美人AV女優と呼ばれた女の絶望的な「その後」

リスカ、アル中…かける言葉が見つからない

AV女優の実態を描いた『名前のない女たち』シリーズ。最新刊『貧困AV譲の独白』では、「貧困」に焦点を当て、18人の女たちの壮絶な過去と現在を著している。本書のなかから一部を抜粋して公開する。

突然の電話

「私さ、元AV女優だけど。取材してもらいたいんだけどさ。暇なんだよね」

井上沙耶(仮名)という元AV女優から突然電話があった。2004~2005年に企画AV女優をしていたそうで、年齢は37歳。とにかく暇なので取材して欲しいという。

神奈川県某市に向かった。駅から徒歩15分ほど。言われた住所は古い住宅街で、築40年以上と思われる老朽した木造アパートがあった。一般的な所得があれば、決して住むことはない老朽住宅だ。

2004年といえばAV女優志願者が増え、スタート地点に立つまでの競争が始まっていた時期で、元AV女優ならばそれなりのスペックを持っているはず。引退後も水商売や風俗に流れれば、それなりの稼ぎはあるはずで、老朽住宅に違和感があった。

住所を間違えたかと思い連絡すると、一番手前の部屋の扉がひらき、肥えた中年女性が現れた。彼女が井上沙耶だった。現役時代から30キロ以上太り、とても同一人物には見えない。

「これ、男の家。居候。暑いから中入れば」

 

部屋の中は臭い。吠え続ける子犬がいて、ゴミだらけの部屋は埃や動物の糞尿やタバコの匂い、体臭が入り混じる。床は油っぽく、絨毯は湿っている。空き缶、スナック菓子の破片、クスリ、化粧品などが散乱し、昼間だろうというのにカーテンは閉めっぱなしで、部屋は薄暗い。畳が所々破れめくれていた。

薄型テレビの画面は割れ、ヒビが入っている。テーブルには飲みかけのビール缶が散らばり、灰皿には吸い殻が山盛り。昼間から酒を飲み、亀裂で観づらいテレビを点けていたようだ。ヒルナンデスが流れる。

「働いてないよ、こんなカラダだからね。彼氏に養ってもらっているの。半年くらい前から、まあ無職かな。太ってデリヘルをクビになったんだよね。どこも雇ってくれなくて、暇だからお酒がとまらない。狂ったように飲んじゃって、マジで止まらない」

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AV女優だったのは、29歳。それからデリヘル、ヘルスと非本番系の風俗店を転々とし、半年前、体型を理由に解雇された。太りすぎたことが原因だ。

「彼氏」という家主は、元々男性客。未婚37歳のサラリーマンで、収入は高くない。彼氏のアパートに居候しながら、酒を飲み続け、気が向いたら自転車で行ける距離の出会いカフェで売春する。稼いだお金は、数日分のお酒とタバコ代金で消える。半年以上、そんな生活をしていた。

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