本のマイクをProToolsに同時録音しています(24bit/96kHz)
なお「VO4099」は今回ハイパス・フィルターが入っているモデルしか用意ができなかった為、全て80Hzのハイパス・フィルターがかかっています。
女性ボーカル
少々異様な光景ですね・・ボーカリストの方には色々と無理をいって大変申しわけありませんでした!
それではさっそく聴き比べてみましょう(SoundCloudのストリーミング再生は128kbpsのMP3です)
Female Vocal Soft (バラード系)
Female Vocal Hard (ポップ系)
いかがでしょう?mp3音質でも違いは十分にお分かりいただけたと思います。なお他の楽器も同様ですが、特にボーカリストは人それぞれ声質、音量等個人差が激しくまさに百人百様。したがってマイクとの相性は千差万別で、ある人には良いマイキングでも他の人には「???」というケースもあるわけです。おそらくそのあたりは経験を積んだレコーディングエンジニアの腕の見せどころになるのだと思います。
U87Ai、KSM44A/SL、AT4040、C214、VO4099、bluebird、C414XL2