8 March 2024

YOSHIROTTENインタヴュー「グラフィックデザインとは答えを出すこと」

AREA

東京

8 March 2024

Share

YOSHIROTTENインタヴュー「グラフィックデザインとは答えを出すこと」 | YOSHIROTTENインタヴュー「グラフィックデザインとは答えを出すこと」

YOSHIROTTEN

'); document.write('
'); }

東京・銀座の「ギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg)」で「YOSHIROTTEN Radial Graphics Bio ヨシロットン 拡張するグラフィック」展が開催されている。グラフィックデザインを起点に平面のみならず映像、立体と様々なクライアントワーク、作品制作で縦横無尽に活躍するYOSHIROTTENの過去から現在までを一望できる展示だ。しかもgggで400回目となる記念の回。 数々の有名グラフィックデザイナーがプレゼンテーションしてきた老舗ギャラリーでYOSHIROTTENは何を見せたのか?デザインのクリエイションに迫った。

写真=五十嵐拓也
文=倉田佳子

―gggでの記念すべき400回目の展示として個展開催おめでとうございます。 いつ頃にお話があったのでしょうか?

1年半ほど前です。2018年にgggで開催した、山口はるみさんの個展「HARUMI YAMAGUCHI × YOSHIROTTEN Harumi’s Summer」のディレクションに関わったことがあるのですが、それ以来ですね。お話をいただいた時は、本当に嬉しかったです。1986年からグラフィックデザインの歴史を紡いできたこの場所で、どういう風に僕なりのクリエイションを見せようか考えていきました。

そもそもの質問になってしまうのですが、「YOSHIROTTEN」という名前の由来は何でしょうか?

20歳を過ぎた頃から名乗っています。友達と一緒にパーティをやろうってなったときに、彼がチャカ・カーンから引用してTAKAKAHN(タカカーン)と名乗り始めたんです。だったら、自分の場合は「セックスピストルズのジョニー・ロットンから借りてYOSHIROTTENかな?」と冗談半分で名乗り始めて、そのままいまに至っています。

TAKAKAHNとのDJユニットは、「やっぱり明日も楽しい方が楽しい」を略して「YATT」という名前で活動を始めて、今までにフジロックやサマーソニックなどのフェスに出演したり、日本中でプレイしました。当時はパーティのフライヤーのデザインをして、自分もDJとして出演するようなことが多かったです。いまでもTAKAKAHNには、僕の作品や広告仕事など全般の音楽をつくってもらっています。

そこからグラフィックデザイナーとして15年が経ちますが、活動当初から平面から立体に至るまで、多岐にわたるワークスを手がけるようになると想像していましたか?

想像していませんでした。ミュージックヴィデオを製作し始めたことが、初めて空間的な表現に触れた手がかりになったと思います。空間は、音楽やセット、照明などいろいろな要素が組み合わさって、ヴィジュアル化されるものじゃないですか。

グラフィックデザインの延長としてつくっているからか、お店のデザインを手がけたときに、建築家の方からグラフィック視点の内装と言われたことがあります。立体や空間の仕事にも、必ずいろいろな角度から見ても楽しめるという平面的な興味が自然と反映されているのかもしれないです。

本展のタイトルにもある「グラフィックの拡張」は、意識的に行ってきたのでしょうか?

ちょっとあったかもしれないですが、個人的には、gggで今まで展示してきたような数々のグラフィックデザイナーの大先輩たちがいる中で、自分だからこそ出来るグラフィックデザインのあり方ってなんだろうと探求した結果だと思います。

グラフィックから始まり、立体や空間へと拡げることは20代の頃からずっと手を動かしながら考えていたような記憶があります。

いまや、どのメディウムでもYOSHIROTTENさんらしさが分かりますが、自身のオリジナリティはどのように確立したのでしょうか?グラフィックデザイナーの仕事は、オリジナリティと相手のアイデア両方をうまく汲み取る必要があるように思います。

オリジナリティって何ですかね……。僕の場合は何者でもなかった時代からとりあえずたくさんアウトプットして、早く自分のスタイルを確立しないといけないと常に手を動かしてきました。昔はシルクスクリーンやエアブラシ、コラージュなどのアナログな表現もしていましたが、その世界の先駆者も山ほどいますよね。

僕は、過去にはない未来で見たいものをつくりたかったからそこに向かいました。そして、自分だからこそできる表現や感覚を突き詰めて、多くの作品を発表してきたことで、自分のスタイルを確立することに繋がったように思います。

