「この次」に起きること
北朝鮮がまた、大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射した。金正恩・朝鮮労働党委員長は核とミサイル開発を断念するつもりがないことが明白になった。トランプ大統領が手詰まりになっているのだとしたら、次に何が起きるのか。
金正恩氏はミサイル発射を成功と評価し「米国本土全域を攻撃できる。歴史的偉業だ」と自画自賛した。「米国が北朝鮮の利益を侵さない限り、北朝鮮は他国の脅威にならない」という金氏の声明は、どこか余裕をうかがわせるほどだ。
米国が恐れているのは、ICBMに小型軽量化された核弾頭が搭載される事態である。「大気圏への再突入技術が未検証」とか「重い弾頭を積めば飛距離は落ちる」といった見方もあるが、今回の発射実験で北朝鮮の脅威レベルが一段、上がったのは間違いない。
私は先週のコラム(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/53608)で、中国を介した米国の説得工作が失敗し、トランプ大統領はロシアへのアプローチを強める戦略を模索していると指摘した。ただし、プーチンが北朝鮮に同情的である点を理由に挙げて「この話がうまくいくとは限らない」と書いた。
北朝鮮を対話に引き出す「ロシア・チャネル」が難しいのは、米国側にも理由があった。
どういうことか。トランプ政権がプーチン氏を北朝鮮包囲網に引き込むために、米国がロシアに課している経済制裁措置を緩和しようとしても、実は足元の米議会が制裁緩和に同意しそうにないのである。
これは私が先週会った、米政府担当者の話であきらかになった。
米議会は反トランプ政権の気分が強い。民主党については多くの説明を要しないだろう。彼らは本来ならクリントン候補が大統領選で勝つはずだったのに、ロシアとトランプ氏による陰謀で政権を奪われてしまったと思っている。それがロシア疑惑の核心だ。
与党の共和党も伝統的な主流派勢力から見れば、トランプ大統領は傍流どころか、まったくの異端である。大統領選でトランプ氏が勝ってしまったので、仕方なく協力しているが、スキあらば「実権を主流派の手に取り戻したい」と思っている。
先の米政府担当者は「ここ数年、ホワイトハウスの力が強まるばかりで、相対的に議会の力が弱まっていた。議会はなんとか、政治の権力を取り戻したいと思っている。そんな環境の下で、いま焦点になっているのが対ロ経済制裁の扱いなのだ」と私に語った。