来年の「消費税率引き上げ」は、家計にこんなふうに影響する
やはりデフレの完全克服が先決だ消費税率引き上げと憲法改正
9月20日に実施された自民党の総裁選では、安倍晋三首相(総裁)が三選を果たした。そこで注目されるのが、来年10月に予定されている消費税率の引き上げ(現行の8%から10%へ)と、その先にある憲法改正である。
憲法改正の是非は最終的には国民投票の結果に依存するが、国民投票のいくばくかは安倍政権に対する直接の信任投票的な意味合いもあると思われるので、来年の消費税率引き上げによって国民生活、具体的には家計の消費支出がどうなるかは今後、かなり大きな議論となるだろう。
この家計消費の動向だが、一言でいえば、前回(2014年4月)の消費税率引き上げ(5%から8%へ)以降、低迷を続けている。
確かに日本経済は、輸出の好調に加え、最近は民間設備投資の拡大もあり、全体でみれば確かに回復基調にある(筆者の実感では、全体の経済は1997年のデフレ初期の状況にようやく戻した段階)ものの、その回復ペースは極めて鈍い(2014年4-6月以降の実質GDPの平均成長率は年率で+1.5%)。
もちろん、この日本経済回復の足を引っ張っているのが家計消費である(同じ期間の実質家計最終消費の平均伸び率は年率で+0.7%)。したがって、日本経済回復、ひいてはデフレの完全克服の鍵を握るのは個人消費の回復であることは間違いないと思われる。
だが、このような状況においても、安倍首相の消費税率引き上げの意思は堅いようだ。安倍首相は、自民党総裁選の選挙戦のさなかにも、来年10月には消費税率引き上げを断行する方針であることを繰り返し強調していた。
安倍首相は、来年の消費税率引き上げについて、2014年の消費税率引き上げは経済政策としては失敗であったことを一応は認めた上で、1) 2014年時点と比較して経済状況は格段に回復していること、2) 消費税率引き上げと同時に増税のマイナスインパクトを軽減する財政的措置を講じる予定であること、から、消費税率引き上げの影響は2014年ほど大きくはないとの考えを示している。
また、安倍首相は教育無償化を新たに憲法の条項に追加し、しかも、消費税率引き上げにともなう税の増収分をその財源とする方針である意向とも伝えられている。
もし、それが本当だとすれば、(再先送り論を主張する一部論者もいるものの)憲法改正と今回の消費税率引き上げはリンクしており、在任期間中の憲法改正に強く意欲を示す安倍首相にとって、消費税率引き上げも重要な政策の一つであるということになろう。
家計消費低迷の原因と対策
それでは、来年10月に消費税率引き上げを断行した場合の影響をどのように考えればよいだろうか。今回のコラムでは、この点について、主に前回(2014年4月)の消費税率引き上げ前後の家計調査の年齢階層別データを用いて考えてみたい。
まず、筆者が重要だと思うのは、このところの消費低迷の原因は必ずしも可処分所得の低迷ではないという点である。