私の示す「NO」に、もはや意味はあるのだろうか?
最近、そんなことを考えてしまう性暴力事件や報道が相次いでいるが、それにしても、12月に入ってから心えぐられる報道があまりに多い。

実父が娘に対する性行為は認めながらも「娘は抵抗できない状態ではなかった」と無罪を主張した。大阪では、初公判では罪を認め謝罪した司法に携わる人間が一転して無罪主張をした。被害者が「嫌だ」「やめて」「痛い」という動画が残っているにもかかわらず、国立医学部の学生が起こした事件の第二審で裁判官は逆転無罪判決を下した。
沖縄では16歳の少女が米兵から性暴力を受けた。

他にも、圧倒的に社会的立場の強い人間が被害者の口封じを試みた事実が明らかになりつつある……。

さらに、2023年度、児童や生徒などへの性犯罪や性暴力で懲戒処分を受けた公立学校の教員も320人と過去最多となった。換算すれば、ほぼ毎日1人が処分を受けていることになるが、これは処分を受けた人数のみで、氷山の一角である可能性も高く、非常に恐ろしい現実が明らかになったのだ。

2024年も性暴力に関する事件、報道が非常に多かった。photo/iStock
 

連日続く、性暴力事件への絶望感

性暴力の被告や加害者が「同意があると思っていた」と主張する事例はあまりに多い。2023年7月に強制性交等罪と準強制性交等罪が一本化し新たな改正刑法として生まれた『不同意性交罪』。「同意しない意思を形成し、表明しもしくは全うすることが困難な状態」で性交等を行うことを示していて、今までの法律よりも性被害者に対して救われる法律であると期待をしていた。

現在物議を醸している、滋賀医科大学の男子学生が性的暴行をした罪に問われている事件の発生は2022年で不同意性交罪の法改正前だったので、法改正前の法律で裁かれることは確かだ。加害者3人のうち、1人は懲役5年6カ月の実刑判決が下った。残る2人は、懲役5年と懲役2年6カ月の実刑判決が言い渡されたが、その後控訴した。今回、大阪高裁の飯島健太郎裁判長は、「同意の上で性交等に及んだ疑いを払拭できない」とし、逆転無罪となった。

この件で不安に思うのは、刑法は改正されたとしても、司法に携わるひとたちに性暴力の知識がなければ、フリーズや解離、迎合など、性暴力被害者として当然の反応も、結局「同意があった可能性」と扱われてしまうのではないかということ。そのような場合、司法の場がもはやセカンドレイプの様相を呈することもある。

実際に、今回の裁判記録は多くメディアにも露出した。性暴力の問題性を考えるうえで、具体的な事柄を論じることはもちろん大事なことである。しかし、被害を受けた側があまりに置き去りになっていると感じる。勇気を振り絞って被害を訴えても、法にも世論にも届かないどころか、誹謗中傷まで受ける事態を目の当たりにすれば、性被害を受けても、司法の場に訴えることはおろか、警察への相談も難しくなる可能性もあるだろう。

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