まさにその膨大な量が地下1のモニターに映る作品にあらわれていますね。

地下1階では、今まで手掛けた作品が並ぶ。ディスプレイに続々と今までの作品が映し出されていく。

地下1階では、今まで手掛けた作品が並ぶ。ディスプレイに続々と今までの作品が映し出されていく。

地下1階では、今まで手掛けた作品が並ぶ。ディスプレイに続々と今までの作品が映し出されていく。

そうです。展示プランは、この会場で原体験やアーカイヴを見せることを普通ではなく、どうしたら面白く、刺激的なものにできるのかを考えました。パースを描きながら整理していき、2つのフロアを対照的に見せながらも機能性があり世界観に没入させていくようなものにしたいと思い、そのアイデアを実現していくような形で進めていきました。

グラフィックデザインの展覧会なので、これまで制作してきた印刷物を大量に並べるようなプランも思い浮かんだのですが、限られたスペースに対し、いままでつくってきた量が膨大で絞り切れませんでした。

ですので地下1階では、モニターに作品を映すことで、ランダムかつ無限に見せられるようにしました。自分が15年間にわたってやってきた軌跡とグラフィックの原体験をどのように新しく見せるかということも意識しましたね。

YOSHIROTTENさんのグラフィックデザインの原体験を体感できるように、1にはRGBの色彩の作品が並びます。RGBは自身にどのような影響を与えたのでしょうか?

 

240215_YOSHIROTTEN@ggg_168

《Signal RGB(2024 Version)》。RGBのグラフィックが明滅するモニターが壁面一帯を覆う。

僕は鹿児島の自然の中で生まれ育ったこともあってか、初めて学校のコンピュータ室で暗闇に発光するいくつものモニターを見たとき、すべてがぶち破られるような衝撃を受けました。

その衝撃は、まさにパンクを聴いたときと似ている感覚でした。パンクがたった「3コード」で世界を変えたように、そこに映る「RGB」の3原色の光は、自分にとって忘れられない体験としてグラフィックデザインへの興味のきっかけを与えてくれました。そうした体験をもとに、1階に並ぶ作品群のシリーズ名に《RGB Punk》という名前をつけています。

Signal RGB2024 Versionは、シリーズ最初の作品として発表されたものですね。

約60台のすべて異なる動画を再生する液晶ディスプレイで構成している作品です。2019年にラフォーレミュージアム原宿で開催された展覧会「PHENOMENON: RGB」で発表した作品なのですが、さまざまな種類のモニターがランダムに設置されている家電量販店のモニター売り場からインスピレーションを得ています。

《RGB Machine》。来場者が操作できる体験型作品。

《RGB Blueprint Series》。展示中唯一のプリント作品。

同じく1階に展示している《RGB Machine》は、2023年に開催されたアートイベント「EASTEAST_TOKYO 2023」で発表した作品。映像作家の橋本麦さんとの共同作品で、音の影響を受けながら動的に画像が変化する独自のヴィデオ・シンセサイザーです。鑑賞者が操作盤を触って体験できる作品です。いまやボタン式よりもタッチパネル式のものが普及していますが、あえてボタン式にして目の前に映る世界を感じることで操作した人が身体性を確認できるような鑑賞体験をつくりたいと思いました。

展示作品の中には、2020年に発表した森山大道さんとの作品や、ドリス ヴァン ノッテン2020年春夏メンズコレクションで発表した蜷川実花さんとの作品など写真家との共作も入っていました。ヴィジュアルをつくり出すクリエーター同士、どのようなプロセスで完成に持っていくのでしょうか?

アートディレクションと違って、共作という形で写真家の方と制作するときは、きっかけもやり方もアウトプットも全く違います。

例えば、森山さんとの共作「SHINJUKU_RESOLUTION」を制作するにあたっては、最初作品を見たときに、何も入り込む隙がないくらいかっこいいと思って、正直お断りしようか迷いました。それでも写真をJPEGデータとしてもらってPhotoshopで写真を拡大していったときに、荒い粒子が四角いピクセルに変わって、僕が入れる隙間は「解像度」の奥にあるここなのではないか?とひらめいたので共作に至りました。

モニターに広がるその景色はもはや現実なのか仮想世界なのか分からないようにも見えて、その体験を通して森山さんが写す新宿を鑑賞者の方に体感してほしいと思いながら制作しました。展示会場で発表していない作品も含めて、最終的に70〜80点ほどつくりましたね。

写真家で他に気になる方はいますか?

森山さんや蜷川さんの他にはTAKAYさん、ウィン・シャさん、Mana Hiraiさんとコラボレーションしたり、SUNの作品の撮影では、高木康行さん、有村勇史さん、 渡邉成美さん、Jesse Kojimaさんなど様々なスタイルの方々に撮影してもらったり、作品の新しい見え方を楽しんでいます。

写真家との共作は、お互いの良さを引き出しながらそこでしか生まれない新しいものであることを意識していますね。

国内外の数々のコラボレーターと共作を残してきたわけですが、完成に持っていくまで大切なことはコミュニケーションでしょうか?

