そもそもの原因は中国なのに…
米国のトランプ政権が9月24日、中国に対する制裁関税第3弾を発動した。中国も直ちに報復を表明し、米中貿易戦争は一段と激化する見通しだ。日本ではトランプ政権を批判する論調が目立つが、それでいいのか。
トランプ政権の対中制裁は、第1弾が7月6日に半導体などを対象に25%の関税を上乗せした340億ドル分だった。第2弾は8月23日、化学品など160億ドル分に同じく25%を上乗せした。
今回は日用品などに対象を広げて2000億ドル分に10%を上乗せした。当初はこれまで同様、25%の上乗せ方針だったので若干緩和した形だ。だが、中国が知的財産の侵害を改善しなければ、年明けから25%に引き上げる、という。
これで、総額2500億ドルの制裁関税になる。中国が報復するなら、さらに2670億ドル分の制裁を追加する方針なので、総額は5170億ドル規模に上る。米国の中国からの輸入総額は5055億ドル(2017年)だから、すべて実行すれば、中国からの輸入すべてに制裁を課す形だ。
中国は対抗して、これまで2回に分けて総額500億ドルに上る米国からの輸入品に25%の報復関税を課した。今回の2000億ドル分には、液化天然ガスやビールなど600億ドル分に最大10%の報復関税をかける方針だ。
こうした米中貿易戦争を、日本のマスコミはどう報じているか。
たとえば、日本経済新聞は9月19日付社説で「米中は貿易戦争回避の努力が足りない」と両国を批判しつつ「何より重要なのは米国の自制である。中国を追い込むためだけに、恣意的な追加関税を課していると言わざるを得ない」とトランプ政権を非難した(https://www.nikkei.com/article/DGXKZO35506020Z10C18A9EA1000/)。
毎日新聞も同日付の社説で「トランプ氏が自国の国民や企業も道連れにして世界を巻き込む事態を引き起こしかねない」「中国の知的財産権侵害は問題だ。だからといって『米国第一』を振りかざし、国際社会に負の連鎖をもたらす一方的制裁は許されない」などと主張した(https://mainichi.jp/articles/20180919/ddm/005/070/086000c)。
少し古いが、NHKも7月6日の解説で「トランプ大統領には、高い関税で海外からの輸入が減れば、国内の労働者を守ることにもなるとして、秋の議会の中間選挙に有利に働くという思惑もあるようですが、物価が上がり国民の反発がひろがれば、逆効果となりかねません」と米国に自制を求めている(http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/300/301129.html)。
以上のようなマスコミの反応をどう評価するか。まったくピント外れだ。
毎日の社説タイトルは「米国の対中制裁第3弾 トランプ発不況を憂える」だった。左派マスコミは何か困った事態が起きると、すぐ「憂う」。事態を分析する前に、上から目線で嘆いてみせるのだ。それが良識ある態度だと思っている。嘆くだけの言論には、何の意味もない。
そもそも、トランプ大統領が対中制裁に踏み切った理由は何だったのか。それは、7月13日公開コラム(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/56527)で指摘したように、中国が各国の知的財産をあらゆる方法を駆使して盗みまくっているからだ。問題の出発点は、中国の泥棒行為にある。