単刀直入に言おう。私は虚構新聞が嫌いだ。なぜ嫌いか? 以前「虚構新聞の有料メルマガ」を購読していたが、あまりにもつまらないので、どうレビューしてイイかわからず、その結果「有料メルマガレビュー」が書けなくなった為だ(笑)。
いまはもしかしたら凄く面白くなっているかもしれないが、私が購読していたころの虚構新聞の有料メルマガは「真面目な人が一生懸命書いた面白くないギャグ」の連発であった。そして、Webの虚構新聞も本質も「真面目な人が一生懸命書いた面白くない風刺」サイトだと考えると、合点がいった。
その虚構新聞が、日本ユニセフに関する嘘情報を書いて、当該のエントリーを削除。その後グダグダな言い訳をするという大変ヘッポコな対応をしている。
●虚構新聞は風刺サイトかデマサイトか?
今回の事件をまとめると
(1)「日本ユニセフ、寄付金の流れ透明化へこ」というエントリーを掲載(リンク先はキャッシュ)
(2)ユニセフからクレームがきて削除
(3)各ニュースサイトが今回の削除事件を取り上げる
(4)虚構新聞の中の人が今回の事件についてコメントをだす
さて、虚構新聞はよく「風刺サイト」「パロディサイト」と紹介される。が、個人的には虚構新聞は「デマエントリー」が多いイメージがある。「風刺」「揶揄」「デマ」の意味を、辞書で見てみると(デジタル大辞泉より)
風刺
社会や人物の欠点・罪悪を遠回しに批判すること。また、その批判を嘲笑的に表現すること。
揶揄
からかうこと。なぶること。嘲弄(ちょうろう)
デマ
1 政治的な目的で、意図的に流す扇動的かつ虚偽の情報。
2 事実に反するうわさ。流言飛語。
パロディとしてはユーモアがなく、風刺としてはキレがない虚構新聞。しかし一番ダメなところは「まるでその事実が起こったように書く」点だろう。よく「虚構新聞なのに、信じてしまった馬鹿乙」と虚構新聞を擁護する人もいるが、これは「虚構新聞」というラベルがないと「出来の悪い嘘記事」にしか読めない証拠だ。
もっと細かく突っ込むとすれば、虚構新聞は「嘘と真実を織り交ぜて書く」というのを無意識にしている。これはデマ系・誹謗中傷系のエントリーがよく使う手法。なぜそんなことをするか? それは虚構新聞の中の人に風刺・パロディを書く才能がないからだ。
今回の問題となったエントリーも「社会や人物の欠点・罪悪を遠回しに批判」よりも、「(政治目的はないが)意図的に流す扇動的かつ虚偽の情報」の比率が大きい。
●虚構新聞の気骨のなさ&言い訳ばかりでガッカリ
今回のユニセフネタも出来が悪いし、風刺と言うよりデマなのだが、信念を持って発信しているのであれば、それは素晴らしい姿勢だし、発言する権利は誰にでもある。しかし、今回の騒動で虚構新聞の中の人はクレームが来たら削除し、その後「自分は悪くない」という釈明をしていて大変かっこ悪い。
やることはやって、彼女が妊娠したら認知もせずに逃げ回っている男のような状態になっている。
まず削除した際の対応がいやらしい。当該のエントリーを削除した際に
この記事は日本ユニセフ協会からの厳重な抗議により削除されました。
と書いているが、実際にどんなクレーム内容の情報かというと
そのまま転載してよいものか分からないので、重要な部分だけ抜き出すと、『当協会ならびにユニセフや各国のユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)、また、協力者の方々に対する信頼を失墜させかねない内容となっています』という内容だった。具体的に記事のどの部分が信頼を失墜させかねない内容だったのかについて、個別の指摘はなかった。また誤った憶測を広げないために付け加えておくと、本文に訴訟をちらつかせるような文言は含まれていない
協会側からのメッセージを大雑把にまとめると「協会の信頼を失墜させかねない内容なので削除を求める」というものでした。
