「電動自転車」? 混同してミソクソにするんじゃない、の1059号
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「電動自転車」? 混同してミソクソにするんじゃない、の1059号
■新聞のヘタレ記事
おととい、こんな記事が出た。
もう分かりやすい記者クラブ写経記事。おそらくぺーぺーの若手がヒマネタとして書いてる。
電動自転車の事故、過去最多の5千件超 10年連続で更新、交通環境の整備が急務
電動アシスト自転車が絡んだ令和5年の事故件数は5712件で、警察庁に記録が残る平成16年以降、過去最多だったことが15日、同庁への取材で分かった。26年から10年連続で最多を更新し続けているという。令和6年は10月末までで4951件に達しており、5年を上回る可能性がある。
電動自転車は坂道でも楽に走行できるため、高齢者や若者を中心に利用者が拡大。一方、電動キックボードや「モペット」と呼ばれるペダル付き電動バイクといった新しいモビリティー(乗り物)も続々登場しており、安全な交通環境の整備が急務となっている。
警察庁によると、電動アシスト自転車による事故件数は平成26年に1319件だったが、令和2年は2642件に倍増。自転車全体の事故が減少傾向にある中、増え続けているという。
5年の事故件数(5712件)を都道府県別で見ると、大阪が最多の1813件で、元年(326件)の約5・6倍に上った。次いで東京が847件、神奈川822件、千葉526件、兵庫438件。一方、福井、鳥取、佐賀は各0件だった。(2024/12/15 産経新聞)
https://www.sankei.com/article/20241215-FZO7YPXI2NL3VL35MQ7QQLHNP4/
もう統計の杜撰さ(福井、鳥取、佐賀は各0件つって普及率もほぼ0なんだから)や、モペッ「ト」などを始めとして、ツッコミどころはたくさんあるんだが、一番なのは「電動自転車ってなに?」という、初歩中の初歩、前提部分だ。
■何もかもを絶賛混同中
この記事、一読すれば分かるけど「電動自転車」「電動アシスト自転車」「電動キック」「違法モペッド」ほか、何もかもをわざとのように混同してる。
これ、別に産経新聞に限った話じゃない。
各紙みな同じで、メディアもメディア。しかし警察も警察で、ハイスピードの「自称・電動アシスト自転車」がじつは違法の電動原付(モペッド)ばかりで、そこを取り締まらなくてはならないと気づいたのは、この数ヶ月がいいところなわけだよ。
それまでは「測定機械がないので電動アシストだと言われれば電動アシストと認定せざるを得なかった」みたいなヌルいことを言ってた。しかし、こういうニュースが繰り返し流れると、真っ当な電アシまで「そうか、電動アシスト自転車は危ないんだ」と思われるのがもういいツラの皮で、もうそろそろしっかりやらんかい、と思う。
■「電動アシスト」へのとばっちり
もうこんなコトばっか言わないといけないのが私としてはイラつくんだけど、「電動自転車とやら」が危ないのではなく、「違法の電動モペッドを野放図に乗り廻しているアホウなヤカラ」が危ないわけですよ。
いいですか、電動アシスト自転車のデビューは1993年なんですよ。
そこからずっと「高齢者にも安心安全、漕ぎだしのふらつきがなくなり低速域でスムーズ、なおかつ子育ての必需品」でやってきた。それがなぜ30年経った今問題になるのか、と。
まったく別モノの違法ハイパワー電ジャラスモペッドが中国から飛び込んできたからでしょうが。
情けないのは、こういう「混同記者」連中に聞くと、前提中の前提、電アシのアシスト率グラフすら分かってないのがいることだ。
電動アシスト自転車というのは、10km/hまでは人力の2倍のアシスト力が効くが、それ以降、アシストは漸減していって、24km/hでゼロになる、というのが、日本のレギュレーションでありましてね。車重の重さもあって、だいたい12km/hから16km/h程度しかスピードが出ないような仕様になっている。
だから「電動自転車が爆走して危ない」ってのは、正規の電アシにはまったく当たらないわけですよ。
ホントにもう、メディアも勉強した上で記事を書いて欲しいし、警察も分かった上で発表文を書いて欲しいもんだよね。それより何よりこういうバカげた現状をはやいとこ正さないと、事故は減らんぜ。
【ヒキタ解釈のオススメ本(あるいはオススメサイト) *たまに非オススメあり】
『メディアはなぜ左傾化するのか 産経記者受難記』 三枝玄太郎著 新潮選書
もうなんつーか「分かる、分かるよ」のオンパレードで、私として書きたい感想はいろいろあるのであります。
現場のリアルも「うわー、その通り」だし、「左傾化」の本質にも頷くこと多々あるんだけど、今回は一言だけ。
そうかー、良い記者は、そうやって、みんな辞めてくんだな。
著者の三枝さんが辞めたのが2019年か。残るのは写経記者ばかり。
産経も、毎日も、朝日も、読売も…。
【ヒキタ関連Kindle本】
「津波から自転車で逃げられるか」疋田智著・NPO自転車活用推進研究会編集
https://www.amazon.co.jp/dp/B07JCXPGGL
「平成バブル物語 ~60年代生まれのための東京バブストーリー~」(田崎仁志著)
https://www.amazon.co.jp/dp/B07GWRJPZH/
【好評既刊本】
「新・自転車“道交法”BOOK」自転車活用推進法が分かる! 木世(えい)出版社
https://www.amazon.co.jp/dp/4777946207
「電動アシスト自転車を使いつくす本」東京書籍
https://www.amazon.co.jp/dp/4487809878
「自転車“道交法”BOOK」小林成基(NPO自活研)と共著 こやまけいこ:イラスト 木世(えい)出版社
「だって、自転車しかないじゃない」朝日文庫
「おやこで自転車 はじめてブック」疋田智監修 ぼちぼち自転車くらぶ著 子どもの未来社
「明るい自転車質問室」(ドロンジョーヌ恩田と共著)東京書籍
「自転車 困った時の即効お助けマニュアル」成美堂出版
「自転車ツーキニストの作法」SoftBank新書
「ものぐさ自転車の悦楽」マガジンハウス
「自転車会議!」(片山右京・勝間和代・今中大介・谷垣禎一と共著)PHP研究所
「自転車の安全鉄則」朝日新書
「今すぐ使えるクロスバイク図解マニュアル」大泉書店
「ロードバイクで歴史旅」木世(えい)出版社
「自転車をめぐる冒険」「同・誘惑」(ドロンジョーヌ恩田と共著)東京書籍
「それでも自転車に乗り続ける7つの理由」朝日新聞出版
「自転車生活の愉しみ」朝日新聞出版
「天下を獲り損ねた男たち(続・日本史の旅は自転車に限る!)」木世(えい)出版社
「自転車とろろん銭湯記」ハヤカワ文庫
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