特定の分野でトップに立つ。これがビジネスの鉄則。ラーメン業界も同じ。各店が豚骨、塩など、差別化してきたから、大企業は勝てない。

大和製作所 藤井薫

小型製麺機の分野で約40%のシェアを持ち、飲食店開業希望者に麺作りやスープの仕込みまで教える企業がある。香川県の大和製作所だ。うどん店向け製麺機の製造から始め、顧客の問題解決に取り組むうちに業務範囲を次々拡大、最近は、成功する人間の考え方を伝える「経営講義」も行う。多くのラーメン店店主から「先生」と呼ばれる藤井薫氏(65歳)は、武道の師範のような雰囲気の人物だった。


特定の分野でトップに立つ。これがビジネスの鉄則。ラーメン業界も同じ。各店が豚骨、塩など、差別化してきたから、大企業は勝てない。ふじい・かおる/'48年、香川県生まれ。'68年に高松工業高等専門学校(現・香川高等専門学校)機械工学科を卒業し、川崎重工へ入社。'75年にのちの大和製作所を創業。以来現職。現在は、香川県の坂出駅構内に、楽天市場で10回連続グルメ大賞を受賞した「亀城庵」も経営。著書に『トップになりたきゃ、競争するな』など※大和製作所のWebサイトはこちら

守破離

お店づくりで成功する要因はさまざまありますが、共通しているのは「素直」なこと。日本の武道、茶道には、学ぶ時の態度を表した「守・破・離」という言葉があります。最初に寸分の狂いもなく言いつけを守る。その後、自分なりの工夫が生まれ、最後に、師匠とは別の道へと離れていく。これができる人は強い。

師匠

私が店主向けに行っている講座では、まず、マインドリセットを行います。今までの自分の考え方を肯定したい方などは怒って帰ってしまいますが、本当に情熱的な方は真剣に聞き入り、その後、お店を繁盛店にしてくれます。それでいい。船井総研の船井幸雄氏は、同じ情報を伝えても上手くいく顧客と、そうでない顧客がいることに悩み、結局、学ぶ気のない方は顧客にしない、という方針を定められています。私も同様です。

常識を覆す

私が店主たちに教える料理手法は「デジタル・クッキング」です。いままで職人によるカンの要素が多かった「料理」に科学のメスを入れました。たとえば和風ダシ。長く「昆布は沸騰する寸前に取り出す」とされてきましたが、とんでもない。昆布は前の日から水に入れ、60℃で取り出す。「ダシをとる」とは、素材の旨みだけを水に移す作業なのです。こういった本質を理解すれば、逆に今まで、高温にすることで雑味まで移していたことに気づける。

平均点の愚

私は子供の頃から、デキが悪く、鼻つまみ者でした。しかし小5のときに模型飛行機が好きになってモノづくりの楽しさに目覚め、自ら学び始めたのです。平均点主義は日本の発展を阻んでいますね。たとえば、数学でとんでもない業績を残せる人間も、国語や社会が0点であれば評価されないからです。

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