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紅茶とお菓子について書いているほっこりブログです

即死するサバイバル・マニュアル 安藤美冬の『冒険に出よう』

安藤美冬氏から「サバイバルキット」が来る前に、ある程度勉強しとかないと生き残ることができない。また彼女からの直筆のメッセージをきっかけに、安藤氏と文通が始まった際に恥をかかないためにも! ということで、昨年11月に発売された彼女の処女著作『冒険に出よう』を購入して読んでみた。

2013年読了1冊目がこれという。帯の写真はもっとカワイク撮影してあげたらいいのにね。
■頼りにならないサバイバル・マニュアル
本書では最初に次のように書かれている。

この本は、厳しいと言われる時代を、自分らしく、自由に生き抜くための、安藤美冬の「サバイバル・マニュアル」です。

サバイバル・マニュアル! もしかしてこの本を読めばサバイバルキットを注文しなくてもよかったのでは? と不安になってくる(笑)。
引用した文章がこの本のコンセプトだ。前半は著者の生い立ちがかかれ、後半ではブログ・TwitterFacebookを駆使したノマドスタイルやスキルアップ術などハック系の記事となっている。
「毎日毎日会社に行って、きつい仕事をしているが給料も安くやりがいもない。だけど不景気だし貧乏だし仕事をやめるわけにはいかない……」
と、悶々と過ごしている人間にとっては、これは希望の書だろう。安藤氏のようなワークスタイルをとれば、自分らしい人生を送ることができるかもしれない! と夢を与えてくれる。
しかし、このサバイバル・マニュアルをもって飛び出したら、すぐに死んでしまう。この本にはいろいろなテクニックが書かれているが、実運用上に必要な情報が抜けているからだ。
例えば、集英社を辞めてフリーになるまで、安藤氏は「3000人にあって人脈を増やす!」と目標をたて、高いコストを払って達成した。また仕事を辞めてから半年間は収入がなかった、など述べている。
しかし読者にとって知りたい
・フリーになる際に貯金はどれぐらいあったの?
・国民保険や各種税金はどれぐらい必要か? 無職だと安くなるの?
・失業保険は使ったの?
といった情報が全く書かれてない。
30歳で平均年収1000万円を越える会社に、7年も勤めていたから貯蓄もそこらへんのOLよりあったはず。
また出版社勤務という立場なので、そこら辺の人より人脈を増やすことができる。
そう、安藤美冬氏はフリーになった時点で、他の人と比べ物にならないほど、かなりアドバンテージを持っていた。それは別にいいのだが、その有利な部分をはっきりと述べず、「みんな! 自分らしく生きよう。やり方は教えるから」と述べるのはフェアじゃない。
情報不足は全体に見られる傾向で、この本の肝の1つである「ソーシャルメディアを使ったセルフブランディング術」も、「こんなことをもできるよ」というレベルで、具体的な方法が全く書かれていない。

■超真面目人間「安藤美冬」
この本を読んでわかったのは安藤美冬氏は「超真面目人間」ということ。
特にこのエピソードを読んでビックリした。
「ありがとうを5万回言ったら人生が変わる」というメッセージを本で知った安藤氏。ホテルに籠って実際に「ありがとうを5万回言ってみる」にチャレンジしている。友人がホテルに遊びに来たため4万回で断念をしたようだ。
彼女はこの経験で「独立に向けて焦る自分の気持ちをリセットして、これからの自分をじっくり考えることができた」と述べている。
個人的にはこんなことができる人間に「あなたも一緒に自分の道を見つけましょう。やり方を教えますから」と言われても、信用できない。なぜなら私は5万回もありがとうを言えない&チャレンジしない人間だからだ。この文章を読んでいる多くの人もそうだろう。
彼女の「真面目」は長所でもあり短所だ。あの高城剛も以下のように言われている(これは高城剛氏の発言を安藤氏がツイートしている)。

