男性の収入は「遺伝」でこれだけ決まるという「冷酷すぎる現実」

それでも私が楽観的でいられる理由

無視できない遺伝の影響

ほぼあらゆる個人差には無視できない遺伝の影響がある。

「ほぼあらゆる」には身長・体重、疾患のかかりやすさ、心身の健康度、発達障害や精神疾患、物資依存、犯罪、パーソナリティ、社会的態度、知能、学力、さらには職業適性や収入など、人が社会の中で生きるとき、気になる側面がおおむね網羅されている。

「無視できない遺伝の影響」とは、おおむね30%〜60%程度だ。特に知能や学力、精神疾患は遺伝率の高いほう(50〜60%)に位置づく。パーソナリティや社会的態度は30〜40%程度だから、逆にいえば遺伝で説明できない割合(60〜70%)の方が大きいともいえる。

しかしいずれにしても、人間は環境次第でどうにでもなるほど環境に従順ではなく、良きにつけ悪しきにつけ、その人物の内側からにじみ出る遺伝的な持ち味を、程度の差こそあれ、発揮している。

 

「行動のあらゆる側面には遺伝の影響がある」――これが行動遺伝学の第一原則である。これはどの瞬間の行動や心の動きにも、何らかの形でその人物の遺伝的な個性が表れているということを意味するのである。

人間も遺伝子の産物であるから、その個人差に遺伝の影響が表れるのは地球が丸いのと同じくらいあたりまえなことだ。地球が丸いことは、知らされるまではだれにも想像もつかないことだったし、知らされても始めは信じられなかったかもしれないが、地球一周旅行が現実の時代になれば、実感として当たり前のことと納得せざるを得なくなる。

ヒトの形質への遺伝の影響は、遺伝子が全く同じ一卵性双生児の類似度を、環境は一卵性と同じ条件だが遺伝子が半分しか同じではない二卵性双生児の類似度と比較することによって得られる。それが双生児法だ。パーソナリティや社会的態度の一卵性の一致度が30%〜50%なのだ。それに対して二卵性は15%〜25%程度に過ぎない。

なんだ、その程度かと思われるかもしれない。同じ家庭環境で育ち、遺伝子まで同じ一卵性ですら、30~40%の類似性しかないわけだから、むしろ大きいのは同じ家庭で育っても一人ひとり異なる環境である。それが60%〜70%というわけだ。

これを双生児法を扱う行動遺伝学では、非共有環境とよぶ。非共有環境のほとんどは、単に同じ家庭で育っても違うというだけでなく、同じ人であっても、何をするか、いつするかによって異なる、偶然に出会った影響であることが多い。

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