いえ、むしろコミュニケーションは取らないですね。ただただ僕がそれを受け取って、何ができるかを返すのみです。僕にとっての作業場は、パソコンというよりもモニターの中と頭の中の往復にあるので、そこに色々なものを放り込んだときに何ができるのか念入りに解像度を潜りながら見て、考えていきます。

ほとんどの場合ルールは無視して、めちゃくちゃなことをやっているので、僕のスタッフは正直大変だと思います。例えばPhotoshopでの作業でも調整レイヤーもつくらず、レギュレーションもなく、スタッフにシェアしてもレイヤーデータを残したりコピーしていないから前に戻れない。でも新しい強いものがガツっんと生まれるんですよね。

プロセス自体がオリジナリティとも言えますね。

本当は調整レイヤーをつくった方が作業しやすいし、時間的にも効率的にもいいとは思うんです。もちろん、僕も20代のとき所属していた事務所・ポジトロンで一通りのグラフィックデザインの基礎やチームプレイは学びました。

その上で、アウトプットする最終形に早く行きつきたいという自分の衝動から、レイヤーをつくるプロセスさえ排除して制作しています。最初から脳内ではアウトプットが見えている場合もありますし、制作している最中に急に変わってできることもあるので、ひとまず手を動かさない限りは何もわからないのです。

手を止める瞬間はどこにあるのでしょうか。

そこは感覚ですね。かっこいい、面白い、新しいと思えるようなところまで来たら、手を止めます。でもグラフィックデザインは、いらない要素を全部省く作業の積み重ねでもあるので、これ以上にシンプルな表現や情報の視覚伝達ができるかという部分も大事です。

ここで言う「シンプル」とは、ものを単純に簡素化していくことではなくて、視覚的にも感覚的にも、ちゃんとそれだけで伝わるかということ。そこに行き着いて、自分の感覚としても満足したら手を止めています。

改めて、グラフィックデザインを定義するとしたら、何でしょうか

240215_YOSHIROTTEN@ggg_157

グラフィックデザインは、課題を美しく整理することだと思います。絶対に答えがあるんですよね。デザインの目的さえ達成できたら、あとはより美しくなるとか、自分の好みなど感覚的なところを入れていくようなプロセスを加えていきます。

 ロジカルな部分と感覚的な部分両方のバランスを持ち合わせていると。

展示のレセプションでお客様に「スーパーバランスマン」って言われました(笑)。両方があるから自分の作品がつくれているような気がします。今回の展示とは違って、これまで2018年に開催した個展「FUTURE NATURE」、近年発表し続けているシリーズ「SUN」などの作品をつくっているときも、実はそのバランスが根底にあると思います。

すべてを感覚的に行って完成させるのではなく、最終的に鑑賞者がどのように見てくれるのかまで考えて作業しています。グラフィックデザインでも、例えば商品のパッケージや広告のデザインだったとしたら、それを手に取るお客さんのことを想像してつくるわけじゃないですか。その感覚と近いですね。

作家によっては、作品発表したらオーディエンスのリアクションを全く気にしない人もいますが、YOSHIROTTENさんは、受け手のことも作品発表のうちのひとつとして意識しているのですね。

単純に発表することが楽しいし、知られなくてもいいからつくりたいというものはいままでなかったかもしれないですね。つくったもので誰かと繋がれる方が、自分は生きているなと感じます。

今後の展示や活動があれば教えてください。

 今年10月、初めて美術館で個展を実施します。いままで美術館で展示したことがなかったので、新作を制作していてすごくワクワクしています。美術館というファインアートの施設は、なかなか行けなかった領域だったのでとても楽しみです。

様々なクライアントワークも色々と準備中です。今年は、作品制作とクライアントワークどちらもあって楽しいという、理想的な状態をより楽しめそうな年です。やっぱり明日も楽しい方が楽しい、じゃないですか。

YOSHIROTTEN プロフィール
1983年生まれ。ファインアートと商業美術、デジタルと身体性、都市のユースカルチャーと自然世界など、複数の領域を往来しながら活動。デザイン・スタジオ「YAR」主宰。商業に於いて視覚芸術が関わるほぼ全ての範囲で膨大な量の仕事を手掛ける。2023年にはマルチメディア・アートプロジェクト「SUN」を日本各地で展開した。
yoshirotten.com

タイトル

YOSHIROTTEN Radial Graphics Bioヨシロットン 拡張するグラフィック

会期

2024年2月14日(水)~2024年3月23日(土)

会場

ギンザ・グラフィック・ギャラリー(東京都中央区銀座7-7-2 DNP銀座ビル1階)

時間

11:00~19:00

定休日

日曜日、祝日

入場料

無料

URL

https://www.dnpfcp.jp/gallery/ggg/jp/00000827

'); document.write('
'); }

Share

'); } if (window.innerWidth < 769) { document.write('
'); }
注⽬写真家に関する記事
注⽬写真家に関する記事

Share

SNS