2021.12.30
# ドラマ

大晦日も放送…!大人気『孤独のグルメ』が描く「オルタナティブなおじさん」の魅力

井之頭五郎の「新しさ」

12月31日、『孤独のグルメ』のスペシャル番組が放送されます。同作のスペシャルが大晦日に放送されるのは、今年で5年目となります。恒例となった感もあるこの放送を、楽しみにしている人も多いのではないでしょうか。わたしもそんな一人です。

ところで、『孤独のグルメ』の大きな魅力の一つの源泉は、松重豊演じる主人公・井之頭五郎(以下、五郎さん)の独特のキャラクターであるように思います。

五郎さんは、細身のスーツをかっちり着込み、髪の毛をオールバックにセットし、ビジネスバッグを携え……と、見た目はトラディショナルな、仕事のできそうな中年男性です。しかし一方で、食事を目の前にして、そうした典型的なスーツ姿のおじさんの見た目を裏切る振る舞い——素朴な感想を述べ続けたり、身体の声に丁寧に耳を傾けたり、食事で癒されていたりといった振る舞い——を見せるのです。

いわば『孤独のグルメ』という作品は、「オルタナティブなおじさん」「既存のおじさんとは別様のおじさん」のイメージを魅力的に描いている作品であると言えるかもしれません。

……といっても謎が多いと思いますので、以下、その「オルタナおじさん」な雰囲気について考えてみたいと思います(なお、ここでは基本的にドラマ版『孤独のグルメ』に焦点を当てます)。

 

魅力的な「心の声」

『孤独のグルメ』は周知の通り、主人公の五郎さんが、街にある、なんということはない(けれど、きわめて魅力的な)飲食店で食事をする様子を中心に据えた作品です。

〈時間や社会にとらわれず、幸福に空腹を満たすとき、束の間、彼は自分勝手になり、自由になる。誰にも邪魔されず、気を使わず、物を食べるという孤高の行為。この行為こそが現代人に平等に与えられた最高の癒しと言えるのである〉

という、番組冒頭で必ず流れるナレーションが示す通り、五郎さんは一人で(孤独に)食事と向き合い、食事を楽しみます。

関連記事