ポスト鳩山
見えてきた5月退陣菅か仙谷か、それともあの男か
民主党政権のいのちを守る
しばし、頭の体操にお付き合いいただこう。以下は、現時点でもっとも可能性が高い、5月末段階のシナリオである―。
「私は、このたび国政の混乱を招いた責任を取るべく、総理大臣の職を辞することを決意いたしました」
この日深夜。総理官邸に集まった記者たちの前で、鳩山由紀夫首相は唐突に辞意を表明した。
鳩山首相は以前から、「普天間基地の移設問題に対し、5月末までに結論を出す」と公言していた。その期限を目前にして、まるで政権を"投げ出す"かのような辞意表明。記者たちからは即座に質問が飛んだ。
「基地移設の政府案がまとまらなかったのか」
鳩山首相はやや目を泳がせながら、こう語る。
「私は国民の皆さんに、『いのちを守る』約束をいたしました。しかし今回、沖縄県民のいのちを守る、そのための結論を出すことは、非常に困難という判断に至ったのであります」
記者たちからは「あまりに無責任だ」と、一斉に非難の声が上がった。だが、言うべきことを言ってスッキリしたのか、鳩山首相は、ほっとした表情すら浮かべている。事前に首相の「決意」をまったく知らされなかった閣僚の一人は、緊急会見の中継に呆然と見入りながら、こう呟いた。
「結局こんな辞め方をするような人だから、宇宙人と呼ばれていたんだよね」
同時刻、東京・赤坂の高級マンションの一室で、小沢一郎幹事長が、憮然とした表情でやはり辞任会見の映像を見つめていた。その数時間前、小沢氏は鳩山首相から「辞めます」との連絡を受け、急きょ参院選対策の地方行脚を切り上げ、帰京したばかりだった。
「いま辞めるのは最悪だ。米国との交渉を継続する、と説明すれば、参院選までの時間は稼げる」
しかし、いままでは何でも、「なるほど」「おっしゃる通り」と、自分の言う事を聞いてきたはずの男が、今回は聞く耳を持たない。
「私は、民主党政権の"いのち"を守りたいのです。基地問題の全責任を私が負って辞めれば、国民も納得し、民主党は守られる。妻(幸夫人)も『それがいい』と賛成してくれています」