2011.05.17

国民負担にまっしぐら!
支援機構の負担金を電気料金に上乗せ
「電力会社」懐柔を企む財務省・経産省

政府案は「東電の決算対策」
東京電力・福島第1原子力発電所〔PHOTO〕gettyimages

 菅直人政権は5月13日に開いた閣僚懇談会で、東京電力・福島第1原子力発電所事故の損害賠償の支援に関する政府案を了承し、新聞、テレビが破格の扱いで報道した。

 しかし、閣僚懇談会は、内閣法で規定される閣議と性格がまったく異なるもので、何の法的根拠もない閣僚の意見交換の場に過ぎない。今回の政府案は"カラ証文"に終わる可能性もある。

 そんな閣僚懇談会をあえて開いて、政府案を了承するというパフォーマンスを断行した狙いは、ひとつだけ。20日に迫った決算発表の席で、未曾有の賠償負担に耐えかねて東電の経営が破たんしかねない、との意見を監査法人が表明するのを防ぐことだった。

 驚くべきことに、関係者によると、この政府にあるまじき上場民間企業に対する経営破たんリスク隠しの舞台裏では、条約や法令の審査を担当する内閣法制局が「政府案は、全国の電力会社に賠償費用の分担義務を課そうという内容で、憲法違反の疑いが強い。全国の電力会社に提訴されれば、国が敗訴する恐れがある」と支援策の法案化に待ったをかけた事実があるという。

 それでも、菅政権では、政府案を5月中に法案化しようと、財務官僚を中心に、国民負担を「極小化する」という公約を反故にして、電力会社の負担を容易に電力料金に転嫁できる案をちらつかせ、電力会社の懐柔を試みているという。円滑な値上げをエサに、訴訟を起こさないという内諾を取り付けようとしているのだ。

 そんな法案は、仮に閣議決定に漕ぎ着けたとしても、6月22日にまでと残された会期の少ない今国会で成立するとは考えにくい。結果として、急務にもかかわらず、被災者への本格的な生活保証や賠償が今年秋以降にずれ込むのは確実と言えそうだ。

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