クラブハウスは冷静な議論の場
「中国本土の皆さんにお伝えしたいのは、台湾にとって民主主義がいかに大事かということです。これは私たちにとって絶対に譲れない問題なのです」
こんな発言が飛び出したのは、今話題の音声SNS「クラブハウス」でのこと。「中国本土と台湾の若者たちが語り合う部屋」に1000人を超える中国人・台湾人ユーザーが集まり、代わる代わる中国本土と台湾の問題についてそれぞれの意見、見方を披露した。
ツイッターやネット掲示板などインターネットでの議論というと、罵詈雑言や陰謀論が飛び交うのが通例で、相手の意見もろくにきかずに揚げ足をとっては「はい、論破!」と一方的に勝利を宣言する、残念なやりとりが多い。
中国本土と台湾という荒れやすい話題ならばなおさらだが、その部屋では誰も他人の発言をさえぎることなく、落ち着いた意見交換が続いていたことに驚きを覚えた。他にも「中国の社会問題について話そう」「香港問題をどう見るか」「ウイグル問題の現状」など、中国では表だって話せないセンシティブなテーマについて議論する「ルーム」がいくつも立ち上がっている。
1月末から日本では音声SNS「クラブハウス」が大きな話題となっている。文字でのやり取りは一切なく、特定の話題について話すルームにて、複数人が音声でコミュニケーションするサービスだ。現在は招待状がなければアカウントが取得できないという希少性が「飢餓感」を煽っていて、中古販売サイト「メルカリ」では、本来無料の招待状が数千円で取引されるといった騒ぎに発展した。
この日本での盛り上がりから数日遅れで、中国でもクラブハウス人気に火が着き始めた。その結果、冒頭で紹介したような不思議な光景も生まれたというわけだ。中国におけるクラブハウス人気を追ってみると、「スマホ大国・中国のSNS事情」「日本人と中国人のカルチャーの違い」が透けて見える。