日本のSaaS企業は上場までにシェア何%なのか調べた件
御社のTAMを教えてください
投資家の皆さんとお話していると「TAM(タム)」という言葉が登場します。
TAMとは・・・
TAMとはTotal Addressable Marketの略称で、「さまざまな条件が満たされたときに実現される、あるプロダクトの最大の市場規模」を指す。http://tech.nikkeibp.co.jp/it/article/COLUMN/20070604/273442/
つまり我々のサービスが対象としている市場の大きさを教えてくれ、ということですね。
市場のサイズの算定には2つアプローチがあるようで『特に立ち上げから間もないタイミングの企業はボトムアップで考えよ』という意見が主流のようです。
要は投資する側の意見としては
「この市場は矢野経済研究所の調べで3000億の市場で我々がその10%をとるだけで300億の売上になります!」
と起業家に意気込まれても、「え?その市場って複数のセグメントの合計で3000億じゃないの?仮に統一のセグメントだとしても市場のシェア10%に至るまでにどんなマーケティングや営業が考えられるのか、そのためにどんなコスト投下が必要なのかがわからないと簡単にはお金だせないよ。。
という感じだと思います。
一方でトップダウンの考え方が悪というわけでもなく、これは企業のフェーズや起業家/投資家のタイプの違いなのかなとも思います。
参考記事)
トップダウン投資家とボトムアップ投資家の違いと、それぞれへの対応方法 | 500 Startups Japan
私個人としてはマーケティングでの顧客へのアプローチのしやすさ、営業の効率、プロダクトの競合優位性、市場のニーズの顕在化の具合などを加味して短中期の目標設定をしています。そんなボトムアップ思考の私ですが、先日投資家の方に
「で御社は上場までにどういう状態になっていたいの?」と質問されて答えに窮しました。
ここでいう状態とは「マーケットシェア〇〇%をとる」といった答えを期待されていたようですが、正直自分としては△△年でマーケットシェアの〇〇%を獲得するという考え方をしたことがなかったので、そういうトップダウン的発想も持っておいたほうがよいと新しい視点が得られたような気がしました。
よくよく考えてみると我々と同じSaaS系の企業が上場までに市場シェアの何%を獲得しているのか、などあまり知りませんでしたのでちょっと調べてみました。
日本SaaS企業の実例からみる上場時のマーケットシェアと売上
今でこそSaaSという言葉を色々な場所できくようになりました。
最近ではスタートアップのピッチ系のイベントの参加者の半数くらいがSaaSってこともありますよね。
しかしながら実は日本で上場済みという条件でみるとあまり事例としては多くありません。
僕が調べた限りでは
・Wantedly(admin) ・・・企業向け採用管理SaaS
・カナミック ・・・介護事業者向けSaaS
が直近上場事例としては該当すると思いますのでまずはこの2社を調査しました。
※1:一の部および公式サイト等に記載の利用社数と売上から筆者が算出
その他基本的に上場時の一の部をもとに作成しました。
カナミック一の部
※いやいやさすがにすべての中小企業がWantedlyの対象ってわけでもないでしょ、的なツッコミが聞こえてきそうですが一旦社員1名の企業も含むすべての会社がWantedlyの対象、という前提で算出してみました。もう少しシビアに対象を絞るとシェア2-3%ってところでしょうか。
未上場業界特化型SaaSのマーケットシェアも調べてみた
上場済み企業だと事例が少なかったので未上場でも最近存在感のある(と筆者が思っている)SaaS企業についても調べてみました。
いずれもサービス開始から5年以内に市場シェアの5-10%を獲得しています。Classiに関してはメインの対象としている高校市場でいうとすでにシェア40%、Musubiはまだリリースから1年でシェア8%とかなり凄まじいです。
結論:業界特化型のSaaSであれば5年以内にシェア10%を目指すべきかなと
業界ごとにサイズ、価格も、マーケティングでのリーチのしやすさも違いますので一概には言えませんが上場事例でいうと介護事業社SaaSのカナミックが約5%、その他未上場企業例をみても各種領域でシェア10%に届きそうな実積を叩き出しています。
逆にシェア20%を超える事例はありませんでした。もしそのレベルの目標を目指すのであればそれを実現するにたるアセットを持っているか戦略をしっかりと構築する必要がありますね。
全く規模の違う話ですが下記の記事によると2014年段階でのSalesforceのマーケットシェアが16%だそうで。
CRMベンダー4社をガートナーが比較、セールスフォース、SAP、オラクル、MSの動向 |ビジネス+IT
産業横断且つ巨大な市場だとシェア20%っていうのはほんとに難しいことなのだと思います。
では今回はこのあたりで。