藤井聡太七段、王座挑戦へM2

将棋の史上最年少棋士・藤井聡太七段(15)が22日、東京都渋谷区の将棋会館で行われた第66期王座戦準々決勝で深浦康市九段(46)を後手番の120手で破り、初のタイトル挑戦までマジック2とした。昨年12月、デビュー後最大の逆転負けを喫した深浦九段へのリベンジを果たし、悪夢を払拭した。準決勝は7月6日、斎藤慎太郎七段(25)と対戦する。
終局後の藤井の表情には余裕すら漂っていた。「ここまで来ることができたので、次も全力を尽くしたいと思います」。対局室に殺到した報道陣が熱気の中で「タイトル戦が現実味を帯びてきたが…」と尋ねても「意識しても仕方がないかなと思うので、次も今まで通り指せればと思います」とクールに応じた。
因縁の強敵を倒して初の大舞台へと前進した。深浦九段は王位3期のタイトル歴があり、現在も順位戦A級に在籍する強豪中の強豪。前局では羽生善治竜王(47)を破ってベスト8入りしていた。己を鼓舞するために頬を叩きながら思考する。粘り腰は将棋界随一だ。
昨年12月、第3期叡王戦本戦トーナメントでの対戦では、終盤で藤井が勝勢まで持ち込んだが、深浦九段が難解な勝負術を駆使して逆転勝ち。デビュー後最大の屈辱を味わった15歳が終局後に悔しさをあらわにする姿は将棋ファンの間で話題になったが、本局では相手が投了を告げるまで一手のスキも与えず。「今日は時間に余裕があったので落ち着いて指せました。(敗戦が)糧になった部分はあります。ああいう経験をして成長できたと思います」。教訓が天才をさらに強くした。
サッカーW杯で列島が沸いているが、地元・名古屋グランパスエイトの選手を1人も挙げられない。今はただ、将棋について考えること以外に興味はない。
次戦は斎藤七段と激突する。昨年の棋聖戦でタイトル戦に初登場し、羽生棋聖に挑戦した俊英。本棋戦の準決勝でもタイトルホルダーの久保利明王将(42)を破った実力者だが、藤井は昨年の非公式戦「炎の7番勝負」で勝利している。同じ関西所属で詰将棋を偏愛する点も共通する。「斎藤七段と大きな舞台で指せることはうれしいです」。中村太地王座(30)への挑戦権を目指し、準決勝も自然体で臨む。(北野 新太)