2015.09.20

中国・人民元が国際通貨になれないワケ

軍事的・経済的にどれだけ「大国」になっても……
〔PHOTO〕gettyimages

 国際通貨になるための条件

中国が人民元の国際通貨化を意気込んでいる。が、なにかと問題を抱える国である。人民元は国際通貨たり得るのか、そもそも国際通貨になるとはなにを意味するのか。

国際為替市場では、中心に取り扱われる通貨のことをキーカレンシー(基軸通貨)と呼ぶ。どの通貨が基軸通貨になるかは、その国の置かれている環境に依拠する。多くの人が取引に使うのであるから、その国が「大国」でなければいけない。

「大国」とは、軍事的にも経済的にも、である。軍事的大国とは、戦争があっても国がなくならないという意味だ。実際、世界で戦争があるかもしれないと思っただけで、人々はドルなら安全だとして、取引をする。

一方で、経済的大国とは、経済活動が盛んということで、まずはGDPの大きさで測れる。GDPが大きければ、貿易取引も大きくなり、基軸通貨を決済手段として使うことができる。

また、GDPが大きいと、実物経済を支える為替市場、金融資本市場も大規模になっているはずである。そうした金融資本市場が存在することはまた、基軸通貨の条件。そうした金融資本市場があるからこそ、安心して基軸通貨を保有しようとするわけだ。

なお、経済的な大国になるには、自由な貿易取引と自由な資本移動が必要だ。自由な取引が確保されないと、基軸通貨を持つインセンティブはなくなるからだ。

こうした軍事的・経済的な大国の通貨であれば、当然その価値は安定しているので、ますます基軸通貨としての地位は不動のものになる。

 

中国はすでに「大国」だが……

さて、中国は軍事的にはもうすでに大国である。かつてのソ連に代わって、アメリカに次ぐ2番目の軍事大国であろう。

では経済的な大国かどうか。まずGDPはアメリカの次で、これも2番目である。それに伴って輸出と輸入を合わせた貿易量は世界一である。また、中国の株式市場は、上海、深圳を合わせれば、アメリカに次いで世界2位である。

こうした「量的」な項目を見る限り、中国はすでに大国の要件を満たしているが、経済的な大国にはどのように逆立ちしてもなれそうにない点もある。それは「質的」な面、要は自由な取引の確保である。特に、金融面では取引の自由度はまったく確保されていない。

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