今年の4月から東京都で、特別支援学校をのぞくすべての都立高校が、「ツーブロックの禁止」や「下着の色指定」など5項目の校則を廃止する。全国各地の学校で地殻変動が起きているかのように、校則改革が進んでいる。しかし、「一見すると大きな変動に見えるけれども、じつは変動後の校則の姿はほとんど変わっていない」と指摘するのが、教育問題に詳しい名古屋大大学院の内田良教授だ。今回の「校則改革」がはらむ問題とは。
※以下、内田教授による寄稿。
胸を張れる改革なのか
全国各地の中学校・高校を中心に、学校の校則を見直す取り組みがひろがっている。
昨年6月には文部科学省が、各地の教育委員会などに宛てて「校則の見直し等に関する取組事例について」と題する事務連絡文書を発出した。文書には「校則の内容は、児童生徒の実情、保護者の考え方、地域の状況、社会の常識、時代の進展などを踏まえたものになっているか、絶えず積極的に見直さなければなりません」と、今日の世論への対応が促されている。東京都立高校の取り組みも、その流れをくんだ改革と言える。
ただ、この学校単位での校則見直し実践について、私がいまもっとも危惧していることをここに記しておきたい。それは、校則改革は全国を巻き込む大きな動きのように見えて、その変化の度合いはじつに小さいということだ。
今回の東京都の校則改革では、【1】ツーブロックの禁止、【2】下着の色の指定、【3】一律の頭髪黒染め指導、【4】自宅謹慎、【5】「高校生らしく」という曖昧な文言、【6】地毛証明書の提出の6つのルールが見直しの対象とされ、うち【1】~【5】が全面的に廃止になったという。
下着の色を検査するようなきまりは一刻も早く廃止されるべきであり、都の高校が一斉にその方向に舵を切ったことは、まちがいなく朗報だ。しかしながら、そもそも学校による下着の色の指定やチェックが取りやめになったとして、そのことを拍手喝采していてよいものだろうか。「うちの学校は、下着の色が指定されていません!」ということは、それほど胸を張って主張できることなのだろうか。