あのSTAP細胞事件の後も、多くの研究不正が明らかになっている。中には「史上最悪の研究不正」と言われるほどのケースも。一体なぜ不正はなくならないのか。『研究不正と歪んだ科学』編著者の榎木英介氏が警鐘を鳴らす。
夢の万能細胞と騒がれ、のちにその存在が否定されたSTAP細胞に関する事件、いわゆるSTAP細胞事件から、早くも5年以上の月日が経過した。
5年前、あれほど世間を揺るがした事件も、忘却の彼方に消え去ろうとしている。大学には事件そのものを知らない学生も増えているという。
それは私たちとて似たようなものだ。STAP細胞事件は、号泣県議や佐村河内事件など当時世間を騒がせたネタの一つに過ぎず、令和になった今、平成に起こった一つの事件として振り返ることがせいぜいだ。
しかし、STAP細胞事件があらわにした、日本の研究が抱える様々な問題は、実は何も解決していない。
いったい研究の現場で何が起こっているのか。
〔PHOTO〕iStock
史上最悪の研究不正
STAP細胞事件を「世界三大研究不正事件」と呼ぶ声がある。
研究不正とは、狭義には存在しないデータを作る捏造、データを加工する改ざん、他の研究者のアイディアや文章などを許可や表示なく流用する盗用の3つの行為を指す。STAP細胞に関する論文には、この3つが含まれていた。
たしかに報道の量だけをみれば、少なくとも日本国内では、研究不正の事件としてはダントツだろう。
しかし、私はこれに全く同意しない。