コンビニ最大手のセブン-イレブンが新しい事業構造の構築に向けて舵を切り始めた。
コンビニは良くも悪くも現代日本を象徴するビジネスだが、コンビニの頂点を極めたセブンの方向転換は、日本の消費構造が根本的に変わろうとしていることの予兆でもある。
業界驚愕の値下げ
セブンが、このところ立て続けに新しい施策を打ち出している。
3月29日には洗剤など61品目の値下げを発表し、4月6日には米国のコンビニ買収とフランチャイズ加盟店のロイヤリティ減額を明らかにした。
これらのニュースは人によっては聞き流してしまうレベルのものかもしれないが、一部の業界関係者にとっては驚愕の中身といってよい。その理由は、コンビニというビジネス・モデルの核心部分がすべてひっくり返ってしまう可能性があるからだ。
今回、値下げの対象となったのは、洗剤やシャンプー、紙製品など61品目。
たとえば「LUX Sリッチ シャンプー詰替330g」は409円(税込)から388円に、「バスマジックリン本体380ml」は307円から298円になる。全商品を平均すると約5%程度の値下げである。
これまでも同社は値下げを行ってきたが、ほとんどが自社開発したPB(プライベート・ブランド)商品だった。メーカー・ブランドの商品を本格的に値下げするというのは2009年以来、8年ぶりのことになる。
コンビニが値下げに消極的だったのは、コンビニというビジネス・モデルがもともと定価販売を原則としたものだったからである。この仕組みを理解するためにはコンビニという業態が生まれた40年前に遡る必要がある。
これまで日本のコンビニを支えてきたのは、本部主導で大量の商品を安く提供するチェーンストア理論である。だがコンビニという業態自体がチェーンストア理論に対して多少の矛盾をはらんでいるのも事実である。
当時、日本でもいわゆる大型スーパーが普及し始めていたが、商品価格はメーカーが一方的に決めるという硬直的な市場だった。
こうした閉鎖的な環境に風穴を開け、大量調達によって庶民に安い商品を提供するというコンセプトを掲げて登場してきたのが、イオン(旧ジャスコ)やダイエー(現イオン)、セブン(旧イトーヨーカ堂)といった企業だった。
コンビニは政治の歪みから生まれた?
当時、こうした試みは「流通革命」と呼ばれていたが、理想通りの展開はできなかった。日本では大規模小売店舗法(いわゆる大店法)の規制があり、安値販売のカギとなる大型店舗の出店が難しかったからである。
大店法の規制がある中でチェーンストア理論を実現するため、一種の抜け道として編み出されたのがコンビニだった。
コンビニは店舗面積が小さいので大型スーパーと比較すると事業効率が悪い。こうした悪条件をカバーするためには、来客数を確保するとともに、安値販売を行わずに商品を高く売る必要がある。
このためコンビニは当初、定価販売を大原則としていた。今でもコンビニの単位面積あたりの売上高は大型スーパーと比較するとかなり大きい。セブンは約176万円だが、同じグループ内の大型スーパーであるイトーヨーカ堂は約59万円となっている。
確かにコンビニはいつでも開いていて便利であり、今となっては生活に欠かせない基本インフラに成長した。コンビニは日本が生み出した革命的システムとして手放しで賞賛する声もあり、その認識の一部は正しいといってよいだろう。