「国安法」施行で香港でいま起きていること
香港版国安法(香港国家安全維持法)が6月30日午後11時をもって施行された。
施行日翌日に行われたデモで370人以上が違法集会容疑で逮捕され、うち国安法違反容疑が10人以上。施行までのプロセスも一方的で、捜査令状なしに家宅捜査できるなどガイドラインの根拠も不明確なまま、まさに中国が香港のデモと言論の自由を封じ込めるために作った中共統治のツールとしての法律で、これを西側社会の法律や法治の概念で理解しようとしても到底無理である。
では、このように、法治の概念が崩れ去った香港の経済は今後どうなるのだろう。
香港メディアはもっぱら、香港国安法の導入で香港の債権市場がより安定し、金融センターとしての地位が高まるとポジティブに報道している。つまり、国安法によって反中デモが抑えこまれ、吸引力が増すであろうというわけだ。7月1日に香港ハンセン市場は前日比3%上昇した。
香港英字紙・サウスチャイナモーニングポスト(3日)は中国の中央銀行・人民銀行が香港と本土の債券市場の相互取引「債券通」始動3周年を記念した「越境理財通」プロジェクトの開始について報道した際、このプロジェクトが香港を中国金融のゲートウェイの地位を確固としたものにする、とポジティブに報じた。
このプロジェクトは、香港、マカオ地域の銀行が、粤港澳(広東・香港・マカオ)グレートベイエリアの顧客に対して適格投資商品(理財商品)の提供を許可するというもの。粤港澳グレートベイエリアは中国のテクノロジーセンターでもある深圳、珠江デルタその他八都市と香港、マカオの特別行政区を含む。
こうしたプロジェクトの発動は、中国が国家をあげて香港の国際金融センターの重要機能を支えていくことの表明と受け取られており、香港の債権市場も好感している。