具体的に書かれていないけど、これって「厳重な抗議」なのだろうか? 擁護派の人は「ユニセフが圧力をかけて怖い」と騒いでいるが、「事実と違うことが書かれているので削除して欲しい」とメールを出しただけで「厳重な抗議により削除された」と大げさに書く虚構新聞の方がよっぽど怖い。そもそもユニセフからきたメールも本物かどうか、確認したのかも怪しい。
言い訳のページで特にヒドイのは
記事のどの部分が信頼失墜につながるかについて協会側に問い合わせることもできたが、本紙のような些末な存在にこれ以上お手を煩わせるのは、協会とその活動費を提供している募金者に申し訳ないと思ったので、指示通り即時削除をおこなった
と書いているのに、後半では
それでは具体的に記事のどの部分が信頼失墜につながる内容だったのでしょうか。昭和記念公園に「見えないトイレ」を設置するのは事実、協会に対してネット上で批判の声が挙がっているのも事実、アグネス・チャンさんが五色霊芝を販売していたのも事実、西村氏が公開質問状を掲載したのも事実、これらを踏まえて現在ネット上で寄付の在り方について議論が起こっているのも事実です。これらの指摘を「風刺でも何でもなく単なる悪口」を解釈する人もいるかもしれませんが、「アグネスは中国共産党のスパイだ」といった何の根拠もない誹謗中傷ならともかく、悪口であろうが上記が全て事実である以上、全面削除を求めるのは言論に対してあまりに暴力的ではないかと思います。
だったら、ユニセフにメールしろ! 自分から連絡を絶ち、一方的に「暴力的だ」と書く方がよっぽど暴力的。
今回当該記事の削除に応じたのは、「削除に応じることなく徹底的に争う」から「頭を丸めて全面的に土下座謝罪」までを含め、さまざまな選択肢が考えられる中で、「抗議と削除のメールが来た」という事実を公にすることが、この問題を考えるうえで最も効果的であると判断したためです。嘘・フィクションであることを明示し、なおかつ本文を最後まで読めば内容が支離滅裂であることが明白であるにも関わらず、個々の記述に含まれた事実も含め「記事全体として誤解を招く」という理由で、協会が全文削除要請という対応を取るのだということを明らかにしたほうが一層議論が深まるのではないかと思ったからです。
「面倒だから削除して逃走した」と書いた方が正しいと思われます。発言の責任をとるつもりも争う気概もなかったということでしょ?
●悪いのは誰だ?
とある中学校のお話。ユニセ夫君はお金持ちだけど、成金趣味のお宅に住んで、お母さんはちょっとツッコミどころがある人。クラスではユニセ夫君を嫌っている子も少なくありません。
そこで、同じクラスの虚構君は学級新聞で「ユニセ夫君一家は「寄付金をピンハネしている」「活動がうさんくさい」という批判があるので、家をガラス張りにして透明化にした。しかし建物が透明になりすぎて、ユニセ夫は自宅のトイレでおしっこができず。そのため、夜中におねしょを連発。ユニセ夫君のお母さんにインタビューしようと思ったけど、お金を要求されそうだったので、コメントを捏造して以下のように書きました……」と書いて発行。クラスでユニセ夫君を嫌っている生徒は大喜び。虚構君もクラスで注目を集めて大満足です。
しかし悪意がある書き方で嘘も混じっており、そのことを注意した生徒がいても「(相手が女子の場合)お前、ユニセ夫が好きなのか? お似合いだよwwwww」と発言される始末で、学級新聞派の生徒と対話の余地がありません。
その後、この学級新聞がユニセ夫君のお父さんに目に入り、学校にクレームをつけ学級新聞の削除を求めます。そのことを聞いたが虚構君は再び学級新聞を発行。「ユニセ夫一家から恐ろしい抗議がきたので削除した。あまりに暴力的な要求でビックリ! あんなの読めば嘘だとすぐわかるのに、そんなのもわからないの?? しかし……俺は反論も連絡もせずに記事を削除する。なぜなら一層議論が深まるからだ!(キリ」
さて、いちばん悪いのは誰でしょう?