「貧困の連鎖」を解消し、復興後にやってくる明日のための教育をつくる---大橋雄介(NPO法人アスイク代表・宮城県仙台市)
仙台で挫折、東京で修行、リベンジで再び仙台へ
東日本大震災は、直接的な被害以外にも、さまざまな問題を浮かび上がらせた。その一つが、経済的な困窮を起因とする子どもたちの問題だ。
今回取り上げるのは、「日本の相対的貧困の問題を、企業、行政、市民のチカラを結集して解決し、東日本大震災後の新しい社会像を築く」というミッションを掲げ、貧困の連鎖の解消に取り組む、NPO法人アスイク代表・大橋雄介氏のストーリー。「復興後にやってくる明日のために教育を」というフレーズが団体名の由来だ。現在、宮城県仙台市を拠点として活動している。
大橋氏は、大学卒業後、ネットベンチャー(東京)、地域活性のコンサルティング会社(仙台)、株式会社リクルートマネジメントソリューションズ(東京)を経て、独立。「仙台では、行政の下請けばかりで報告書を作って終わり。誰のための事業なのか分からなくなり、挫折した。そのリベンジの意味もあり、東京で力をつけて、再び仙台に戻った。地域社会の役に立つ仕事がしたい、自分でなにかやりたいという気持ちは強かった」。
また、仙台に戻るタイミングで、仕事がないまま結婚。「社会のなかで自分の居場所や役割がないと、精神的にハードになる状況を身をもって経験した」と語る。その後、市民活動の草分け的な存在である加藤哲夫氏と出会ったことをきっかけに、NPO法人せんだい・みやぎNPOセンターにて社会起業家の創業・活動支援などに従事することになった。
それから1年後、東日本大震災が発生。発生時は、NPOセンターの研修で仙台にいた。「この緊急事態になにもできなかったら、いつまでたってもなにもできない、という危機感が強くあった」。人のサポートをするために独立したわけではなかったため、しばらく悶々としていたというが、避難所への訪問、実家のある福島への往来、なんでも活動した。