プールの水が抜かれる?
6月14日の記事「まさかとは思うが『ソフトバンク・ショック』はありえるのか?」で危惧していた内容がいよいよ現実のものになるかもしれない。
この記事の副題に「ITバブル崩壊前夜と似てきた」とあるように、問題はソフトバンクだけにあるのではなく、同じようにベンチャー・バブルの波に乗ってきたIPO業界にも降りかかるから、世界規模の激震になる可能性もある。
ベンチャー・キャピタリストの友人によれば、米国IPOの総額がこの2年で2000億ドルを超え、ITバブルが崩壊した2000年の2年前からの状況とまったく同じ状況である。
市場が過熱して、有望な投資先がなくなったため「チューリップの球根」(1637年がピークであったチューリップ・バブルでは、球根1個の値段が土地5ヘクタール相当まで上昇)にまで多くのベンチャー・キャピタルが手を出したといえよう。
ソフトバンク・グループの主要投資先の1つであるWeWork(ウィーワーク)は、まさに「チューリップの球根」の好例といえよう。
それだけでは無い。9月30日の記事「もう特別扱いはありえない GAFAの栄華は終わることになる」で述べたように、これまでIT関連の覇者であったGAFAに対する風向きもがらりと変わっており、これからは「防戦」に注力せざるを得ず、将来有望なビジネスを大量の資金で取り込むモデルも転機を迎える。つまり、ベンチャー市場への資金供給が細るということだ。
最近では、アップルやアマゾンに投資をして「心配」なバフェットだが、こんなことも述べている。
「プールの水を抜いて、はじめて誰が裸で泳いでいるのかが分かる」
要するに、プールに水が満たされている限り、プールサイドから誰が水着を着ているかを確認するのは困難だが、すべての水を抜き去ればすぐわかるということである。
バブルも、プールの水で「本物」と「偽物」の区別がつかない状態だが、水が無くなってしまえば「偽物」はすぐにわかり、「偽物」に対する売りが殺到してバブル崩壊となる。
この時には、パニックになった人々が「本物」も安値で売ってしまうことが多く、バフェットは、そのたたき売りされている「本物」を買い集めて財を成したのである。