そして「真面目」な部分は2つの影を生み出している。
1つは「面白みのない人間」だということ。『冒険に出よう』を読んでいて感じたのが、彼女に魅力を感じなかった。『人間仮免中』(極端すぎる?)を読むと卯月妙子って人はどんな人なんだろう? 会ってみたいな~ と思うのだが、安藤氏に対してはそんな感情は生まれてこなかった。
2つ目は「怪しい人間を疑わない」点。熱心な宗教信者や活発な政治活動はみんな「真面目」な人ばかり。相手を疑うことを知らない真面目な人は、盲目的な活動に陥りやすい。この本でも「え、この人から教えてもらうの?」という人物が数人でてきた。
彼女がアムウェイ問題に巻き込まれたのも、「真面目で疑わない性格」が原因だと考えれば、納得だ。

■「何」がやりたいの?
『冒険に出よう』の「はじめ」部分で、「『戦略』と『情熱』を持ってこの社会を生き抜きたい」と書かれているが、彼女が目指すゴールが一体何かよくわからない。
安藤氏とよく比較される勝間和代氏はその点が凄くハッキリしていた。NPOの運営、子育て、バイク、女性の社会進出…… といった明確な目標があり、意見もはっきりあった。
この本では「戦略」ではなく「戦術」しか載っていない。安藤氏は何がやりたいのかわからない。単にノマドワークスタイルを伝えたいだけなのか?
勝間和代氏は高校在学中から公認会計士試験の勉強を始め、公認会計士の2次試験には19歳で合格。大学在学中に出産し、2回の離婚を経験して3女の母。「原発の代わりに新しいエネルギー元になるのでは?」と思えるほどのパワフルな人間だ。そんなスーパーウ―マンだからこそ、バリキャリ指向の女性から憧れを持って支持をされた。
しかし、もっと手軽に人生を変えたい… と考えている女性にとって勝間氏は馬力が大きすぎる。そこで登場したのが、ノマドワークスタイルを提唱する安藤美冬氏だ。
勝間和代が「神話」だとすれば、安藤美冬は「ファンタジー」。夢や希望を与えてくれるかもしれないが、実現には手助けしてくれない。



おまけ1
安藤美冬さんの定期便が売れている―メディアと物販の可能性(ikedahayato.com)
あの定期便の購読者の3割以上は「ウォッチャーが買っている」という話もあるのだが(笑)。上のツイートをイケハヤさんがRTしているが……。
おまけ2
結構納得のレビューが多いけどな~ ★1つのレビューだけど。あ、★5レビューをイケハヤさんはdisってるのかな? いやアンチの巣窟って言ってるし。
このレビューは、書いた人の気持ちがわかるね(他の本をまだ読んでないけど)。

中身の無い駄本ばかり出版することで有名なディスカバ21が、最近
「U25サバイバル・マニュアル(25歳以下が生き残るマニュアル)」シリーズを出している。
 しかし、本書を含むシリーズ全てが「25歳以下が生き残るマニュアル」に全然なってない。
いや、むしろ普通の若者たちを「惑わせてしまう=無理な夢を抱かせてしまう」危ない駄本だ。
 なぜなら、このシリーズ4冊の著者たちは皆、非常に「人脈に恵まれた、特殊な存在」で、普通の若者が「模範=マニュアルに出来る存在ではない」からだ。
 著者たちは独立前に、超一流マスコミに在籍して、マスコミに豊かな人脈を築いている。
安藤美冬は「集英社」、伊藤春香は「電通」、須田将啓は「博報堂」である。
 コネ(親の人脈)が無いと、入社できない超人気企業ばかり。 ちなみに大学は3人とも
慶応だ。 要するに、普通の人とは、人脈の質が違いすぎることに注目すべき!
(後略)

私の場合、この本を最初から「悪意をもってレビューを書いてやろう」とは思いませんでした。だからイケハヤさん誤解しないでね。極めてフラットな視点で読みましたよ。
褒めている側のリンクも貼っときますね
冒険に出よう by 安藤美冬 ― 2013年を爆走したいあなたに勇気と元気をくれる一冊!(No Second Life