4月から継続していた世界でも有数の罰則を伴ったロックダウンが行われていたシンガポールですが、6月からようやく段階的に解除されてきています。ただ、引き続き海外渡航については厳しく規制されており、これまで世界トップレベルの高評価を得ているチャンギ空港を核に、ASEANのハブとして経済成長を成し遂げてきたシンガポールも軌道修正を余儀なくされています。
シンガポールで「預金」が急増している!
これまでASEAN7億人の巨大マーケットをカバーする立地の良さを活かして、事業会社のアジア本社を集めてきたシンガポールですが、コロナにより海外との渡航が制限されたことでジェトロによるヒアリングでも6割以上の日本企業が今後のシンガポールの事業展開を見直すと回答していることからも分かるように、都市の在り方の変容を迫られています。
シンガポールのハブ都市としての中核を担ってきたチャンギ空港もこれまで拡大の一途でしたが、最新の第5ターミナルの建設を少なくとも2年間中断するとシンガポール政府が発表するなど、新型コロナによりインフラ開発計画にも大きな影響が出てきています。
一方、シンガポールの金融都市としての重要性は益々高まってきています。その証拠に、シンガポール金融管理局(MAS)によると、20年4月時点のシンガポールの外貨預金の残高は前年同月比で約4倍の270億シンガポールドル(約2.1兆円)にまで急増し、非居住者の預金残高も同+44%増の約620億シンガポールドル(約4.8兆円)に達しています。
この急拡大の要因として、シンガポールに香港を中心としたアジア全域からのキャピタルフライトがあげられます。
香港では民主化の維持をめぐる中国政府との軋轢が深刻になり、過去2年ほど市内では激しいデモが繰り広げられ政情不安が続いています。さらに、20年6月には香港国家安全維持法が制定され、香港への中国政府の影響がさらに強まることは間違いありません。