「うまく自分の考えを言葉にできない」「そういうつもりで言ったんじゃないのに……」とコミュニケーションに悩んだことがある人は少なくないのではないだろうか。出産にまつわる4組の夫婦を描いたドキュメンタリーシリーズ『うまれる』で知られる映画監督の豪田トモ氏も長年、人との“対話”が苦手だったという。
とりわけ、現在小学校6年生になる娘さんとはここ数年、まともに話す機会を持てなかった。ところが、7月22日に公開される新作『こどもかいぎ』を作り終えてから、対話ができるようになったという。一部の保育園で行われている、子どもたちが輪になって自由に話し合う「こどもかいぎ」から、監督が学んだこととは――。
日本人のコミュ力の低さは国民性ではない
――本作を作るきっかけは何だったのですか?
豪田監督:映画『こどもかいぎ』制作のきっかけの一つは、僕自身がカナダ、スウェーデン、そしてフィンランドの3カ国で「こどもかいぎ」のようなものに出会ったことにあります。最初は、20年近く前にカナダのバンクーバーで。そこで4年ほど映画制作の修行をしていましたが、北米の人たちは、日本人とは比べものにならないほどコミュニケーションができる人が多くて、場合によっては役者のように自己表現できることに驚いたんです。僕ら日本人の場合、間逆ですよね。対話やプレゼンテーションが苦手で、会議でもあまり発言しません。

――確かに。その理由は何だと思いますか?
豪田監督:環境だと思います。最初は単純に国民性の問題かなと思っていたんですよね。でもあるとき、カナダの保育園の「サークル・タイム」というものを見たんです。サークル・タイムはみんなで輪になって、歌を歌ったり、踊ったり、この映画『こどもかいぎ』のようにお話をしたり、といった活動。そこでは、「What do you think?(君はどう思う?)」と子どもたちは先生に聞かれます。家でも同じことで、親や先生や周りの大人から、カナダの子どもたちは小さな頃から自分の意見を聞かれるので、自分で考え、理解し、行動する癖がつくんですよね。