財務省完敗で消費税10%は遠のいた!
安倍官邸との「軽減税率」バトル、その舞台裏で何があったのか
攻防の構図
軽減税率がやっと落ち着いた。軽減税率の対象は「外食を除く生鮮・加工食品」で合意した。
筆者にとって、この騒動は来年夏の参院選(場合によっては衆参ダブル選挙)前、消費増税を延期するかどうかの前哨戦に見えた。言うまでもないが、公明党+官邸vs.自民党税調+財務省である。
自民党税調と財務省がタッグを組むのはいつものことだ。税制では、政府税調はなにもパワーがなく、自民党税調で税制改正は決まる。この点、他の政策ではあまりないが、政府ではなく党主導である。
ただし、財務省は、事実上党税調の事務方をやって、影響力をもっている。党税調メンバーをみれば、現会長の宮沢洋一氏、前会長の野田毅氏は財務省OBでもあり財務省官僚と気心も知れている。
公明党と官邸のタッグは、来年の参院選を見据えたことと説明されている。そうした思惑は否定しないが、それはこれまでも同じだ。実のところ、官邸は、公明党の意向を利用して、財務省の値踏みを行ったみたいだ。
財務省の大失態
軽減税率では、財務省はスタートから信じられないミスをしていた。9月上旬、海外から麻生財務相に、軽減税率の代わりに給付金で対応すると言わせたのだ。大臣が発言するからには、最終決着点でなければならない。
まだ予算編成が始まったばかりの時期に大臣発言とは驚いたが、やはり詰めが甘く、給付案は完全に頓挫してしまった。そもそも、制度が出来上がっておらず、うまくスタートできるかどうかわからないマイナンバーを前提とするのは、誰にでもわかる初歩的ミスである。
しかも、大臣に恥をかかせたわけで、財務省官僚の失態である。普通であれば、どこかの記者にリークして観測気球を上げるべきであったが、それすらもやらなかった醜態だった。
それでも、軽減税率はできないと財務省は見ていた。なぜなら、軽減税率の導入には、商品ごとに税率や税額を明記した請求書(インボイス)が必要になるが、これに経済界は事務が煩瑣になるとして反対すると読んでいたのだ。