キーエンス、デンソー、味の素などが高評価。村田製作所、セコム、リクルートHDも期待大。一方で、石油、鉄鋼や生損保、スーパーなどは警戒ランプが点灯。多くの業界で、勢力図が一変する—。
トヨタがグーグルの軍門に下る日
昨日まで好調だった会社が、明日も好調とは限らない。激動の時代を生き抜く会社はどこか。経営に精通する識者たちの採点をもとに、347社の「通信簿」を公開する。(表は5ページ目から)
まず多くの識者が指摘したのは、自動車、電機などのモノづくりで巻き起こる歴史的な地殻変動。それは「インダストリー4・0(第四次産業革命)」と呼ばれるもので、ポイントを一言で言えば、少品種・大量生産時代がいよいよ終焉する。
これからは、消費者が自動車や家電を買う際には、商品カタログから選ぶのではなく、ネット上で好みのデザインやパーツなどを選ぶ。すると、そのデータが即座に生産工場に送られ、「あなた仕様」のオリジナルな一品を買うことができる。しかも、これまでと同じような価格で—というのが当たり前になる。
そんな多品種・少量生産時代にはモノづくりの生産現場も様変わりし、消費者のスマホ端末から、完成品メーカー、部品メーカーの生産ラインはネットワークでつながる。工場では、送られてくるデータを超高性能なAI(人工知能)を組み込んだロボットが即時分析し、消費者ごとのオーダーメイド製品を次々と作り上げていく。
「おのずと製造業では壮大な合従連衡が巻き起こることになる。それもGMとフォードが組むというような旧来型の合併ではなく、GMとマイクロソフトやIBMが一緒になるような業界の垣根を越えた再編劇です。すでにドイツではボッシュやシーメンスが手を組むような動きがある一方で、日本勢は『虎の子』の技術をオープンにすることに消極的で出遅れている。トヨタや日産、ホンダでさえソフトバンクグループと組むなどしないと、手遅れになりかねない」(セゾン投信代表取締役社長の中野晴啓氏)
こうした動きと並行するように、今後は自動運転車やロボット家電が一気に普及。あらゆるモノがインターネットにつながる時代も本格化する。
「製造業に怒濤のようにITが入り込んでくるなかで、業界の主導権を握るのはITシステムの『頭脳』を開発した会社。トヨタもAIの研究開発の新会社を作るなど必死に動いています。しかし、すでに圧倒的に先行しているのはグーグルなどアメリカのIT企業。彼らに主導権を取られれば、日本勢は『下請け』としてただモノを作るだけの企業になる可能性もある」(京都大学産官学連携本部客員准教授の瀧本哲史氏)
トヨタがグーグルやアマゾンの軍門に下るというのは衝撃的な未来図ではあるが、今後は多くの業界でこうした劇的な再編が起こり得る。
「家電業界は中国や韓国などの新興企業がすっかり席巻し、今後も日本勢のパイを喰っていくでしょう。東芝、富士通などかつては『日本代表』だった会社でさえ、○がひとつもつかないことが象徴的です」(流通科学研究所所長の石井淳蔵氏)