辛いことがあったとき、過去の嫌なことを忘れられないとき、あなたならどうするだろうか。

広瀬すずさんが主演する映画『水は海に向かって流れる』は、恋のときめきや親子・家族との関係性が描かれながら、「過去の因縁」と対峙する物語でもある。広瀬さん演じる榊千紗は、26歳、不機嫌にも見られる、あまり感情を表に出さない女性だ。過去に「なにか」があったことも感じさせるが、榊さんが住むシェアハウスに引っ越してきた10歳年下の高校生・直達との出会いをきっかけに、心の扉を少しずつ開けていく。

広瀬すずさん演じる榊さんと、大西利空さん演じる直達。二人の出会いが「止まっていた時」を動かした――(c)2023 映画「水 は 海 に 向 かって 流 れる」 製作委員会 (C)田島列島 講談社

田島列島さんが第24回手塚治虫賞文化賞新生賞を受賞した漫画作品を、前田哲監督が映画化した作品の公開を記念したインタビュー。前編では広瀬さんご自身の親子関係について伺った。
後編では、嫌な感情とのつき合い方について伺っていく。

 

ずっと笑って読んだけれど「じわる」

――『水は海に向かって流れる』の原作漫画はお読みになりましたか?

はい、お話をいただいてから読みました。榊さんが全然私に見えないと言うか、もっと大人に感じられたので「そこに近づけるかな?」という思いがありました。
まず結末が違いますし、比較すると漫画のほうが穏やかに感じられますね。台本のほうは「じわる」という感じ(笑)。じわじわ、じわじわ面白くて、ずっと笑って読めました。でも映画になったら、ちゃんと重いところもある。誰にでもわかってもらえそうな心の動きや繊細な部分があって、そういうシーンを演じるのがすごく楽しそうだと思いました。

冒頭、雨の中で迎えに行くシーン (c)2023 映画「水 は 海 に 向 かって 流 れる」 製作委員会 (C)田島列島 講談社
(c)2023 映画「水 は 海 に 向 かって 流 れる」 製作委員会 (C)田島列島 講談社

結末の解釈は、映画を観た方にお任せします。監督とも話した際も、「そこをいちいちわかりやすく表現する必要はないよね」と意見が一致したので。観た人が、感じ取ってくださったものが正解です。