はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

地元の川の謎

僕が毎日のように無意識的に渡っている「花見川」は、実は結構ユニークな川。そのことは以前からうっすら知っていたのだが、先日あらためて河畔を散策し、あらためて調べた情報とともに、自分の中に染みこませてみた。すると、地域の成り立ちが多角的に見えてきた。

千葉市から上流を遡っていくと、八千代市に入ったあたりで「大和田機場」というダムのような施設に行き当たる。その向こう側は「新川」と名前を変えて、やがて西印旛沼に至る。この川は西印旛沼が水源なのかと思いきや、花見川よりも新川の方が水位が低い。この水はどちらに流れているのかというと、もちろん花見川は東京湾に注いでいるのだが、新川は西印旛沼と同じ水位であり、実質的には西印旛沼の一部となっている。もちろん西印旛沼は利根川に注いでいるし、もちろん利根川は太平洋に注いでいる。つまり、大和田機場が東京湾と太平洋の分水界になっているわけだ。

事実を書き連ねるだけでややこしくなってしまったが、花見川と新川は、印旛沼が増水して利根川に流せなくなった非常時に、その水を大和田機場でポンプアップして東京湾に排水するための「印旛放水路」なのだ。これが完成したのは、1968(昭和43)年のこと。それまでは、頻発する印旛沼の洪水被害を防ぐための事業を何度もトライしては失敗することを繰り返していたようだ。笑えないことに、かつて東京湾に注いでいた利根川を鬼怒川に接続して太平洋に流す「利根川東遷事業」が、洪水多発のそもそもの主要因だったようで。東京が抱える問題を千葉が身を削って引き受けるという構図が、ここでも成立していたわけだな。根深いね。

なにはともあれ、多くの土地に人為が施され、ようやく人が生活できる環境が成立しているという事実は、ある程度理解しておきたいね。その環境を維持する財源は、税金であることも。そう言えば、千葉市犢橋町あたりから北の花見川には、やけに渓谷っぽい異世界感があるが、それは人工的に開削したからなんだろうな。