「ご挨拶」「情報交換」と称して相手の会社に大人数で訪問し、話だけ聞いて「いやあ、大変勉強になりました」と言って帰っていく。何かを提案したり、製品を購入するわけでもない。グローバル市場において、日本人ビジネスマンのこうした奇妙な振る舞いは有名である。
国内でも、ごく簡単な商談に何人も社員が出てきて、誰が決定権を持っているのか分からず、部長クラスが出席しているにもかかわらず「持ち帰って検討します」といって帰っていくことは珍しくない。
著名な大企業の管理職ともなれば年収は1000万円を突破することも珍しくないが、こうした高給取りの社員が、ほとんど利益を生み出さないムダな作業に、多くの時間と労力を費やしている。
日本の生産性が先進諸外国に比べて著しく低いという話は、多くの人がすでに認識していると思うが、このような振る舞いを続けていては生産性が下がるのは当然のことである。
日本企業は同じ金額を稼ぐのに資源を投入しすぎ
日本生産性本部の調査によると、2017年における日本の労働生産性は、先進国の中では最下位となっており、米国やドイツの3分の2しかない。ちなみに日本の労働生産性が先進国で最下位というのは、以前からずっと同じであり、日本の生産性が良かったことは一度もない。それにしても、同じ先進工業国でありながら、生産性が3分の2しかないというのは驚くべき数字といってよい。
生産性が3分の2しかないということは、同じ金額を稼ぐために、より多くの人数と労働時間を投入しなければならないことを意味している。
米国と日本の状況を比較すると、日本では1万ドル(約110万円)を稼ぐのに約30人の社員を動員し、7時間の労働を行っているが、米国の場合、同じ7時間労働で19人しか社員を動員していない。ドイツの場合には、米国ほど少人数ではないが、日本よりも人数が少なく(25人)、労働時間は何と6時間弱で済んでいる。日本企業は、大人数でしかも長時間労働を行ってようやく同じ金額を稼いでいるわけだ。
諸外国と比較して日本人の賃金はここ20年で大きく低下したが、経済学的には賃金水準と生産性には密接な関係がある。このところ日本人の賃金が上がらず、経済が貧しくなっているのは、生産性が上昇していないからである。
諸外国と比較するのは意味がないとの主張が一部にあるが、それは完全な誤りである。日本は貿易で経済を成り立たせており、私たちが日常的に消費しているモノのほとんどは輸入されている。日本人の賃金が低下することは、同じ収入で購入できるモノの量が減っているということであり、それは貧しさに直結する話なのだ。